TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 190「house T」

空間とインテリアの相乗効果、住む人の好みが生きる独自の世界



 建て主は、定年を迎えたご夫婦です。海と山の両方が身近に感じられる環境を求めてこの地に移り住みました。周辺は宅地と田畑が入り交じった地域で、緑は豊かだけれどプライバシーを守る必要もあり、リゾート風の開放的な家をつくるわけにはいきません。一方で、少し背伸びをすれば、家の中から小田原湾を望むことができます。

 そこでまず、日常生活の場を3階に持ち上げて眺望を楽しみ、1階は閉じたプライベート空間にしようと考えました。夫婦ふたり暮らしにそれほど大きな床面積は必要ありませんから、中間の2階はおまけのような空間です。ここを、屋内のバルコニーのような「光の場所」にしました。

 2階の天井高は約2メートル。上下階をつなぐ階段の踊り場状の場所で、半透明の布のスクリーンに覆われています。周囲は1階から続く吹き抜けになっており、3方向に並ぶ窓から差し込む光に満たされます。

 3階に上るとワンルームのLDKで、周囲に視界が開けます。3方向の壁に均等に、大きめの窓を並べました。部屋の中を歩くと、ちょうど車窓のように景色が移り変わります。

 対照的に、1階へ下りる階段室はぐっと暗く、外光はほとんど入りません。廊下に並んだ3つのドアが、それぞれ玄関土間、洗面・浴室、寝室へとつながっています。

 この住宅では、「アンティークの家具に囲まれて暮らしたい」という建て主の希望を内装にも反映させて、積極的にアンティーク調の素材やモチーフを取り入れています。床や階段、建具にはダークな色合いを採用し、壁紙も柄入りのものを多用しました。2階のスクリーンには1階階段室の壁紙の模様を反転転写してイメージを反復しています。このほか、2階踊り場の手すりや3階天井のモールディング(装飾材)など、至るところにクラシックなディテールが散りばめられています。

 ほの暗い1階階段室、生活感の希薄な2階、暮らしの場となる明るい3階。家の中を巡る人は、階段を上ったり下りたり、ドアを開けたりするたびに、明るさも天井高も、雰囲気も異なる空間に入り込むことになります。小さいながらも、多彩で濃厚な味わいを体感できる住宅に仕上がりました。

 建築の骨格を際立たせるには、内装はできるだけニュートラルにしたほうが良いという考え方もありますが、私は建築と内装が相乗効果を上げることを目指しています。特に住宅の場合、建て主は「カントリー調」や「和風」「北欧風」といったテイスト、雰囲気に思い入れを持っていることが多い。その思いにしっかりと答えながら、それが建築をより豊かにするような方法を探っていきたいと思います。
(寳神尚史/日吉坂事務所)


house T

建築データ
  所在地: 神奈川県南足柄市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2009年12月
  敷地面積: 148.78平方メートル
  建築面積: 59.09平方メートル
延べ床面積: 133.65平方メートル
  構造・規模: 木造、地上3階建て
  設計: 日吉坂事務所
  施工: 大同工業
  写真: 阿野太一
連絡先  
  日吉坂事務所
  代表: 寳神尚史
  住所: 〒108-0072
東京都港区白金6-14-15 シェーネ白金101
  TEL: 03-6666-1011
  FAX: 03-6666-1022
  E-MAIL: office@hiyoshizaka.com
  URL: http://www.hiyoshizaka.com/
平面図
Page Top
おすすめ情報(PR)