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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 189「kiti」

多様な床レベルの部屋が交錯する、新しい生活のための“基地”



 「kiti」という名称は、「基地」を意味しています。ラワン合板をむき出しにした建物は、スキップフロアを介して、吹き抜け空間や天井高1.4メートルの収納スペースなどを複雑に組み合わせた構成です。1階のリビングダイニングやアトリエからは、床面の高さが異なる各スペースが立体的に重なって見えます。

 あちこちに小さな居場所がある家は、建て主の子どもたちにとっては格好の探検場所となるでしょう。入居直後に訪れた時は、大喜びで上下階を行き来していました。また大人にとっても、これらの空間をどのように使いこなしていこうかと、作戦会議を開くような気持ちで住んでいただければと思っています。

 家は、神奈川県鎌倉市の山の手に位置しています。建て主は、工芸作家のご主人と都内に通勤する奥様、小学生の兄妹という4人家族です。以前の住まいは都区内でしたが、自然に恵まれた環境で子どもたちを育てたいという思いから、山に近いこの土地を探して引っ越したという経緯があります。

 家に対する建て主の要望は、「シンプルな箱」。必要最低限の要素を備えた、新しい生活のための容器がほしい。外構や塗装、家具などは、後から自分たちで仕上げるので最初に用意する必要はない、とのことでした。

 一方で、厳しい敷地条件への対応も重要でした。大きな土地を分割した敷地は複雑な形をしており、許容容積率は100%。風致地区に位置しているため、敷地境界線から建物を1メートルセットバックさせなければなりません。これらの法的条件の中で最大限のボリュームを確保するため、敷地形状にできるだけ沿わせた7角形の建物を建ち上げました。

 建物の内部をスキップフロア構成にしたのも、限られた空間をできるだけ活用し、かつ広く見せるための工夫です。容積率の算定に加えなくていい床下収納や小屋裏収納をスキップフロアの間に組み込み、有効に使えるスペースを増やしました。また、水まわりや和室以外は間仕切りなしで連続させ、建物全体が大きなワンルーム空間となるようにしました。

断面図
断面図

 敷地の背後には、緩やかな山が続いています。昨年の夏、初めてこの敷地を訪れた時に印象的だったのが、深い緑に覆われた裏山の風景でした。家の中にいながらこの緑をいかに感じられるようにするかは、設計を進める際の大きなポイントになりました。例えば、1階のアトリエから1.5階のワークスペースを通して外の景色が見えるようにするなど、裏山を借景にした開口の取り方に気を配っています。

 実は、この家の設計期間はとても短いものでした。土地の購入が決まったのは昨年8月だったのですが、開発に関する手続きの関係から今年3月までに竣工させる必要が生じたのです。確認申請や工事に要する時間を差し引くと、設計期間は1カ月強しかありません。それでも、何とかやり遂げなければという思いでした。

 内装の塗装仕上げをしない仕様、また2×4工法を在来工法に組み込んだことも、ローコスト、短工期を実現するための工夫の1つです。いくつかの厳しい条件が、むしろ目的の明快な空間づくりに結び付いたのかもしれません。
(光本直人+濱名直子/ミハデザイン)

kiti

建築データ
  所在地: 神奈川県鎌倉市
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2010年3月
  敷地面積: 150.44平方メートル
  建築面積: 60.17平方メートル
延べ床面積: 131.96平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: (建築)光本直人+濱名直子/ミハデザイン、(構造)江尻憲泰/江尻建築構造設計事務所
  施工: 東湘建設
  写真: 阿野太一
(外観を除く)
連絡先  
  ミハデザイン
  代表: 光本直人+濱名直子
  住所: 〒152-0021
東京都目黒区東が丘 1-5-5-305
  TEL: 03-3424-2723
  FAX: 03-3424-2702
  E-MAIL: miha@mihadesign.com
  URL: http://mihadesign.com/
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