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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 39「Pelada」

「自分らしさ」を描くカンバス、住みながらつくり続ける家


空に向かってふくらむ細長い箱
道路側外観。縦長のファサード同様、奥行きも細長い建物だ。透明な外壁はポリカーボネート。断熱性も防音性もガラスには及ばないが、「自分たちの手でも扱える材料を」という施主の要望で選択した

多目的に使うオープンな土間
訪ねてくる友人たちのために、駐車スペースを3台分用意した。1階はビルトインガレージでもあり、焼き肉やバーベキューを楽しんでも匂いのこもらない、オープンな半戸外空間

東西の全面開口から日光が降り注ぐ
2階全景。天井が高く幅の狭い空間には、すみずみまで日の光が差し込む。日よけを兼ねた棚や階段下は収納で、テレビを置けばリビングに、パソコンを置けば書斎にと、フレキシブルに使える

細長い空間に変化を与える光
2階から3階へ至る階段を見る。東の開口は細いルーバー、西には床から天井まで等間隔の棚が並んでおり、太陽の動きにつれて、光と影が変化していく

人目を気にせず過ごせる3階
近隣の屋根より高い位置にある3階は、外からの視線を気にせず過ごせる。住まいの中でもっともプライベートな空間

頭上から光が降り注ぐ階段ホール
3階階段ホールには、半透明のポリカーボネートの屋根がかかり、上から光がたっぷりと降り注ぐ。写真突き当たりは浴室

 施主は、第一子が誕生したばかりの年若いご夫妻です。購入した土地は東京近郊の密集地にあり、確保できる床面積は30坪ほど。建築予算も限られており、決して好条件とはいえません。それでも、あえて「一軒家を建てる」ことを選択したのは、2人の強い意志でした。

 彼らが求めたのは、集合住宅では確立しえない「プライバシー」。それは、外の社会から解き放たれて、身も心も「素」になれることであり、同時に「自分らしさ」を思う存分に発揮できることです。LDKや寝室や子供室といった、既成の「間取り」概念には縛られたくない。壁を張ったり色を塗ったり、自分たちの手で自由につくっていける「素の箱」が欲しいと。私の仕事は、日当たりよく風通しよく、それでいて、外界からはきちんと守られる環境をつくることでした。

 敷地は北側の道路を除いて、三方を隣家に接しており、南からの採光は望めません。そこで、建物を細長くして斜めに置き、北東と南西の両側にすき間をつくりました。東はアプローチと駐車スペースを兼ねたパブリックな庭。これに対し、建物を通って入る南西側は、プライベートな内庭となります。両側の隣家との間に距離をおくことで、互いの生活音を隔て、風通しを確保します。

 建物内部の構成は、1階から上に行くほど、心と体の解放度が高くなるように考えました。家の中に入って、階段を上がるごとに、身を包んでいた衣服や化粧を脱ぎ捨て、心を解き放っていくイメージです。

 1階はガレージを兼ねた土間。扉を開け放てば、家族以外の人も自由に入れるような、パブリックな性格の強い半戸外空間です。事実、ここは、友人を招いての焼き肉パーティーなどに活用しているそうです。

 靴を脱ぐのは、2階から。面積が小さい代わりに、天井高を3.6メートルとって、たっぷりとした空間を確保しました。東西両側が全面開口で、一日中さんさんと日が降り注ぎます。光と視線を調節するため、東の開口部は外側から木製ルーバーで覆い、西は室内側に、深さ30センチほどの箱状のルーバーを設けました。これは、西日の強さを抑える役目と、展示収納としての機能を兼ね備えています。

 3階まで上がれば、周囲の家は眼下に消え、視界を遮るものはなくなります。外から見られる心配なく、安心して裸にもなれる場所です。天井は低いけれど、トップライトから光が入り、圧迫感はありません。その、空を眺める一番いい位置に浴室を設けました。

 今、施主夫妻は、透明な外壁を二重にしたり、収納扉をつくったり、次々と工夫して住まいを進化させています。おそらくこれからもずっと、つくり続けていくことでしょう。

 この建物に特徴的に見える点があるとしたら、それはすべて彼らの要望が現れたものです。住宅とは、住む人の生活のテーマを表現するもの。そのために私はいつも、打ち合わせの前に、ご家族だけで要望書をつくっていただくことにしています。希望をすべて挙げ、優先順に並べ替えて書き出す。その作業に私は一切タッチしません。最初から一緒に話し合えば、手っ取り早いかもしれないけれど、それでは率直な思いを引き出せない可能性があると思うからです。

 まず住む人の価値観や人生観をしっかりと受けとめ、それを引き伸ばすデザインをしなければ、納得の得られる家はできません。長く住み続けていくには、完成したときの満足度が100%では足りないのです。プラス20、30%の感動、自分のリクエストがこんなふうに表現されるのか、という新鮮な驚きを生み出すのが、建築家の手腕だと考えています。
(安部良)

「Pelada」

建築データ
  所在地: 埼玉県草加市
  家族構成: 夫婦、子ども1人
  竣工: 2003年 5月
  敷地面積: 106.49 平方メートル
  建築面積: 39.33平方メートル
延べ床面積: 111.86平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階
  施工: 浅野工務店
設計: 安部良
  写真: 宮本真治
連絡先
  代表: 安部良
住所: 安部良アトリエ
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷 4-2-22-201
  TEL: 03-3407-4676
FAX: 03-3407-4675
  E-MAIL: aberyo@dd.iij4u.or.jp
URL: http://ishiyama.arch.
waseda.ac.jp/www/
lab/abe/aberyo.html

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