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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 43「今川の家」

空と緑を切り取る窓、借景を楽しむシンプルハウス


2階を大きく開いたファサード
道路側外観。1階は閉じ、2階は床から天井まで全面開口とした。普段は、薄く透ける白いカーテンをひいて暮らす。玄関前に敷いたグレーチングの下は、地下のドライエリアになっている

柱も壁もない、筒のような内部空間
道路側の窓を室内から見る。奥行き約9.5メートルの四角い空間が、外の景色をシャープに切り取る

児童公園を望む東側外観
道路と反対側の隣地は児童公園で、窓の両側にケヤキが枝を広げている。こちらも全面開口。半透明のスクリーンのようなフェンスの内側に、デッキテラスがある

青空と梢を切り取る高窓
道路側のリビングからダイニング、公園を望む窓を見通す。南北(写真の左右)は、隣家を避け、木々の梢だけが見える位置に高窓を開けた

戸外の空気を楽しむデッキテラス
児童公園に面した窓は折れ戸で、全部開け放てる。外は庇をかけたデッキテラス。いすとテーブルを出して、お茶や食事が楽しめる広さ

階段の上に空が開ける
玄関ホールから階段を見上げると、ケヤキの緑が目に飛び込んでくる。階段両側に設けた曇りガラスの窓は、寝室と廊下の明かり採り

 30代の夫婦と小学生の兄妹が暮らす家です。私たちが手がけた家の建築現場を通りかかったことがきっかけで、設計を依頼されました。特に、木を植えた中庭が気に入ったそうで、「コートハウス(※)がほしい」という要望。しかし、用意された敷地は細長く、中庭をつくるには不向きでした。

 敷地の南北は隣家が迫っていますが、東に児童公園が隣接しているのが利点です。緑豊かとはいえないものの、ケヤキが2本、枝を広げています。2階の窓を開ければ、目の前は緑。中庭の代わりに、この景色を最大限に生かす方法を模索しました。

 奥行き約11.5メートルの建物は、2階全部をLDKにあてています。東西の両端は、全面、外に向かって開きました。内部は、柱も間仕切り壁もない、四角い筒のような空間。しかし、その単純な箱の中では、居場所によってさまざまなシーンが展開します。

 キッチンとダイニングは公園を望む東寄り。ダイニングの窓は全開できる折れ戸で、外にテラスが連続します。テラスは、屋根のかかった半戸外・半屋内のスペース。天気のいい日は、すぐにテーブルを持ち出せます。

 道路側の窓は、床から天井までのはめ殺し。半透明のカーテンをかけることを想定し、中途半端な腰壁や下がり壁は不要と判断しました。2階なので、カーテンを開けても、前面道路から奥までは見えません。

 南北両側は、隣家とのプライバシーを考え、緑や光が見えるところだけ窓を開けました。ソファに座って見上げる位置には、桜の梢を切り取った高窓。ダイニングの向かい側は、幅4メートルの細長い開口部で、北の空高く見通せます。キッチンに立てば、公園のケヤキの幹が眼前に迫ります。

 さらに、公園の緑は、階段を通じて1階からも望めます。玄関を入って正面の階段は、東の窓に向けて設置。ケヤキの梢を見上げながら、2階に上がるわけです。

 コートハウスならば、敷地の内側で植栽と窓の配置を工夫すれば、比較的簡単にイメージした景色がつくれます。しかし、すでにある周囲の樹木を利用するには、窓の位置や大きさは限定されます。望ましい位置に窓を開けるために、建物を支える鉄骨の配分にも、注意を払いました。

 敷地の条件と同時に、住む人の意識やライフスタイルによって、建物の設計、とくに開口の取り方が変わってきます。この家の住人は、アウトドア志向の活動的な家族。外での活動の延長に住まいがあるような印象を受けたので、建物も思い切って外に向かって開きました。同じ敷地でも、住む人が違えば、まるで違う家になったことでしょう。

 私たちはいつも、ハードとしての建物より、豊かな内部空間を提供するという意識で住宅を設計しています。複雑なフォルムをつくったり、暮らし方を規定するような動線計画は行いません。住む人の言葉の中から、求める暮らしのイメージを読み解き、それを、敷地が備えている特性と照らし合わせて、回答を探ります。住宅の個性、快適性の発見は、それぞれの土地からこそ得られると思うからです。
(八島正年+高瀬夕子)

※コートハウス:中庭(コート)を囲むように建てられた住宅のこと。狭い敷地でも、採光や通風が確保でき、プライバシーも保てるなどのメリットがある

「今川の家」

建築データ
  所在地: 東京都杉並区
  家族構成: 夫婦、子ども2人
  竣工: 2003年8月
  敷地面積: 103.04平方メートル
  建築面積: 61.69平方メートル
延べ床面積: 162.84平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り+鉄骨造り
  施工: 赤羽建設
設計: 八島建築設計事務所
  写真: 八島建築設計事務所
連絡先
八島建築設計事務所
  代表: 八島正年、高瀬夕子
住所: 〒231-0013 神奈川県横浜市中区住吉町1-4第3白井ビル3階
  TEL: 045-663-7155
FAX: 045-663-7156
  E-MAIL: myashima@yashima-arch.com,
ytakase@yashima-arch.com
URL: http://www.yashima-arch.com/

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