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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 44「関原の家」

シークエンス豊かな建築を目指す、線、面、光で分節した住空間


抑制したデザインの外観全景
住宅密集地の中の個性的な住宅外観。打ち放しコンクリートと黒い壁面のシンプルなファサードに対して、東南のコーナーウインドーがアクセントを与える

屋外テラスを設けた北側外観
両親宅に面した北側。2階の上部に屋外テラスを設け、開放した。夜は、光のテラスとなる

外からの視線を遮り、光に満ちた空間
2階はリビングダイニングを中心としたパブリックスペース。天井の高さに変化を与え、分節しながらも一体的な空間にまとめた。開口部から十分な外光を取り入れる

吹き抜け状のリビングダイニング見下ろし
1.5層分の高さをもつリビングダイニングを南方向に見下ろす。らせん階段を上がると、小さな書斎スペースと屋上テラスにつながる

屋上テラスとリビングダイニング
室内側に貫入するテラスを通じて、リビングダイニングに外気と光を取り入れた。ここでも、天井高の違いが空間に多様性をもたらしている

中庭を介して祖父母の家につながる子ども室
1階北側に並ぶ子ども室。地面より少し掘り下げたため、視線が低く抑えられている。外の庭を通して、北側に建つ祖父母の家の気配を感じられる

 東武伊勢崎線の西新井駅から歩いて約10分、足立区に建つ住宅です。北側には、ご主人の実家、西側に実家の経営するアパートが隣接しています。ここに、30代後半の夫婦と年少の男の子2人が暮らす家を建てました。

 2─3階建ての住宅が密集する地域に、戸建て住宅をいかに存在させるか。光の取り入れ方や周辺の町との折り合いのつけ方について、スタディーを重ねました。その結果、住宅のファサードは両親の家が建つ北側にだけ開放し、残りの3方向に対しては開口部の少ない閉じた家としました。

 北面以外の外壁では、2階の東南の角に唯一大きな窓を設けました。南側道路の対面には幼稚園があり、園長さんの住まいが建っています。実は、ご主人も2人の子どもたちもこの幼稚園に通い、園長さんをよく知っているという仲。園長さんの家の北側には、小さな窓しかないため、プライバシーの心配がない一方、互いの人間関係も考えて、この位置なら大きな窓を設けても気にならないだろうと判断したのです。

 クライアントの希望で、屋上テラスを設けました。ただしここでも、周辺に屋上テラスを持つ住宅が多いため、下手をすると外からまる見えになってしまいます。そこで、外部を囲って視線を遮り、中庭風の設計としました。

 内部は、1階に個室をまとめています。2階には、キッチンとリビングダイニング、そして予備室である和室を配置しました。

 毎日の生活や季節の移ろいのなかで、光の入り方や空間の見え方など、いろいろな発見ができる…。そんな家をつくりたい、と私は考えています。具体的には、平面だけでなく断面方向の空間配置に工夫をしています。今回の設計では、天井や床面の高さに変化をつけることで、それぞれの空間を微妙につなぎ、光を取り込むようにしました。

 例えば、2階では南側の天井高を1.5層分確保し、すべての部屋がつながるようにしました。天井が1.35メートル下がった北側には、壁に囲まれた屋上テラスをL字型に貫入させています。外皮で1回仕切ったうえで、屋上テラスからリビングダイニングに外光が入り込むようにしたのです。また、リビングダイニングから屋上テラスに出る階段を上った場所には、ご主人用の天井の低い小さな書斎を設けました。

 このように断面方向に変化をつけた各スペースの結びつきは、シンプルですが単なるワンルームとは違うリズムを与えます。リビングダイニングとキッチン、和室、外部空間は緩やかに区切られ、しかも視覚的につながっている。住む人の動きに伴って、それぞれの空間が微妙に連続したり切れたりするように見えるのです。

 個室を並べた1階も、同じように周囲とのつながりを意識しました。北側に配置した子ども部屋は、庭を通して北側の両親の家と向かい合います。この庭は両親の家に属するものですが、2つの家を結びつける中庭のように見立てました。建物の高さを抑えるため、子ども部屋は地面から45センチ低くしています。この低い目線の位置から、中庭を介して祖父母と互いの存在を感じられるように意図しています。

 1、2階を結ぶらせん階段は、ガラス張りの空間。クライアント夫妻の寝室は、西面と車庫側に通風用の窓を設けているだけですが、階段室との間仕切りを不透明ガラスとし、光が入るように設定しました。

 私は、常に敷地の特性を読み取り、その要素を最大限計画に反映させることを心がけています。そして、空間のプロポーション、素材、スケールを意識しながら、線、面、光により空間を分節して、シークエンス豊かな建築を目指してきました。
 
 住宅の設計は、作品をつくると同時に、クライアントの希望を実現することです。デザイン、機能、コスト、時間などの様々な要因を踏まえて設計をすることは、まさに100分の1と2分の1のスケール、平面図と断面図など……を同時に思考することにもつながります。
 
 私にとって設計とは、直感、理論、経験、価値観などを総動員して立ち向かう創造的行為であり、ひとつの建築の総体に実現されます。敷地の解読、クライアントとの対話から建築空間の創造まで、投入される建築家のエネルギーは、半端なものではありません。私は、これからも一つひとつの建築に可能な限りのエネルギーを注ぎ、創り続けたいと思っています。
(布施茂/fuse-atelier)

「関原の家」

建築データ
  所在地: 東京都足立区
  家族構成: 夫婦、子ども2人
  竣工: 2004年3月
  敷地面積: 129.09平方メートル
  建築面積: 63.46平方メートル
延べ床面積: 126.10平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り+木造、地上2階建て
  施工: 長野工務店
工事費: 約3200万円
設計: 布施茂/fuse-atelier
  写真: 上田宏
連絡先
fuse-atelier
  代表: 布施茂
住所: 〒261-0026 千葉市美浜区幕張西6-19-6
  TEL: 043-296-1828
FAX: 043-296-1829
  E-MAIL: fuse@fuse-a.com
URL: http://www.fuse-a.com/

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