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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 196「house I」

10枚のL字型の壁が点在、居場所が自由に選べる空間



 この建物は、同じ大きさのL字型の壁を10枚配置し、その上に屋根を載せてつくられています。壁は一見脈絡なく並んでいるようですが、実は、ある点同士を結ぶと正三角形が現れる、幾何学的なルールに則(のっと)って配置されています。目指したのは、内外が混然一体となった空間をつくること。そして、住む人が“間取り”に拘束されることなく、自由に居場所を選べる住まいにすることでした。


L字型壁が配置された工事中の写真

 敷地は大磯の田園地帯ですが、辺りは宅地開発が進みつつあります。建て主の要望は「中庭のある家」。そこには、「外の自然に親しみながら、プライバシーを保ちつつ、室内外全体を使って暮らしたい」という願いが込められていました。けれども、このおおらかな環境に、都市型の閉鎖的な建物はふさわしくありません。そこで、外から見たとき、どこまでが家で、どこまでが塀(へい)で、どこまでが庭なのか分からないような建物にしたら良いと考えました。

 家族は夫婦2人だけなので、お互いが別々のことをしていても気配は感じられ、かといって相手の邪魔にならないような、付かず離れずの関係がつくれる空間がいいでしょう。外との関係も、中にいる人同士の関係も、その時々の気分やお天気に合わせて、自由に選べれば快適だろうと思いました。

 L字型の壁は、適度に守られた場所をつくりますが、閉じてはいません。壁の角度、壁同士の関係によって、「より開く」・「より閉じる」を操作することができます。同時に、どこまで見えて、どこで遮られるか、視線と距離感も調節できます。

 また、L字型の壁を並べ、その間にサッシを渡していく方法なら、「内」と「外」を同じようにつくれます。壁のどこにサッシを付けるかで、外にするか、中にするかを自由に選べるからです。このことで、内外の一体感・連続感が生まれます。

 こうして、L字型の壁を動かしながら、キッチン、寝室、お茶室など、建て主の求める機能に最適な配置を探し続けた結果が、このプランです。

 キッチンや浴槽は、そこにただ置いてあるかのようにデザインしています。家具も造り付けではなく、すべて自立しています。建物に固定された関係が見えることによって、空間の使い道まで固定されているように感じさせたくないからです。

 正三角形を描く座標といった幾何学を用いて設計するのも、同じ理由からです。自分の考えだけで設計を進めると、建て主に何かを押しつけることになりかねません。幾何学を持ち込むことで、個人の意思を超えた、自然の摂理のようなものに導かれることを期待しています。

 家の中で人は、「夫」や「妻」、「父」や「母」といった役割から逃れられません。その上、キッチンやリビング、ダイニングと名付けられた場所で、何かを演じなければならないような「間取り」にはしたくない。住む人が、ひとりの人間として素に戻れるような居場所、気分に合わせて動ける空間、自発的に何かを発見し、新しい関係を持てるような建築をつくりたいと思っています。
(宮晶子/STUDIO 2A)

house I

建築データ
  所在地: 神奈川県中郡大磯町
  竣工: 2009年1月
  敷地面積: 231.42平方メートル
  建築面積: 108.41平方メートル
延べ床面積: 108.41平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り+木造(屋根)、平屋建て
  設計: 宮晶子/STUDIO 2A
  施工: 横溝工務店
  写真: Jin Hosoya
連絡先  
  STUDIO 2A
  代表: 宮晶子
  住所: 〒231-0006
神奈川県横浜市中区南仲通4-43 馬車道大津ビル4階
  TEL: 045-662-3786
  FAX: 045-263-6667
  E-MAIL: miyaa@studio2a.jp
  URL: http://studio2a.jp
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