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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 30「如水亭」

モダンテイストで伝統の住空間、さわやかな光と風、和の質感の調和


外からの視線を遮りつつ、光を取り入れる外観
1階寝室の前面には、スリットを開けた独立壁を設けている。外壁はそのまま2階テラス部分まで伸び、前の住宅からの視線を遮る

玄関前のインナーコート
道路に面した扉を開けると、玉砂利を敷いたアプローチが続く。防犯に配慮しつつ、雨の降り込まない小空間を生み出した

光と風が入り込む2階のリビングとダイニング
左正面の中庭、ダイニングのトップライトからそれぞれ光が差し込む。屋根の形を生かした斜め天井が、空間に広がりを与えている

光と風の通り道となる中庭
1階と2階の壁面をずらし、変化を与えた吹き抜け空間。中庭の周囲には、廊下や階段など主動線を配置した

テラスにつながるリビング
障子を開くと、南面に設けた屋外デッキへと視線がつながる。コーナー部分は腰壁にして、ソファに座ったとき落ち着ける雰囲気に仕立てた

障子に囲まれたリビングへの通路見上げ
開口部には障子と網戸をはめ込み、柔らかい光と風を取り込めるようにしている。左手の障子はキッチンの目隠し

大きな収納を設けた1階廊下
書籍の多い家庭のため、収納の確保は大きな設計条件だった。正面の書棚のほか、洗面・浴室との仕切りに当たる右側壁面にもたっぷりとした収納を用意

 建物が密集した地域に設計した住宅です。

 敷地は広いのですが、道路に面した南側以外は3階建てのマンションやビル、住宅に囲まれているため、朝と夕方の光が期待できませんでした。また、風の通りも良くないでしょう。そこで、光と風を住宅にうまく取り入れることを設計のテーマとしました。

 2階の南側にリビング、ダイニング、キッチンのゾーンを置いています。壁を抜いて広い空間を確保し、中央の中庭を介して風が抜けるようにしました。1階も、中庭の周囲に設けた廊下と階段を通して、家全体に光と風が行き届くようにしています。ダイニングや廊下など、要所にトップライトやハイサイドライトを設置。窓には、網戸と障子を組み込んで、柔らかな光と風が入るように配慮しています。

 設計の際、私が大切にしている要件の1つが、“長もちする家”。

 現在、私たちのまわりに建つ住宅の設計の根底には、明るく快適な空間を目指すモダニズムの考え方が流れています。でも、近代建築には欠点がありました。豊かな光を室内に取り入れるために、深い軒を持った屋根をなくしたのです。その結果、雨が直接、建物に降り注ぐために傷み、老朽化が早く進むという状況を招いてしまいました。

 近代建築は、比較的雨の少ないヨーロッパや米国の気候を前提に発達しました。一方、日本は、和辻哲郎さんの著書「風土」で指摘しているように、モンスーン地帯に位置する多雨地帯です。欧米の設計手法をそのまま取り入れてしまうと、無理が生じます。

 もちろん、単に長もちする住宅をつくろうと考えれば、方法は簡単です。昔からある伝統的な民家の手法を受け継いだ住宅を設計すればいいのですから。

 でも私自身、近代建築に影響を受けてきた人間だから、“モダンな家”を捨てることはできません。モダニズムを踏襲しながらも、その弱点をきちんと踏まえて、できるだけ老朽化しない建物をつくりたい。相反する要素をいかに両立させるかという問題に対し、常に格闘していると言っていいでしょう。

 長もちさせる工夫の1つとして、軒の深い屋根を再現し、日本の気候風土と折り合いをつけることがあります。そうした発想に立ち、如水亭では、敷地境界線いっぱいに軒を延ばし、雨が降り込まないようにしました。その分、光は差し込まなくなりますから、トップライトやハイサイドライトを設けて、採光を補いました。

 また、素材やデザインが古くなったり、陳腐化したりしないようにする配慮も欠かせません。

 そのために、時間とともに汚れてきても、素敵な味わいを生み出す素材を選択しています。如水亭では自然材料を使い、壁には湿式工法を採用しました。外壁は塗り壁、屋根は銅板、室内の壁は色しっくいで、床は秋田スギ。納戸の床にまで、スギ板を使っています。
 
 デザインでは、“無理をしないこと”も心掛けています。すっきりとした見栄えを優先するあまり、構造や雨仕舞いなどの面で余裕のない設計にすると、建物が傷む原因になります。そして、時代遅れにならないデザインにすること。新しさを追い過ぎると、やがてそのデザインは古くなってしまいます。ですから、その時代だけに通用するような物珍しい形、素材は使わないようにしています。

 如水亭は結果的に、プランは洋風、素材は和風という姿になりました。実際、平面図を見ると、これで真っ白な住宅ができても不思議はないでしょう。 でもテイストは、和風です。このように、洋と和の要素をすりあわせて、現代の生活にマッチした住宅を提案していきたいですね。
(川口通正・川口通正建築研究所)


「如水亭」

建築データ
  所在地: 東京都渋谷区
  家族構成: 夫婦、子ども1人
  竣工: 2003年3月
  敷地面積: 138.6平方メートル
  建築面積: 83.12平方メートル
延べ床面積: 160.80平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  施工: 幹建設
  設計: 川口通正建築研究所
写真: 川口通正建築研究所
連絡先
  川口通正建築研究所
  代表: 川口通正
住所: 〒112-0002
東京都文京区小石川1-6-1春日スカイハイツ801
  TEL: 03-3815-9954
FAX: 03-3815-3573
  E-MAIL: kawag@hkg.odn.ne.jp
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