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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 188「柱と床」

オープンな室内にコンクリートの柱、自由な空間にほんの少しの不自由を



 敷地は東京都心部に近く、道が入り組み、建物が密集した生活感あふれるエリアにあります。下見に訪れた時、道端の花が舗装を突き破って咲いているのが印象に残りました。ここに住むには、雑草のように力強い建物でなければ、周辺のパワーに負けてしまうのではないかと思われました。

 設計当時、建て主夫妻には第一子が生まれたばかり。これから家族が増え、どんどん暮らしを発展させていくところです。新居への望みは、「なるべく広くて、自由に使える空間が欲しい」ということでした。ふたりとも自分の手で物を作ることに慣れているので、間仕切りや棚などは後から足していけば良いと考えていました。

 敷地と建て主の個性を重ね合わせた時、わいてきたのが「柱と梁のフレームに住む」というイメージでした。

「柱と床」提案時の模型
提案時の模型

 敷地は間口5メートル、奥行き14メートルの長方形です。そこに、コンクリートの柱を2列、3メートル間隔に合計8本並べて梁を架け、1階と2階を構成しました。柱はあえて外壁より少し内側に配置し、室内に現れるようにしています。「フレームに住む」というコンセプトを明らかにしたかったからです。

 結果的に、柱を少し内側に入れたことは、構造の面でも理にかなっていました。柱の間隔が短くなるので梁を細くできますし、梁と柱はT字に組むよりも十字に組んだほうが頑丈になります。こうしたコンクリートのフレームは、通常はもっと大型の建築物に用いられるものですが、柱と梁をぎりぎりまで細くすることで、小さな住宅にも応用することができました。

 1階はこのフレームがはっきりと現れた、がらんとした土間空間です。前後に3枚ずつの引き込み戸を設けており、両方を全開にすれば街路のようになる、半戸外的な場所です。

 2階は、寝室などのプライベートな居室。間仕切り壁はなく、可動式の収納で適宜仕切って使います。南側はベランダに面した浴室。この浴室と居室の間に、スリットのような細長い「中庭」を設けて光を取り入れます。密集地にありながら、2面から光が入る、明るい浴室ができました。

 最上階の3階は木造にしました。軽くて構造に負担がかからず、コストを抑えることができるからです。ここは内部に柱がなく、ルーフバルコニーに面した見晴らしのいい窓を持つ快適なLDKです。鉄筋コンクリートで立ち上げたキッチンが、空間の要になっています。

 どの階もほとんど仕切りのない「自由」な空間である一方で、その中に動かしようのないコンクリートの柱やキッチンがあることは少し「不自由」です。けれど、その「不自由」が空間を使う手掛かりになることもある。事実、この家の建て主は、何もない1階の土間空間を、柱の間隔に合わせて使い分けています。道路側から2本目の柱までは自転車置き場、柱と柱に挟まれた中央部は夫の作業場、その向こうは子どもの遊び場、というように。人の暮らしにとってプラスに働く「不自由」を、建築の中にうまく取り入れていけたらと思います。

 住宅は建築家と建て主との個人的な関係だけでも成立するものですが、小さくとも都市の一部であることに違いありません。住宅が余っている時代に、あえて新しい建物をつくるからには、わずかでも都市に対する好影響を与えられるもの、過去から未来へと至る歴史の流れの中に、何らかの意味を持ちうるものを、建て主と一緒に考えてつくっていきたいと考えています。
(福島加津也・冨永祥子/福島加津也+冨永祥子建築設計事務所)

柱と床

建築データ
  所在地: 東京都
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2008年4月
  敷地面積: 76.72平方メートル
  建築面積: 40.77平方メートル
延べ床面積: 105.63平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り(ラーメン構造)、一部木造
  設計: 福島加津也+冨永祥子建築設計事務所
  施工: 前川建設
  写真: 鳥村鋼一
連絡先  
  福島加津也+冨永祥子建築設計事務所
  代表: 福島加津也+冨永祥子
  住所: 〒154-0012
東京都世田谷区駒沢5-22-3-305
  TEL: 03-3410-8950
  FAX: 03-3410-8950
  E-MAIL: fta@gotohp.jp
  URL: http://fta.gotohp.jp/
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