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Housing File 23 「藤が丘の家」

ゲストを迎える開放リビングの家、木肌感覚が生きる住空間

隣地の緑を取り込む大きな開口部
南側を大きなガラス張りとして、隣地に広がる緑を借景として取り入れた。室内は、光あふれる開放的な空間

大勢の来客に対応するタタキの玄関
この家には、親しい友人が頻繁に訪れる。1坪のタタキの玄関は、来客に開放的な印象を与える。日曜大工が趣味の奥様は、このタタキを利用して作業することもある

床にレベル差をつけて、ワンルームにした1階
リビング、ダイニング、キッチンが一体となった1階。それぞれの床の高さを変え、料理をしている人、椅子に座っている人、床に座っている人が、同じ目線の高さで会話できるようにした

ムク材板張りのリビング
木と白で統一された清潔感のある空間に、カラフルな家具がよく似合う。リビングは床座スタイル。キッチンの奥は、奥様の仕事部屋。キッチンに近いことで、家事もしやすい

モザイクタイルのオリジナルキッチン
イタリア製のモザイクタイルを使ったキッチン。向かい側はダイニングテーブルで、この家オリジナルのキッチンスタイル。市販のキッチンよりも安くつくることができた

上部をロフトスペースとした個室
2階は、ロフトを持つ個室。南側にある夫婦の寝室の上部は、ご主人が1人こもって、ギターを弾いたり、読書をする“男の隠れ家”

コンパクトにまとめたサニタリースペース
屋根の傾斜をそのまま天井とし、洗面所、トイレ、お風呂をコンパクトにまとめた。狭いながらも、天井の高いゆったりとしたバスルーム

 横浜市郊外に建つ30代の夫婦と3歳になる子供、3人家族の住まいです。ご主人は大手電機メーカーのシステムエンジニア、奥様はフリーのイラストレーター。2人からの希望は、親しい友人たちがいつでも集まることのできる広いリビング。さらに、寝室と子供部屋のほかに、家で仕事をする奥様の仕事部屋、ご主人のための趣味の部屋が欲しいと。

 敷地は25.7坪。第一種低層住居専用地域のため、法定の建ぺい率が50%、容積率が80%という制約条件下で建てられる最大の建築面積は、約20坪。この面積で建築空間を細分化すると、快適な居住スペースは得られないと考えました。施主の希望を最良のかたちで実現するために、ワンルーム形式プラスロフト付き個室を基本に、プランを組みました。結果的に、予算面でもローコスト化を図ることができました。

 1階は、リビング、キッチン、ダイニングをコンパクトにまとめたワンルーム。ポイントは、アイランド型キッチンを中心に据えたことです。この家を頻繁に訪れる客は、気取った客間に通す間柄ではない。一緒に料理をしたり、子供を遊ばせている横で、子育て談議を交わす友人たちです。

 キッチンに立っている人、ダイニングのイスに座っている人、リビングの座卓を囲んでいる人たちが、同じ目線の高さで会話できるように、それぞれの床の高さを変えました。ダイニングテーブルは、キッチンと共用。イタリアのモザイクタイルを張ったオリジナルのデザインです。

 10センチ角のタイル仕様は、使い古された感じがしますが、20世紀初期のモダニズム住宅によく見られたモザイクタイルを使うと、逆に新鮮味があります。25ミリ角のこのタイルだと目地も気にならない。おまけに、特注でも、市販のキッチンより安く上げることができます。

 リビングの座卓もキッチンとつなぎました。この空間にいる人が、ひとつのテーブルを囲んでいるような雰囲気で会話できる配置です。リビングを床座にしたのは、来客が何人であっても融通が利くからです。

 玄関は、施主の希望で、大勢の客が一度に訪れても大丈夫なように、1坪のタタキをつくりました。ワンルームに直結する広い玄関は、来客を開放的に迎え入れます。玄関横のキッチンの裏手には、小さいながらも奥様のための仕事部屋を設けました。リビングで遊んでいる子供の姿が見えるうえ、キッチンと近いため、家事動線がコンパクトにまとまります。

 一方、2階はプライベートな空間です。南側に夫婦の寝室、北側に子供部屋。その間にウオークイン・クローゼットを配置。面積を節約するために、それぞれの部屋に収納をつくるのではなく、間に置くことで共用できるようにしています。

 個室の上には、ロフトスペースをつくりました。夫婦寝室の上のロフトは、ご主人の趣味の部屋。ここでギターを弾いたり、読書をするなど、1人の時間を楽しむ空間です。子供部屋の上のロフトは、将来、子供がもう1人増えたときのためのスペースです。

 また、北側には、テラスのついたバスルームがあります。洗面台の下には、ドラム式の洗濯機を設置。テラスに近いため、洗濯物を干す作業も楽だと、奥様に喜ばれています。面積的には広くありませんが、屋根の傾斜をそのまま室内に現した天井の高いバスルームは、テラス越しに空を眺めることができ、ゆったりとくつろげる空間になっています。

 この家の床は、すべて2×6(ツーバイ・シックス)に使われる構造材に、カンナをかけてムクのまま板張りにしました。安価に入手できる材であったからでもありますが、そこには、これから成長していく子供たちに、じかに木の質感、ぬくもりを感じてほしいという思いがあります。無塗装の木は、サラサラとした感触で、素足で歩くととても心地よいのです。

 私は、特に木にこだわっているわけではありません。予算や施主の好みによって、コンクリート造りでも、鉄骨造りでも設計します。ただ、どんな素材を使っても、その素材がもつ本当の質感を感じてほしい、そう思っています。よく使われる木目調の家具や建材には、実は塩化ビニール素材を加工したものが多く出回っています。それを子供たちが、本物の木だと思って育つことは悲しいことです。

 「家」というものは、人の潜在意識を大きく左右します。もちろん、住み手のライフスタイルやコミュニケーションなどは、それぞれの家族の問題です。しかし、良い家は、生活の質の向上に、有形無形の力を与えてくれるはずです。私は、そうした建築の可能性を信じ、「家族が幸せに暮らせる家」をつくっていきたいと考えています。
(中村高淑・unit-H 中村高淑建築設計事務所)


「藤が丘の家」

建築データ
  所在地: 神奈川県横浜市青葉区
  家族構成: 夫婦、子供1人
  竣工: 2003年6月
  敷地: 84.96平方メートル
  建築面積: 34.36平方メートル
  延べ床面積: 67.48平方メートル
  構造・規模: 木造・一部鉄骨造、2階建て
  設計: 中村高淑(unit-H 中村高淑建築設計事務所)
  写真: 田辺陽一
連絡先
  unit-H 中村高淑建築設計事務所
  代表: 中村高淑
住所: 〒225-0023
神奈川県横浜市青葉区大場町330-2
  TEL: 045-978-4335
  FAX: 045-978-4343
  E-MAIL: nakamura@unit-h.com
  HP: http://www.unit-h.com
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