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Housing File 36「白い箱の家」

光がもたらす広がりと立体感、箱空間に多様性を施す

都市の谷間に浮かぶシンプルな四角い箱
マンションに隣接する敷地に、シンプルな四角い箱が、地面から浮かぶようにポンと置かれている。入り口右手にあるエキスパンドメタルの扉を入ると、かごのように囲まれた犬走りが続く

台形プランが広がりを与えるリビング
2階は東西方向に開口を設けたワンルームのリビング。奥の食卓側は、幅と高さを2メートルに抑える一方、手前はそれぞれ2.5メートルまで広げて視覚的な広がりを与えた

背後からの光に浮かび上がる家具
リビングには、テレビやパソコンなどを組み込める家具を作り付けた。背後からの採光によって、浮かび上がる姿が時間と共に変化する

上部から光が差し込む1階の寝室
北側の壁に沿って2階から光が落ちてくる。作り付け家具と床の黒い塗装と、光を受ける白い壁面との対比が印象的

光を透過させる階段まわり
光が透過するように、階段にはパンチングメタルを用いた。2階の天井に設けたトップライトが見える

白と黒を対比させた1階通路
1階の北側を貫く通路。ガラスとパンチングメタルを用いた2階の床面を通して、光が注ぎ込む。作り付け家具の光を受ける天面は白、側面は黒に塗り分けた


 若い夫婦の家です。ちょうど竣工するころに赤ちゃんが生まれ、今は3人で暮らしています。
 
 家は駅に近く、南側に5階建ての集合住宅が隣接し、北側の戸建て住宅も将来は大きな建物になる可能性があるという、谷間のような敷地でした。得られる日射は限られています。だからといって、朝から照明をつけるような住宅にはしたくない。光をいかに2階から1階へ届けるかをテーマに、設計を進めました。

 東西に長いシンプルな四角い箱とした建物の北側に、直線状のトップライトを設けました。トップライトの下に通路を兼ねた2階キッチンと階段を配置し、その床面にパンチングメタルを使うことで、光を1階まで透過させます。

平面図  個室を置いた1階には、南側に開口を設けました。もちろん、これらの南面採光は大切ですが、私は北側の光も重視しています。ともすると北側の面は、閉ざされて圧迫感を与えがちです。しかし、ここでは北側に設置したトップライトから、壁に沿って光がさっと落ちてくる。部屋全体に光がまわり、軽快な感じを与えるのです。

 一方、2階は東西に開口を設け、ワンルーム状の食堂とリビングにしています。トップライトの手前には、テレビやパソコン、トイレ、ヒーターなどのための作り付け家具を組み込みました。凸凹のある要素はこの家具に集約し、あとは天井と壁、床をすっきりと見せています。この作り付け家具の背後から光を透過させることで、立体感を与え、刻々と変わる光を感じられるようにしました。

 家の内部には、できるだけ光を入れたいものです。しかし、今回のようにトップライトをつくることを、常にお勧めしているわけではありません。ガラスのメンテナンスができないと、汚れを放置することになってしまいますし、日射量が多過ぎて、相当暑くなる場合もあるからです。
 
 「白い箱の家」は、屋上に出られるので、簡単にガラスを清掃できます。また、北側に配置したため、夏の暑さも緩和される。そうした点を考慮したうえで、トップライトを設けました。

 内部空間を考える際、もう1点留意したのは、平屋建てにはない2階建ての良さを感じさせる設計とすることでした。

 工夫の1つが、1階と2階で部屋の向きを変えるプランの採用です。1階は、南北に長い個室や水まわりを東西方向に並べたのに対し、2階は東西に長いワンルームとしました。階段を上ると部屋の向きが変わり、光の入り方も変わります。これは、小さな空間に多様性を与える有効な手法だといえるでしょう。

 また、1階と2階では、素材の使い方に変化をつけました。2階は全体に明るく、1階は黒を基調に落ち着いた雰囲気としています。

 ここで意識したのは、光をきれいに見せること。例えば1階では、光を受ける北側の壁面に白を用い、黒く塗装した家具や床面と対比させています。1階の廊下に設けた作り付け家具も、光を受ける天板は白、垂直面は黒と塗り分けました。白い壁面ひとつとっても、光のグラデーションを見せたい場所はマットな白、反射させたい場所は艶(つや)ありの白と、塗料を使い分けています。

 2階のリビングは、平面も断面も台形としました。東側の食堂部分の端は、横幅と天井高を2メートルに抑える一方、西側のリビングの端部はそれぞれ2.5メートルを確保しました。壁や天井を斜めにすることで、視線に“逃げ”が生まれ、対面する壁から受ける圧迫感が減少します。同じ面積でも、台形プランにすると広がりを感じるのです。

 正直にいって、天井の高さを2メートルまで下げるのは勇気がいりました。一般的に、天井が高い方が喜ばれます。しかし、食卓まわりには、洋服を着るような身近なスケール感をつくり、親密な感覚を生み出したかったのです。出来上がってみると、ちょうどいいスケールの空間になったと思います。
(高安重一+添田直輝/アーキテクチャー・ラボ)


「白い箱の家」

建築データ
  所在地: 東京都板橋区
  家族構成: 夫婦、子ども1人
  竣工: 2002年12月
  敷地面積: 153.77平方メートル
  建築面積: 51.89平方メートル
延べ床面積: 95.48平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  施工: 群峰工業
工事費: 2200万円
設計: 高安重一+添田直輝/アーキテクチャー・ラボ
  写真: 木田勝久
連絡先
アーキテクチャー・ラボ
  代表: 高安重一+添田直輝
住所: 〒111-0042 東京都台東区寿1-8-1-301
  TEL: 03-3845-7320
FAX: 03-3845-7352
  E-MAIL: takayasu@architecture-lab.com
URL: http://www.architecture-lab.com/

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