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Housing File 193「読書する家」

スキップフロアが生み出す、それぞれの居場所とつながり



 スキップフロアで各スペースをつなげた建物です。吹き抜けの食堂や階段の脇、あるいは畳室の下にある天井の低い書庫などには、本棚をたくさん用意しました。

 建て主は、3歳と0歳の小さな兄妹がいる家族です。たくさんの蔵書があるため、本を保管する場所が欲しいというのが最初の要望でした。また、「小さなころ、家の階段に座って本を読むのが好きでした」とのこと。そこで、室内のあちこちにちょっとした居場所と本棚があり、それらの場所で読書を楽しめるような家を、と考えました。

 この家は、全体で6つのフロアに分かれています。

 玄関と同じ高さにキッチンを配し、65センチ上がったフロアに食堂と居間。食堂のテーブルは掘りごたつ式のため、着席すると台所に立った人と視線の高さがそろいます。居間から1メートル上がると畳室に続き、そこから階段を半階分上がると寝室や子ども室の並ぶ2階に。さらに1メートル強上がると、浴室や洗面のある水まわりや物干しができる半屋内のバルコニーにつながります。

断面図

 断面構成のポイントとなっているのは、4畳の畳室です。ロールスクリーンで仕切るオープンな畳室は、2階への階段の踊り場も兼ねたつくりとしました。畳室の下は、書庫として利用しています。書庫の天井高は140センチと低く、座って本を読むには落ち着ける空間です。少しずつ変化をつけた空間構成によって、様々な居場所を楽しんでもらいたいと思いました。

 いつも家族の気配を感じていたいという要望もありました。そこで食堂の吹き抜けを通して1階と2階をつなげ、さらに中間に位置する畳室によって1階と2階の距離を近く感じられるようにしました。書庫にも小さな開口を開け、台所や食堂とのつながりを与えています。

 寝るためのスペースと収納を最低限確保した2階も、つながりを意識しているのは同じです。吹き抜けに面した階段ホールに、子どもたちが勉強するためのカウンターを設置。さらに半階高くなったホールに家事用のカウンターを用意し、奥様が近くから子どもたちの様子を見守れるようにしました。

 スキップフロアがもたらすもう1つの効果は、場所に応じて多様な空間の見え方を楽しめることです。

 例えば、居間の吹き抜け上部につくったフィックス窓。家事カウンターのある最上階のホールから見ると、窓を通して田園風景が広がります。一方、1階リビングから見上げると空だけが切り取られます。この窓は東に面しているので、朝は気持ち良い日が差し込みます。

 もちろん、段差の多さなど、この家の特徴がすべての人に向いているとは言えません。年1回ほど泊まりにくる両親も利用する畳室は、2階への踊り場を兼ねています。誰かが寝ていても邪魔せずに2階から階下へ出られる抜け道のはしごを用意しましたが、ここを客間として認識するには抵抗感を持つ人もいるでしょう。

 このような提案を「楽しい」と感じてくださる建て主だったからこそ、可能な間取りでした。

 大切なのは、そこに住む人にとって良い家にすること。今回、建て主から「自分たちの要望はほとんど叶えられているのに、想像もしない空間ができた」と感想をいただいたのは、何よりもうれしい一言でした。
(前島周子/SHU一級建築士事務所)

読書する家

建築データ
  所在地: 岩手県奥州市
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2010年7月
  敷地面積: 213.45平方メートル
  建築面積: 62.39平方メートル
延べ床面積: 106.07平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: 前島周子
/SHU一級建築士事務所
  施工: 伸和ハウス
  プロデュース: ASJ
  写真: 上田宏
連絡先  
  SHU一級建築士事務所
  代表: 前島周子
  住所: 〒154-0004
東京都世田谷区太子堂
4-25-6 3階
  TEL&FAX: 03-3413-3581
  E-MAIL: shu_@gd5.so-net.ne.jp
  URL: http://www.shu-arc.jp/
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