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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 27「FRP-HOUSE」

モダンテイストのローコスト住宅、光が満ちあふれる直線と曲線のフォルム


軽快でモダンなファサード
グリッドパターンが軽快な印象を与える南側外観。中央に位置する階段室は格子構造とし、外壁および内壁に光を透過するFRPボードを使用した

シンプルモダンのエントランス
曲線の壁が視線を奧へ誘導する。写真左の階段室から、やわらかな光が玄関ホールに届く

回遊性のある水回り空間
1階は東西に8畳のベッドルームを配し、中央にゆったりと洗面、トイレ、バスルームを設置。回遊性のあるプランは、実際の広さ以上の開放感をもたらす

アールの壁に囲まれたキッチン
勾配屋根と曲面の仕切り壁で、キッチンの空間を構成。2階フロアのすべての動線がキッチンに集まる

フロアを仕切るキッチン
アールの壁が2階フロアを感覚的に仕切る。カウンターは簡単な食事ができるスペース。クリア塗装したシナ合板の壁はメンテナンスも容易

光のグラデーションによる空間演出
天井までガラス張りとし、光があふれるダイニングスペース。階段室のFRPを透過した光とのグラデーションによって、空間に遠近感が生まれ、より広さを感じる。床は、塩化ビニールシート

やわらかな光に包まれる外観
南面ファサードからやわらかな光が放たれ、その独特のフォルムを道行く人にアピールする。ベランダの手すりは、ポリカーボネートのグレーチング


 20代の若い夫婦のための住宅です。共稼ぎとはいっても、土地を購入しての新築計画。いかにコストを抑えるかが大きな課題でした。若い施主のために「厳しいコスト条件」を逆手にとり、既成概念にとらわれない、ローコストで、ユニークかつ上質な住空間づくりをテーマとして、設計をスタートしました。

 この建物は、東西方向の間口約12.5メートル、南北方向の奥行き約3.5メートルのコンパクトな箱型です。建物全体は在来木造ですが、北、東、西の3面を壁で固め、南側は基本的に構造から開放しています。

 プランは、1階、2階ともに東西に8畳の空間を配置し、中央に生活の機能をユニット化して集約したワンルーム的構成としました。その結果、室内空間は、2間(けん)、3間、2間のグリッドを基本とした左右対称の明快な形となりました。1階の天井高は、シナ合板の規格寸法2400ミリに設定。これらは、施主の生活スタイルや、全体のコストボリュームなどを総合的に考慮したうえで、結果的に導き出したものです。

 階段室は、左右テラスの中央に、建物から独立したひとつの箱として構成し、南面ファサードの意匠上のポイントとしました。外壁、内壁ともに透過性のあるFRPボード(※1)を使用したことで、外光が間接照明のように室内をやわらかく演出し、夜間は室内の照明を街へ放出します。

 半透明のボードで囲まれた階段室は、建物外観を軽い被膜で包んだような効果を生みます。東西に配置したガラス面とともに、この住まい全体のイメージを軽快かつ現代的なものとすることができました。

 FRPボードは厚さ12ミリの単板。木造格子フレームに、ブチル(※2)を挟んで取り付け、コーキングした上からアルミ板で固定しています。本来、コンクリート打ちっ放しの型枠材として作られた規格材ですから、特に加工をする必要がなく、木造のモジュールと整合します。

 また、内壁と外壁の間に10.5センチの空隙をもたせることで、十分とは言えないまでも、ある程度の断熱効果を獲得しています。さらに、2階階段部にカーテンを設置し、階段室を仕切ることによって、室内の暖気や冷気を逃がさないようにしています。このFRPの張り出し壁を構成する格子フレームは構造壁であり、階段室天井を屋根と一体化することで風力に対応しています。

 施主からの要望はただひとつ。洗濯物を干したり、テラスのようにくつろげる「使えるバルコニーが欲しい」ということでした。しかし、東西に2つ同じようなバルコニーを設ける必要性はないうえに、不経済です。そこで、東側に広く使えるバルコニーを設置し、西側には小さなバルコニーを設けました。2つのバルコニーの外形線を、階段室の斜めのラインに連続させることで、南面ファサードに固有のフォルムを与えています。

 1階は玄関、2つのベッドルーム、バスルームやトイレなどの水まわり、2階は、2つのリビングとキッチンのためのスペースです。各フロアは大きく3つに分けられていますが、それぞれは決して広くはありません。できる限り間仕切りを少なくし、回遊性を生み出すことで、空間に広がりをもたせました。

 一般的に、住宅をモダンに構成しようと考えると、無機質な素材が多用されがちです。しかし、ローコストという条件のなかで、室内を無機質なモダンテイストでまとめてしまうと、実際の生活までが彩りの乏しいものになってしまいます。そこで、肌にふれる内装のアールの壁には、厚さ3ミリのシナ合板を目透かし張りにすることで、あたたかみのある空間としました。

 床は、長尺の塩化ビニールシートです。コストパフォーマンスに優れるうえ、ジョイントがないので、清掃や張り替えなどのメンテナンスが容易です。淡いレモンイエローの平滑な床は、壁のシナ合板の色調とマッチし、差し込む光によって、室内にやわらかな印象を与えます。

 床と壁にプレーンな素材を組み合わせることで、住む人とインテリアを主役に、空間そのものは背景となるように考えましたが、一方で、空間にはメリハリとバランスが重要です。1階のエントランスホールや2階のキッチンまわりに大きな曲面の壁をデザインしたのは、そうした意図によるものです。プラン全体がシンプルな中にあって、2つの曲面の壁は、内部空間デザインのポイントとなりました。

 2階の中央のキッチンは、仕切りの壁を天井下でカットし、開放感を確保しました。大きな箱の中に小さな箱があるといったイメージです。キッチンの天井は外壁と同じFRPボード。構造材の上に蛍光灯を設置し、リビングの間接照明としました。また、天井から跳ね返る光が、FRPボードを通してキッチンを照らします。

 傾斜した2階の天井は、910ミリ間隔の構造材に3尺幅のOSBボード(※3)を張っています。面はフラットですが、10ミリの目地をとることで、質感を出しています。表面がサンディングされた既製品で、大理石のような表情を見せます。

 私は、住宅の室内、室外を構成する各部位に対して、さまざまな素材を用いてきました。この建物では、FRP、ポリカーボネート、塩化ビニールシート、アルミニウムなど無機的な素材と、シナ合板 やOSBボードなどの有機的な素材の組み合わせを試みました。ローコストを追求するとともに、それぞれの材料の機能性、経済性、意匠性のバランスをいかに現実のものとするかが、建築家としての腕の見せどころであると考えています。
(小林真人/小林真人建築アトリエ)

※1 FRPボード:ガラス繊維強化プラスチック。軽量なうえ、高い強度、優れた耐食性や耐候性、加工の多様性など、数多くの特質を持つ
※2 ブチル:プラスチック、ゴムなどを基材とし、耐久性、水密・気密性、施工性に優れ、気温の変化にも安定した柔軟性をもち、建物の防水気密性を長期にわたって保持する接着性能のある防水材
※3 OSBボード:原木から切削された長方形の薄い木片を、表面層とコア層の繊維方向が直交するように重ねて高温圧縮した構造用木質ボード。交差積層による強度と剛性を備えている


「FRP-HOUSE」

建築データ
  所在地: 埼玉県上尾市
  家族構成: 夫婦2人
  竣工: 2003年1月
  敷地面積: 181.41平方メートル
  延べ床面積: 107.38平方メートル
  構造・規模: 木造2階建て
  構造: 池田昌弘/MIAS
  施工: 山崎工務店
  設計: 小林真人(小林真人建築アトリエ)
写真: 平井広行
連絡先
  小林真人建築アトリエ
  代表: 小林真人
住所: 〒152-0034
東京都目黒区緑が丘2-18-11
  TEL&FAX : 03-5701-8790
  E-MAIL: atelier-mahito@mub.biglobe.ne.jp
  HP: http://www2u.biglobe.ne.jp
/~mahito/
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