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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 191「SPROUT」

四周に突き出した芝の屋根、緑に包まれて暮らす



 芝を敷いた駐車場の屋根で、家の四周を囲みました。2階リビングの大きな窓を通して、屋根の芝とその先に広がる畑や里山の緑を視覚的に引き入れるのが狙いです。夏には、芝の上を通り抜けた気持ち良い涼風が室内へと吹き込みます。

 建て主は、専業農家の若い家族。周辺は江戸時代以降、近代農業を営んできた地域で、間口40メートル、奥行き1キロメートルの敷地が短冊状に並んだ“農業団地”になっています。各農家は「山(里山)」と呼ぶ森を必ずもち、森の落ち葉を畑の肥料に利用するなど、里山と畑が一体となって1つの循環系をつくり上げてきました。

 このような伝統的農業が残っている地域ですが、近年は農作業や生活にトラクターやトラック、自家用車が欠かせなくなっています。そのため、それぞれの家の外には砂利敷きの駐車場が続き、家の中からは車のお尻ばかりが見えるという状態。茶畑や里山が広がる牧歌的な風景はなく、むしろ荒々しい印象の風景を生み出しています。こうした状況を抜け出し、田園地帯の良さを味わえる家をつくりたいと考えました。

 建て主からは、8台分の屋根付き駐車場を確保することを求められました。最初は1階に駐車場をつくり、その上の2階を生活スペースに充てる案を検討しましたが、車がうまく納まるように柱のスパンなどを考慮すると、コスト上合理的ではなくなる。そこで住む場所をコンパクトな総2階にまとめ、その周囲に車を4台ずつ並べる計画にしました。

 周囲を車に囲まれる1階は寝室や水まわりを配置しました。駐車場の屋根は、屋上の照り返しを防ぐために芝を植えました。2階はワンルーム状の空間とし、リビングとダイニング、キッチンを並べています。

断面図

 2階リビングのテーブルの高さを外に続く芝生の面とそろえるため、建物全体の床レベルを80センチメートルほど下げています。高さを抑え、水平方向に長く延ばした窓のつくりと相まって、芝との連続性や外の広がりが強く感じられるようにと意識しました。

 屋根の芝には水まきが必要です。ここでは、2階の屋根に設置した散水ノズルから井戸水をまくことで、芝に水を供給する方式を採用しています。

 2階の屋根にまいた水は、屋根や火山灰左官仕上げの外壁を伝って流れる際に、気化熱で建物を冷やします。さらに水は芝面に流れ落ち緑を潤します。さらにあふれた水は駐車場屋根の外側から排出します。棚田の仕組みと一緒です。自然の力を生かしながら気持良い環境を生み出すよう工夫した今回の方法は、農業用の井戸水をたっぷり使える環境だからこそ可能だったとも言えるでしょう。

 昔ながらの日本の家屋は、深い軒をもっています。これも、夏の強い日射を防ぐ工夫の1つです。この家では水平な屋根を窓面より外に張り出して軒をつくり、軒の内側をロフトとして活用しました。ロフトは室内をぐるりと取り囲むように配置し、回遊できるようになっています。本やオーディオの収納場所にしたり、座ってくつろいだりと、さまざまに活用できます。

 芝の屋根にせよロフトにせよ、何らかの造形操作が常に複数の効果を生むように心がけています。一問一答ではなく、一石二鳥や三鳥に結びつけていく。それがデザインの役割だし、面白さだと考えているからです。
(峯田建+恩田恵以/スタジオ・アーキファーム)

SPROUT

建築データ
  所在地: 埼玉県所沢市
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2009年8月
  敷地面積: 2232.73平方メートル
  建築面積: 149.89平方メートル
延べ床面積: 68.74平方メートル(ロフトを含むと91.08平方メートル)
  構造・規模: 木造(車庫:鉄骨造)、地上2階建て
  設計: (建築)峯田建+恩田恵以/スタジオ・アーキファーム、(構造)今井富雄
  施工: 藤田能房/藤建設工房
  写真: JIN HOSOYA(*付きを除く)
連絡先  
  スタジオ・アーキファーム
一級建築士事務所
  代表: 峯田建
  住所: 〒352-0035
埼玉県新座市
栗原6-8-19
  TEL: 0424-25-4128
  FAX: 0424-25-4138
  E-MAIL: info@archifarm.jp
  URL: http://www.archifarm.jp/
平面図
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