TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 192「屋内の家+屋外の家」

小さな敷地に2つの家、屋内と屋外の新しい関係



 小さな敷地に、あえて2つの家を建てる。ひとつは「中の家」、もうひとつは「外の家」。これが、試行錯誤の末に見つけ出した回答でした。

 この敷地は北側を道路に接し、南に向かって狭くなる台形です。法規による制限も厳しく、建て坪は最大で12坪弱、南側の間口は4メートルほどしかとれない計算でした。当初は敷地の南に庭をつくることも考えましたが、隣家との距離が近いため、庭に面した窓を開けても、カーテンは閉めっぱなしになりそうです。

 そこで、南側にはテラスや中庭、屋上など「外」の要素を集めた家を建て、北側に家族4人の生活に必要な「中」の機能をまとめた家を建てることを思い付きました。こうすれば、「外の家」が隣家との緩衝帯となり、「中の家」では人目を気にせず、窓を開けたままで過ごせます。

 敷地が小さいうえに不整形なので、建物も必然的に不整形になります。その中に整形の部屋をつくっても無理があるので、あえてどの部屋も不整形にしました。「中の家」には、15.6畳のLDKと、6畳ほどを兄妹で分け合う子ども室、わずか4畳の主寝室と浴室。一つひとつは小さいけれど、それぞれ「外の家」と向かい合い、いくつもの窓を介して様々な方向に視線が抜けます。現実の距離を超越した、不思議な広がりが感じられます。

 一方、「外の家」は部屋に名前を付けるより、自転車いじりや植物栽培、日光浴などの行為をイメージするのがふさわしい建物です。吹き抜けの「アウタールーム」を挟んで3畳に満たない土間の作業室が2つ。それぞれはしごを上ると、階上は窓が素通しの半戸外になっています。片方は露天のテラス、片方はもう1階上の屋上テラスに続きます。

 2つの家は、それぞれ高さや大きさの異なる開口部を持ち、床の高さ・天井の高さもずらしています。小さな敷地の中に、多彩な場所をつくる工夫です。さらに、4種類ある天井高を、それぞれ名山の標高になぞらえました。たとえば、LDKの天井高は2702ミリメートル。これは、日本三名山のひとつ、白山の標高2702メートルに対応しています。なぜこんなことをしたかというと、建て主夫妻が登山好きで、日本百名山の制覇を目指しているという話を聞いていたからです。

断面図

 設計に取り掛かる前には、建て主のライフスタイルや趣味、人生観などを、時間をかけて聞き出すのが習慣です。「新居への要望」を尋ねると、建て主としては「どんな部屋が必要」とか「何畳欲しい」とか答えざるを得ないでしょう。それは設計を考えるときの「制約」になりかねません。それより、その人の好きなこと、大事にしていることをたくさん聞いておいたほうが、設計のイメージが膨らみます。

 設計では、いつも「屋内」と「屋外」の関係を意識しています。建築とは基本的に屋内をつくる行為ですが、屋内の完成度にこだわると、屋外から切り離されかねない。それでは、住まいの自由さ・快適さから離れてしまうように思われます。自分が描く計画には、屋内も屋外も、等価に現れるようにしたい。普通なら外で行われる行為も、家の中で生き生きと行われるような、そんな建築を目指しています。
(保坂猛/保坂猛建築都市設計事務所)

屋内の家+屋外の家

建築データ
  所在地: 東京都杉並区
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2009年8月
  敷地面積: 95.98平方メートル
  建築面積: 37.32平方メートル
延べ床面積: 71.20平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: 保坂猛建築都市設計
事務所
  施工: 栄港建設
  写真: 西川公朗
  写真協力: 扶桑社「SUMAI no SEKKEI」
連絡先  
  保坂猛建築都市設計事務所
  代表: 保坂猛
  住所: 〒231-0007
神奈川県横浜市
中区弁天通2-25-5F
  TEL: 045-651-2540
  FAX: 045-663-4407
  E-MAIL: info@hosakatakeshi.com
  URL: http://www.
hosakatakeshi.com/
平面図
Page Top
おすすめ情報(PR)