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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 194「Nowhere but Sajima」

海の眺めに向かって、景観を絞る筒状の空間



 この建物は、湘南の海の眺めが開ける都市近郊のリゾート地にあります。ただし、敷地は「く」の字を描く海岸線に面しており、180度開くと近接したマンションと見合ってしまうのが難点です。海だけを見てくつろげる空間にするためには、外からの視線をカットする工夫が必要でした。

 建物の輪郭は、海側の辺を長くした三角形になっています。その中に壁を平行に配置し、空間を筒状に分割しました。これによって、視界は海と空だけが見える方向に絞られ、まるで海の上にいるような気分が味わえます。カーテンやブラインドを使わずに、景観とプライバシーをコントロールする工夫です。

 3階建ての建物の中には12の“筒”があり、それぞれ異なる内装を施しています。向きは同じでも、大きさも形も色も違う額縁を通した眺めが楽しめます。

 寝室やLDK、浴室などの部屋と“筒”は1対1で対応しているわけではなく、複数の“筒”をまたぐ部屋があったり、ひとつの“筒”が複数の機能を兼ね備えていたりします。他方で、収納や間仕切り壁で“筒”を分断する場合も、天井だけは視覚的につながるようにしています。

 中間階の2階は、最も大きな開口部を持つリビングと、テラスまで続くテーブルを備えたダイニングキッチン。1階と3階に、それぞれ広めのベッドルームを設けました。この別荘は、特定の家族のためにつくったものではなく、1週間単位で予約を受ける貸し別荘です。ベッドルームを2つ用意したのは、複数の家族で一緒に使ってもらいたいという意図があったからです。

 今の日本の住宅は、核家族の単位にあまりにもぴったりと対応していて、他者が入り込みにくい雰囲気があるように感じます。昔の大家族が持っていたような、近隣の人が気軽に出入りし、冠婚葬祭の場でもあるような、おおらかな住宅のあり方を見直したい。そんな考えからこの別荘をつくりました。実際に、お客さんたちは、ここに滞在しながら結婚式を挙げたり展覧会を開いたりと、「住む」ことに限定しない、自由な使い方をしてくれています。

 たとえ個人の住宅を建てるとしても、建築の寿命は人間より長いのだから、現在ただ今の暮らしだけではなく、将来どんな役割を果たせるかも考えるべきではないでしょうか。そのためには、あまり「住む」ことに特化しすぎない方がいいのではないかと思われるのです。
(吉村靖孝/吉村靖孝建築設計事務所)


Nowhere but Sajima

建築データ
  所在地: 神奈川県横須賀市
  竣工: 2009年6月
  敷地面積: 132.09平方メートル
  建築面積: 63.88平方メートル
延べ床面積: 173.96平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、地上3階建て
  設計: 吉村靖孝建築設計
事務所
  施工: 平成建設
連絡先  
  吉村靖孝設計事務所
  代表: 吉村靖孝
  住所: 〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷
2-3-7 POOL2F
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