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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 33「鎌倉山の住宅」

高台の眺望を生かす、建築で切り取る3つのシーン

中空に浮かぶ船のような外観
北西側から見た外観。建物の北側半分を宙に浮かせたカンティレバー構造。敷地の南は高さ5メートルの擁壁。坂を上がりきって家にたどりつけば、遠く開ける視界が迎えてくれる

3種類の窓で彩られる白い個室
大理石の白い床がテラスまで続き、外とのつながりを意識させる1階個室。正面の窓は海に向いたピクチャーウインドー、道路に面した左側の窓はシール張りで目隠しし、手前のルーバー窓で換気する

水平線を切り取るパノラマウインドー
2階キッチンから、横長の窓を見通す。外の風景のもっとも美しい部分だけを細長く切り取って強調した。外部テラスの開口まで同じ高さで続き、広がりを感じさせる

白一色で構成されたキッチン・ダイニング
窓の景色や光の陰影が際だつ、白一色のインテリア。右側の壁面には、大きさも奥行きもさまざまなボックスを並べて収納とした。中央の空間にテレビディスプレーを据える

空から光を採り入れる吹き抜けのキッチン
キッチンの頭上は吹き抜けになっており、塔屋の窓から光が降り注ぐ。夏はここから熱気を逃がす

海と空の展望を開く屋上テラス
らせん階段を上がると、屋上テラスに出る。ここからは、はるか遠くまで見晴らしが開ける

階層ごとに異なる開口部
南側外観。1階はほぼ全面が開き、2階には横長の細い窓、その上に屋上と、それぞれ異なる視界を開く仕掛けがなされている

 「海の見える家に住みたい」。長年の夢をかなえるために、ご夫妻が5年がかりで探し出した敷地は、鎌倉山のほぼ頂上にありました。

 緑豊かな住宅地を見下ろし、その先には遠く、相模湾の水平線が広がっています。このすばらしい眺望を、建築というフィルターを通してどのように見せるか。生活の場面、居場所に合わせて、変化のある風景をつくりだそうと考えました。

 設計は、階層ごとに異なる、3つの「海の見えるシーン」を中心に組み立てられています。

 1階は、土地の記憶を留めるシーン。ご夫妻がこの敷地に巡り会ったときの思い、その印象を残したいと考えました。玄関ドアを開けると正面はガラス張りで、海へと視界が抜けていきます。足元は地面に近いレベルの土間なので、初めてこの場所に立ったときと同じ眺め、同じ感覚が得られるはずです。

 海に背を向けて階段を上がりきり、振り返った瞬間が第2のシーンです。目に飛び込んでくるのは、幅5メートルにおよぶパノラマウインドー。この家のクライマックス・シーンです。

 床から90センチの高さにある窓は、敷地のすぐ下に立ち並ぶ家並みを視界から消し去ります。梢と海を中心にした遠景だけを横長に切り取り、水平線の広がりを強調しました。この景色を際だたせるため、室内は床も壁も天井も、すべて白一色です。中央には、奥さまの好きなル・コルビュジェのガラステーブルを置く計画。そこに座ったとき、ちょうど目の高さに、もっとも美しい絵が現れるように設定しています。

 キッチン上部の吹き抜けに掛けたらせん階段を上ると、塔屋階に出られます。ここは屋上テラスに向いた全面が窓。遠く高く、空へと広がる180度の展望が第3のシーンです。

 1階と塔屋階の海側は、それぞれ建物のひとつの面を全部ガラス張りにしたような開口です。そこから得られる第1のシーンは土地そのものに備わっている景色、第3のシーンは、ある高さまで上がりさえすれば手に入る景色と言えます。

 これらに対し、2階の細長い絵のような景色は、家を建て、窓を開けるという行為によって初めてつくりだせるシーン。もしここも全面開口にしたとすれば、第1のシーンも第3のシーンも、見分けがつかなくなったのではないでしょうか。

 建物は1階を鉄筋コンクリートの壁式構造、2階以上は鉄骨造りとしています。敷地の北側は車2台の駐車スペースにあて、その上からかぶせるように2階を張り出しました。中央北側に掛けた階段には、この張り出し部分を受ける役目もあります。

 1階では南側を大きく開くために、トイレや廊下の間仕切り壁によって建物を支えています。また、2階吹き抜け上の塔屋は、建物のほぼ中央に位置するキッチンと、その背後にある寝室に日光を届けると同時に、室内にこもる熱気を逃がす装置でもあります。

 こうして、道路側に凸字型の側面を見せる、カンティレバー(※)のダイナミックな建物が完成しました。
(納谷学+納谷新)

※カンティレバー:片持ち構造。片側のみ柱や壁で支え、反対側を宙に浮かせる構造


「鎌倉山の住宅」

建築データ
  所在地: 神奈川県鎌倉市
  家族構成: 夫婦、子ども1人
  竣工: 2003年 10月
  敷地: 200.08平方メートル
  建築面積: 79.59平方メートル
延べ床面積: 127.02平方メートル
  構造・規模: 壁式RC造+鉄骨造り、地上2階、塔屋1階
  施工: キクシマ
  工事費: 約 3600万円
設計: 納谷学+納谷新/納谷建築設計事務所
写真: 吉田誠
連絡先
納谷建築設計事務所
  代表: 納谷学+納谷新
住所: 〒211-0002
神奈川県川崎市中原区上丸子山王町2-1376-1F
  TEL: 044-411-7934
FAX: 044-411-7935
  E-MAIL: m-a.naya@f2.dion.ne.jp
URL: http://www.f2.dion.ne.jp
/~m-a.naya/
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