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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 25 「IT HOUSE」

ガラス・カーテンウオールと住宅、建築家と職人のコラボレーション住宅


街を映す外観
施主の経営する工場で生産されたカーテンウオールを全面的に使用。モデルルームを兼ねた、ざん新なデザインの住宅

無機質の外観と温もりのある室内との対比
壁は、クリア塗装を施したシナ合板。天井に規則正しく配されたSPF材と、ムク材のメープルのフローリングが、軽快な雰囲気と重厚感を演出

シンプルでモダンな洗面所
清潔感あふれる、白で統一した洗面所。シャープな外観と、木の温かみのある内観、そのいずれとも異なるシンプル&モダンのデザイン

室内の雰囲気を一変させる照明
昼間の自然光が降り注ぐ明るい室内を一変させる、ムーディーな照明。近年、バーなどで用いられる照明手法を巧みに採り入れた

米松のデッキに四季を映す
竣工時に不動産会社より贈られたモミジは年に2度紅葉し、季節の移ろいを伝える。道路に面した側のデッキを持ち上げて、目隠しとした

夕陽に映えるカーテンウオール
一見すると、住宅とは思えない外観。カーテンウオールの特質を最大限に生かしたデザインは、環境を映しこむ

 「東京のベッドタウン」とはいっても、まだまだ田園の風情を色濃く残す埼玉県越谷市。その市街から外れ、畑地の広がりに突如コンテナ積みの貸倉庫が出現するような、調整区域の無秩序ぶりをありありと見せつけるなか、「IT HOUSE」は、中庭に面したガラス・カーテンウオールの外壁がひときわ異彩を放ちます。

 施主は、50代のカーテンウオール工場経営者。長年の職人を経て、経営者になった今でも、アルミニウム加工の現場にずっと携わっています。土地を仲介した不動産会社が、「せっかくの家づくりなのだから、建築家に設計を依頼してみてはどうか」と、進言したことから、今回の設計がスタートしました。

 施主と設計者の初顔合わせは、ご主人の経営する工場の事務所。「家づくりは奥様の好きなようにさせて、ご主人自身は財布に徹する」といった印象でしたが、雑談でご自身の手がけた数々の製作品の話を伺ううちに、ご主人の中の「職人魂」を強く感じ、ご主人に家づくりの主役になっていただくべく提案したのが、全面ガラス・カーテンウオールの壁でした。すると、「主要取引先などに向けたモデルルームにしたい」と、話が発展し、当初の計画よりも、ふんだんに使うデザインとなったのです。

 敷地は150坪と十分な広さを持っていながら、開放的な住宅にするには、周辺の景観はあまり期待できるものではありませんでした。そこで、それらの変化にも影響されず、独自の環境を確保できるように、あえて中庭を内包したコの字型の建物形状を選びました。家族は5人。建物は中庭を挟んで、施主夫婦と奥さまのお母さまが住む2階建てのA棟と、子ども2人の部屋のある平屋のB棟の2棟で構成。中庭の北側に配した渡り廊下によって行き来のできる、回遊性をもたせた住宅です。

 敷地の地盤がこの地域特有の軟弱なものであったので、建物の軽量化は必須と考え、木造を選択しました。建物の配置形状から、中庭に面する部分をできるだけ開放させるため、構造家のアイデアで、枠組み壁工法を応用して、中庭の面を構造的にも開放することができました

躯体から独立したカーテンウオールの風圧力は、鉄骨に補強されて整然と組まれたSPF材の水平構面に負担させている

 大きく吹き抜けを取ることで2階の床面での水平耐力が不足するので、その補強のためにSPF材を1尺ピッチのパーゴラ状に設けました。吹き抜け空間に緊張感を与えるとともに、カーテンウオールのガラス面をメンテナンスする際の「キャットウオーク」にもなりました。

 カーテンウオールは、もともと「構造とは切り離された壁」という意味をもっています。この建物でも、中庭に面するA棟の東面は、構造とはまったく切り離されています。そこでその特性を強調することをデザインのキーにしました。1尺ピッチで室内に表れている構造材の規則正しいリズムに対して、わざとカーテンウオールの縦部材を不規則にして、構造の論理にまったく合わせていないことを表現したのです。

 また、ガラスの面積が大きくなるほどガラスは厚くなり、コストが高くなってしまうという問題を逆手に取り、小さなガラスをランダムにデザインすることで、コストの削減を図りながら、建物の表情に豊かさを与えています。

 外壁には、経済性と耐久性を考慮し、ガルバリウム鋼鈑を使用しました。カーテンウオールの質感とともに、どうしても金属的なイメージになってしまうため、人の肌に直接触れる内部には、木材を多用しています。ただし、コストを抑えるために、内壁はすべてクリア塗装しただけのシナ合板です。

 A棟の1階は、キッチン、ダイニング、和室が配され、2階はご夫婦の寝室になっています。1階は、間仕切りのないオープンな空間とし、和室の畳にも段差がありません。ふたつの和室を配置したのは、来客などに応じて、自在に使い分けたいという奥さまの要望です。また、ダイニングの掘りごたつ式のテーブルは、「工場の仲間たちと食事をすることが多い」とのことから、10人が腰掛けられる大きさに設えました。

 キッチンとダイニングの間に設置した階段は、オープンスペースに対しての意識的な間仕切りであり、玄関から室内が直接見えない目隠しの役割をもっています。階段は、1.3メートルの高さで折り返しています。スペースを有効に使うため、キッチン側に収納スペース、ダイニング側にはテレビ台を収納する造り付け家具を組み込みました。

 「IT HOUSE」では、外観、特にカーテンウオールなどのガラス面を敢えて恣意(しい)性の高いデザインにしています。一般的に内外の境にガラス面を用いるとき、その透明感によって境界面の存在感を消すことを考えられがちですが、私たちは「透明といえども存在するものは存在する」として積極的に形を与える道を選びました。結果的には内外の空間に、合理では導けないであろう豊かさを加えることができました。

 また、施主自身が設計だけでなく、施工にまで積極的に参加しています。そうした施主の姿を知って、現場には様々な分野の職人が集い、互いに意見を交換し、その技を駆使してくれました。まさに、施主と設計者と職人、そのコラボレーションによって生まれた住宅です。この仕事で、建物は「人がつくる」ということを実感しました。

 住宅の設計は、ひとつとして同じものはありません。数多くの建物を手掛けたとしても、ひとつの答えに到達することはありません。私達は、施主のニーズに応じた住宅を、コミュニケーションを大切にしながら、ひとつひとつ丁寧につくっていくことを心掛けています。
(ファンク アソシエイツ.)

※SPF材:えぞ松(S/スプルース)、松(P/パイン)、もみ材(F/ファー)という、成長の早い安価な木材を集成して、断面を規格化した建材


「IT HOUSE」

建築データ
  所在地: 埼玉県越谷市
  家族構成: 母親、夫婦、子ども2人
  竣工: 2002年1月
  敷地: 498.00平方メートル
  建築面積: 122.77平方メートル
  延べ床面積: 157.61平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  施工: 株式会社スカイホーム
  工事費: 約3100万円
設計: ファンク アソシエイツ.
写真: 傍島利浩
連絡先
  一級建築士事務所 ファンクアソシエイツ.
  代表: 上垣内 伸一(うえがいと しんいち)
笹尾 徹(ささお とおる)
大島 康治(おおしま こうじ)
住所: 〒111-0051
東京都台東区蔵前4-13-4-203
  TEL/FAX: 03-3861-9220
  E-MAIL: ueg-ueg@zb3.so-net.ne.jp
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