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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 46「BARREL」

RCの基壇部と木造のコンプレックス、半地下リビングの個性的暮らし


ボリューム感を抑えた建物の外観
コンクリート打ち放しの基壇(きだん)部に、2層の木造部分を載せている。木造部分を敷地の北側に寄せ、前面道路側から見たボリューム感を抑えた

大きな窓が開放感を与える地下1階のリビング
光庭側から建物内を見る。地面から1.4メートル下がったリビングは、全面ガラスの窓を介して光庭と一体化する。基壇部に、木造部分が貫入している

内に開いた玄関ホール
玄関ホールから光庭を見返す。外部に対しては閉鎖的な玄関も、内側に対してはガラス張りの開放的な空間となっている

常に愛車を感じて過ごせるリビング
40畳の連続的な空間に、リビングとキッチンを配した。コンクリート打ち放しの硬質なデザインだ。大きな高窓を通して、愛車のMGが目に入ってくる。車へのこだわりの強い建て主だからこそ、あえてリビングから車を見上げるプランを提案した

リビングに貫入する木造の個室部分
寝室と水回りが配置された木造部分を、チェッカープレートの階段が分割する。右に見える2枚の鉄板の間には、寝室のナイトテーブルを兼ねた隠し扉を仕込んでいる

素材の対比が際立つリビング内装
RC造のリビングの上に、木造部分が浮かぶ。構造用合板をそのまま見せ、クギの配列も意匠上の表現とした。壁と一体化したコンクリートのワークカウンターは、6メートルの長さがある

光と風の通り道となる階段室
現場の足場用鋼管と4.5ミリ厚のチェッカープレートを組み合わせた階段。光を透過させて、地下1階にあるキッチンの奥まで明るさを確保すると同時に、低コスト化を図った

 「コンクリート打ち放しの住宅がほしい」。建て主のそんな要望から、夫妻2人が住むこの住宅の設計は始まりました。

 敷地は新横浜駅近く。起伏が多く、くねくねとした細い農道の入り組んだ場所が宅地化されてきた地区で、細分化された土地に住宅が建て込んでいます。地盤が軟弱なうえに、台形の変形敷地。建ぺい率60%、容積率100%の第一種低層専用住居地域で、道路や北側の斜線制限なども厳しい土地でした。

 ご主人は、携帯電話などの開発に携わるプロダクトデザイナーです。生活臭を感じさせないSOHOのようなインテリアを好み、リビングはワークスペースにも使えるクリエイティブな雰囲気を望んでいました。

 デザインとは、単なる見かけの美しさを追求するのではなく、筋道を立てて物事を構築していく作業です。軟弱な地盤の土地に重いコンクリートの家を建てるという、一見不合理に思える条件の下、いかに合理的な建物にするのか。鉄筋コンクリートでつくることの必然性をどのように追求するか。それが、設計の課題でした。

 ここでは、地面を掘り下げ、その上に敷地いっぱいにRC造の基壇部を置きました。緩い地盤の上に、樽(たる)に見立てた基壇部を船のように浮かべたのです。地下部分の土を取り除くことで、地耐力の負担を減らすのが狙いでした。約40平方メートルの広さを持つRC造の半地下空間は、キッチンと食堂、居間として利用しています。

 一方、建ぺい率の制限から、地上部分は敷地全体に建物を建てられません。そこで建物の一部分を欠き取って光庭とし、駐車場としても活用することにしました。建物をくり抜くように配置した光庭には、ご主人自慢のMGのスポーツカーが置かれます。

 ご主人は「将来、子どもが生まれても2シーターの車に乗り続けたい」と、今から宣言しています。地面から1.4メートル下がった地下1階のリビングにいると、全面ガラスの高窓を通じて、常に車を間近に見上げることになります。しかし、そのこだわりがあるならば、違和感なく生活できると考えました。

 建物全体をRC造にすると重くなるため、寝室と水回りを配置した1階部分と、ゲストルームとなる2階部分は木造にしました。高さ制限内に収めるため、木の箱のような木造部分をRC造のリビングに上から埋め込む形としました。地下1階リビングの天井高は基本的に3.5メートルですが、基壇部に貫入した木造部分の天井高は、2.2メートルです。

 また2階のルーフテラスにつなげる必要から、階段を南側に配置しました。そのためキッチンは、階段の裏側に押し込められる形になったわけです。そこで、木造部分を階段部で2つに分割し、すき間から光が差し込むようにしました。階段自体も最小の部材で構成することで、光の透過性を高めています。

 木造部分の仕上げには、下地材である構造用合板をそのまま使いました。コンクリート打ち放し部分と同様、素材をそのままむき出しにしたのです。仕上げも塗装もしない代わりに、100ミリピッチで梁に打ち付けた構造用クギまで、意匠上の表現要素として見せています。

 内装から仕上げを排したのは、コストを抑える狙いもありました。インテリアは今後時間をかけてつくっていけばいい。まずは、建物の骨格や必要なボリュームをきっちり確保することが大切です。

 例えば、RC部分を半地下にすることによって、建築外観の圧迫感を低減しました。家が建て込み、広い空を望めない地域であるだけに、基本的な住環境を自分の敷地内で確保することは何より重要です。

 私たちは、建て主の個性を発見し、その上で成り立つオリジナリティーのある住まいの形を提案していきたいと考えています。今回は、車へのこだわりが大きな手がかりになりました。ほかでは実現しないユニークなプランですが、建て主も「私たちの生活スタイルだからこそ成り立つデザイン」と喜んで受け入れてくれました。
(二宮博+菱谷和子/ステューディオ2アーキテクツ)

「BARREL」

建築データ
  所在地: 横浜市港北区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2004年4月
  敷地面積: 92.86平方メートル
  建築面積: 52.78平方メートル
延べ床面積: 105.28平方メートル(容積緩和あり)
  構造・規模: RC造+木造、地下1階・地上2階建て
  施工: 前川建設
設計: 二宮博+菱谷和子/ステューディオ2アーキテクツ
  写真: 中川敦玲
連絡先
ステューディオ2アーキテクツ
  代表: 二宮博
住所: 〒221-0865 横浜市神奈川区片倉2-29-5-B
  TEL: 045-488-4125
FAX: 045-488-4195
  E-MAIL: studio2@ec.netyou.jp
URL: http://home.netyou.jp/cc/studio2/

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