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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 37「アビコ」

細長い敷地を縦に分割、四角い筒の家に路地の庭

門のかたちに開くファサード
道路側外観。建物自体が門のようにぽっかり開き、半戸外のエントランス空間をつくる。大きな空洞にはポストやシンク、スノコ、傘立てがあり、多目的に利用する

路地に面した縁側のような食堂
玄関から建物の奥を見通す。写真左手、東半分は吹き抜けで、その1階をLDKとして使う。窓の外を庭が通っていることで、隣家との間に距離感が生まれ、狭い間口にも広がりをもたらす

座の生活に合わせた天井の低い空間
食堂から玄関方向を見る。写真左手がキッチン。座る生活を前提とした空間なので、天井は低く抑えている。吹き抜け上のホビールームとも一体感がある

吹き抜け越しのホームシアター
2階のホビールーム。プロジェクターで壁に映像を映して、ホームシアターを楽しむ。ビデオテープの廃材でつくられた内装パネルは、吸音と断熱の機能を兼ね備えている

機能重視でローコスト素材を選択
ホビールームの手すりは透明なアクリル製で、映画鑑賞時も目障りにならない。ベンチはクッション材とポリプロピレン製の収納を組み合わせたオリジナル。階下に洗面室と玄関が見える

奥行きを生かした開放的な住空間
東側の庭から夕景を望む。細長い敷地を長尺方向に分割して、広い開口面をつくった。路地のような庭は、介護車両の進入路にも使えるよう考えられている

 若いご夫婦と母親の3人家族。1階だけで日常の用を足すことができ、サラウンドでホームシアターが楽しめる住まいを、という希望でした。

 計画は、「まだ土地も決まっていないんですが、相談に乗ってもらえますか」という問い合わせから始まりました。提示された当初の予算は、建築費と敷地購入費を合わせて3000万円。ご主人の通勤2時間圏内であれば、場所は問わないという条件でした。

 建物の規模や構造は、敷地によってある程度決まってしまいます。私たち建築家が、土地の選定にかかわるメリットは大きいでしょう。どんな家に住みたいか、およその希望を伺えば、土地・建物それぞれに、いくらずつ予算を割くべきかもアドバイスできます。

 予算が厳しいケースでは、すべてに好条件の敷地は望めません。ご家族が見つけてきたのは、南側に15階建てマンションの建築が予定されているために、買い手がつかないという物件でした。しかし、きちんと調査してみると、マンションによって日照が大きく妨げられる心配はないことが判明。そこで、購入に踏み切ることになったのです。

 敷地は間口が狭く、南北に長い形状。南側を空けて、日当たりを確保するのが定石(じょうせき)でしょうが、ここではあえて、細長い敷地を縦に分割しました。西に建物、東に庭という配置です。建物は南北に深い奥行きを持ち、東は窓の外全面に庭を望むことで広がりが得られます。

 細長い平面にふさわしいボリュームを考えると、背はあまり高くしたくありません。まず階高を抑えた、四角い筒のような建物をつくり、そこに必要な要素を配分していきました。

 道路側は、建物の切り口を見せるように、ぽっかりと空洞を残したエントランスヤード。アプローチであり、ビルトインガレージであり、水場を備えた作業場にもなるあいまいな空間です。自転車や買い物カート、傘立てなどが置いてあって、土間に渡したスノコから出入りする雰囲気は、学校の昇降口を思わせます。

 中に入ると、建物の東半分は上下階吹き抜け。1階はLDK、2階はホビールームになっています。日当たりのいい南側は、夫婦と母親それぞれの個室にあてました。

 生活に必要な機能はすべて1階に。浴室や洗面室など水回りは、北側にまとめています。食事にはイスを使わず、ちゃぶ台を置いて暮らしたいとのことでしたので、天井も最近の住宅にしては低めの2.2メートル。床に座ったときにちょうどいい高さで、2階との距離も近く感じられます。

 階上のホビールームは、ロフトのような空間。ホームシアターを楽しむときは、天井の西寄りに吊したプロジェクターから吹き抜け越しに、東の壁面に映像を映します。まわりの壁と天井には、磁気テープの廃材でつくられた吸音材を張りました。室内を暗転させるため、すべての窓が内側からシャッターを下ろすように、建具でふさげるようになっています。

 全体として、「2階建て」というより「ロフト付き平屋」と呼ぶ方がふさわしい、コンパクトな建物になりました。床面積も必要最小限です。将来、子どもが生まれて家族が増える可能性はありますが、限られた予算のなかで、余分なものにコストをかけたくはありません。現在の生活に沿わせつつ、今後の変化にも対応可能な、余力を残した家づくりを心がけました。
(蜂屋景二・川村則子)


「アビコ」

建築データ
  所在地: 千葉県我孫子市
  家族構成: 夫婦、母親
  竣工: 2003年8月
  敷地面積: 109.40平方メートル
  建築面積: 55.95平方メートル
延べ床面積: 83.02平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  施工: スリーエフ
設計: bbr/蜂屋景二・川村則子
  写真: 中川敦玲
連絡先
bbr
  代表: 蜂屋景二・川村則子
住所: 〒135-0004東京都江東区森下2-8-7
  TEL・FAX: 03-3632-3303
  E-MAIL: bbr@h3.dion.ne.jp
URL: http://www.h5.dion.ne.jp/~bbr/

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