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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 29「CLOSED OPEN」

閉じることで得た開放感、変幻自在の外部空間を持つ家


まるで美術品のような外観
道路側外観夕景。白い外壁が夕闇の色に染まり、アプローチの床に仕込まれたアッパーライトの光が立体感をつくりだす

ラインを強調したシャープなフォルム
斜め前方から見ると、建物の配置が分かる。東側のオープンスペースが駐車場。中庭と同じタイルがアプローチを表現している

内と外が交互に連続
南東の庭から主寝室を通して、中央の庭、玄関ホールまで見通せる。来客時には、寝室をブラインドで隠すこともできるが、普段は開放している

2つの庭と空に向かって開くLD
中央の庭に面したテラスから2階リビングダイニング方向を見る。リビングの向こう側は、南東に配置した庭の上の吹き抜け

頭上から光が降り注ぐ浴室空間
2階北側の浴室にはトップライトが設けられている。浴槽の向こうは、全面開放できる折れ戸の窓

空を見上げて上る階段ホール
トップライトは居室以外の部分に用いた。通り過ぎるだけの空間なら、日差しの強い季節でも気にならない

 30代の若い夫婦の住まい。ご主人は映像関係の美術ディレクターで、空間に対する感性が鋭く、住宅のあらゆるところにオリジナルの演出を求められました。その要求に建築側からの回答を与える作業は、設計者として、とても刺激的な経験でした。この家は、住む人と設計者の二人三脚でつくった作品なのです。

 敷地は奥行きが深く、3方向をぴったりと隣家に囲まれています。唯一空いている前面道路は北側で、間口はわずか6メートルしかありません。この環境にあって、ご夫妻が求めたのは、「カーテンも障子も必要のない住まい」でした。

 そこで、外周を閉鎖的な壁で囲い込み、その内側にプライベートな外部空間-「内なる外」-をつくり、そこから室内に光や風を取り入れる。これは密集地型都市住居の常とう手段ですが、加えて、この住宅では狭さを感じさせない工夫が必要でした。

 この住宅には「内なる外」が偏在しています。1階中央の主寝室、その上のリビングダイニングは、ともに南北両側を外に開き、1階北側の寝室には専用の庭、2階浴室には空に開く窓、そして中空に浮かぶ2つのテラス……。住まいのあらゆる部分が、それぞれに景色の異なる「外」との関係を結んでいるのです。

 具体的には、敷地の南東角、中央、北西角の3カ所に中庭を設けています。玄関を入ると、最初に目に飛び込んでくるのは、ガラス壁で囲まれた中央の庭。その向こう側に主寝室が見え、さらにその奥に南東の庭が続きます。風景はガラスを挟んで内、外、内、外と展開し、面積以上の広がりが感じられます。

 玄関を入って右手は、ほぼ壁いっぱいの大きな鏡。これは靴箱の扉ですが、中庭の鏡像が目くらましになって、廊下の両側に外部空間が広がるかのような錯覚を起こさせてくれます。

 この庭にはヒメシャラの木を植え、イルミネーションを飾ります。さらに、壁を照らし出すスポットライトも設置しました。白っぽいタイルの床は、水が張れるようになっており、ゆらめく水鏡が照明の光を主寝室の天井に映し出す仕掛け。こうした照明や鏡のアイデアは、ご主人の発案によるものです。

 中央の庭の上は吹き抜け、南東の庭の上はグレーチングのテラスで、それぞれ2階リビングダイニングに接しています。リビングにいると、南北両側に外への視界が開けるため、東西方向の間口の狭さが意識されることはありません。

 キッチンは南東テラスに面しており、独立型でありながら窓を通して外やリビングの様子がうかがえる、居心地のいい場所です。夏にはこのテラスで、焼き鳥パーティーを開いて楽しんだそう。

 1階北側は、将来家族構成が変わったときのための予備寝室です。両親が同居してもいいように独立性を高め、専用の庭(北西角の庭)を設けました。庭に面したサッシは折れ戸で、床から天井、壁から壁まで、文字通りの全面開口が可能です。

 予備寝室の上が浴室。外は壁で囲まれているため、入浴中も安心して窓を全開できます。窓は階下と同じく折れ戸で、まるで露天風呂のような開放感が味わえます。ご夫妻とは、「湯船につかると、あふれたお湯が庭に流れ落ちていく、というのもおもしろそうだね」と話していたのですが、実際にはそんなにあふれないらしい。
 
 外から見ると、この住宅には窓がまったくないように見えます。2つの白くて大きな直方体をずらして配置し、木の質感でつなぐ。玄関ドアは、その中に紛れ込むようにつくりました。まるでオブジェのような外観の完成です。

 外に対してこれだけ閉じた場合、課題となるのは通気です。ここでは、中庭のそれぞれにスリット状の開口部を設け、グレーチングをはめ込みました。このことで、風の吹かない日にも中庭には上昇気流が起こり、通気が確保されます。

 閉鎖的な外観と、開放的な内部のドラマチックな対比。写真は竣工当時のものなので、室内も硬質な印象ですが、生活が始まった今は、温かく豊かな空間になっています。鋭敏なセンスを持ったご夫妻が、これから時間をかけて、さらによりよい家につくりあげていくことを確信しています。
(彦根明・彦根建築設計事務所)


「CLOSED OPEN」

建築データ
 
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2002年12月
  敷地面積: 111.91平方メートル
  建築面積: 55.35平方メートル
延べ床面積: 105.69平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  施工: 渡邊技建
  工事費: 約3000万円
  設計: 彦根 明、石橋麻弓(彦根建築設計事務所)
写真: ナカサアンドパートナーズ
平面図
連絡先
  彦根建築設計事務所
  代表: 彦根明・彦根アンドレア
住所: 〒157-0066
東京都世田谷区成城7-5-3
  TEL: 03-5429-0333
FAX: 03-5429-0335
  E-MAIL: aha@a-h-architects.com
  HP: http://www.a-h-architects.com/
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