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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 41「U2-HOUSE」

地下、屋上まで活用する、「立体的ワンルーム」の住まい


外観にリズムを与える中空の階段
敷地は小さいながら、南側が近隣共有の通路として開けるのが利点。バルコニーや外階段は、容積率の規制に含まれない「ゆとりの空間」。ソリッドな建物に、階段のフォルムと陰影がリズムを与える

玄関ホールは「ウェルカムリビング」
地下1階、地上2階の住まいの中心をなす玄関ホール。将来の暮らし方によって、さまざまな使いみちが想定される。写真右手の吹き抜けは、下が寝室、上がLDKに連続している

生活空間を広げるバルコニー
2階キッチンからリビング方向を見る。間口約3.6メートルの空間に、1.4メートル張り出したバルコニーが広がりを加える。床の一部は吹き抜けに通じるFRPグレーチング、天井は珪藻土クロス。フローリングと同じ桐でつくったテーブルは、山嵜さんのデザイン

家事を集約するキッチン&サービスバルコニー
リビングとらせん階段で隔てたオープンキッチン。左手のドアはバルコニーに続く。FRPグレーチングの壁で目隠しした部分が、屋外の洗濯機置き場と物干しになっている

3つのフロアが縦につながる立体空間
らせん階段の途中から吹き抜けを見る。地下の寝室、1階のホール、グレーチングを透かした2階までが立体的につながっている。地下室だけに断熱、床暖房を施し、暖めた空気を家全体に循環させる

箱の移動家具で使いこなす寝室
明るい赤い床の地下寝室。丸い通気口をあけたベッド、オープンな箱型の家具も山嵜さんデザイン。箱にはキャスターが付いていて、移動して間仕切りに使うことも可能だ

 私たちはいつも、施主と「ともにつくる」ことを設計の基本姿勢にしています。住まいは生活の道具ですから、使いみちは住む人自身にじっくり考えていただく。建築家が提案するのは、その暮らしを入れる器です。打ち合わせを重ね、実際に住みこなせるかどうか、確認しながらつくりあげていきます。

 この家は、夫婦と、まだ幼い息子さんの3人暮らし。設計の時点では、新居でどんな生活を営むか未知数でした。ただ、1人でこもる部屋は必要ない、と。したがって、後から自由に使いこなせる空間をつくることが課題になりました。

 回答は、ありきたりのようですが「ワンルーム」の家。ただし、わずか19坪の敷地に建ぺい率50%という条件ですから、平面は10坪に足りません。そこで、地下室を設け、そこから2階まで、3つのフロアを縦につないで、立体的な構成の「ワンルーム」としました。

 玄関を入ると、家の中の扉はサニタリーとワインカーブの2枚だけ。ほかに壁はいっさいありません。各階は部屋の奥行きいっぱいの吹き抜けと、そこに掛けたらせん階段で連続しているので、音も空気も、家中を素通しに流れます。

 地下室は、床に赤いリノリウムを張った寝室。全体に温水床暖房を巡らせてあり、ここで温めた空気が、吹き抜けを通って2階まで上がっていきます。上がりきった暖気は、2階のダクトファンで集め、再び地下へと吹き戻す。オープンな空間を効率よく暖める工夫です。

 その代わり、1階、2階の床暖房は省略。床材には、桐のフローリングを用いました。桐はほかの樹種に比べ、触れたときの温度が高い木材。柔らかく傷つきやすいのが難点ですが、実は、スチームアイロンをかけると元に戻る性質を持っています。

 1階の広い玄関ホールは、名付けて「ウェルカムリビング」。現在、幼稚園に通う長男が、友達を連れ帰って遊ぶ場所になっています。将来は子供部屋になるかもしれないし、親が同居して寝室に使うかもしれない。使途自由のゆとりの空間です。

 LDKは2階。吹き抜け部分には、格子状の透ける床を掛け、部屋を広く使います。南側には奥行きのあるバルコニーを張り出し、さらに生活空間を広げました。ここから屋外階段を上がれば、屋上菜園に出られます。

 地上に庭がつくれない代わり、屋上は日差しを遮るもののない青空空間。躯体防水というコンクリートの防水処理を施して土を入れ、芝生を植えたり、菜園として使う。これには、建物の断熱性能を高める効果もあります。

入居1年後の屋上(施主撮影)
 ただ、屋上菜園は、夢だけではなかなか維持できません。その点、このご家族には、以前から小さな畑を借りて野菜をつくっていた実績がありました。入居後2年を経て、屋上にはきゅうりやナス、トマト、大葉やオクラ、じゃがいもなどが育っています。昨夏は、スイカも収穫したそうです。

 住宅は、完成して、生活が始まってから真価が問われます。設計の意図通りに使ってもらえているか、また新たな工夫が求められていないかを確認するために、竣工後半年、1年、2年と検査を行っています。ただ、それを過ぎると、疎遠になってしまうケースが多いのです。

 契約が終了してから先方を訪ねると、気を遣わせてしまうし、施主の方も相談を持ちかけにくくなります。そこで、今後の課題として「家守り(いえもり)」のシステムを検討中です。あえて一定のお金をいただくことで、気兼ねなく家のことを話し合えるようにしたい。年1回程度の「定期検診」を行いながら、建物を守り、育てていく仕組みがつくれればと考えています。
(山嵜雅雄)

「U2-HOUSE」

建築データ
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 夫婦、子ども1人
  竣工: 2002年9月
  敷地面積: 62.98平方メートル
  建築面積: 31.44平方メートル
延べ床面積: 78.33平方メートル
  構造・規模: RC造り、地下1階地上2階
  施工: 栄勝建設
設計: 山嵜雅雄建築研究室
  写真: 平井広行
連絡先
山嵜雅雄建築研究室
  代表: 山嵜雅雄
住所: 〒151-0063東京都渋谷区富ヶ谷1-10-2 AsHEITZ-B
  TEL: 03-5790-2945
FAX: 03-5790-1945
  E-MAIL: info@yamazaki-archi.co.jp
URL: http://www.yamazaki-archi.co.jp

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