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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 47「Clinic ko」

用途に対応した2層の空間、上下階で使い分ける医院併用住宅


ガラスのファサードに浮く白いオブジェ
道路側外観。ガラス張りの1階は診療所。その上に載った、オブジェのような2階が住居

通りに向かって開かれた1階診療所
診察室から中庭を介して待合室を見る。視界が通りまで透けている。渡り廊下の上はテラス、左右は2階住居につながる吹き抜け

1階・2階をつなぐ光の吹き抜け
1階診療所バックヤードの吹き抜け。正面奥の扉が玄関、階段を上がって住居に至る。頭上は全面トップライト

両側に空を望むダイニング
バックヤードから階段を上がりきると、写真のダイニングに至る。左手が吹き抜けの階段、右手が中庭。正面にキッチンが見える

吹き抜けで区切られた水回り
写真右手がキッチン、その奥左手が浴室、吹き抜けの左側がトイレと洗面。水回りに壁はなく、吹き抜けと柱、ブレースだけで区画されており、扉は単独で自立している

テラスに続く寝室
外壁の内側は、一部テラスになっている。ベッドを置いた寝室にも壁はないが、引き戸を立てれば柱の向こうと仕切ることが可能

 施主は耳鼻咽喉科医。診療所と夫婦の住まいを併用する建物です。周辺は景観がいいとは言いかねる商業地域で、地盤は水はけが悪く軟弱。そこへ、「コンクリート打ち放しの家を建てたい」という要望でした。

 そこで、建物の重量を抑えるため、1階の診療所をコンクリートの壁構造とし、2階の住宅部分は軽いスチールの軸組み構造としました。この2種類の構造を、医院と住居という2つの用途に使い分け、上下階で対照的な空間づくりを実現しました。外から見ると、2階は白いオブジェのようで、生活の気配をまったく感じさせません。このことも、医院や商店との併用住宅には、重要なポイントと考えています。

 1階の診療所は、初めての患者さんにも入りやすいよう、前面をガラス張りにして、開かれた表情をつくっています。ただし、内部は保健所の指導により、待合室、診療室、検査室と、細かく区画しています。

 一方、2階の住居は外に対しては閉じ、中は1枚の壁もないワンルーム。天井を支え、室内を区画するのは、白く塗られた柱とブレース(斜材)だけです。構造の異なる1階とは、温度や湿度、熱の伝わり方も変わり、空気の感触さえ違って感じられます。

 不整形の曲面を描く2階の外周壁は、テラス部分がわずかに開いているのみで、窓はひとつもありません。その代わり、内側に上空から光を取り入れる3つの吹き抜けを設けました。2つは露天の中庭で、残る1つにはガラスの屋根をかけています。これらの吹き抜けは1階と2階をゆるやかにつなぎ、建物全体に光を届けます。

 住宅の採光では、均質な北からの天空光を、大きな開口部で取り入れるのが理想だと考えています。しかし、南面採光に対する信仰の強い日本では、なかなか実現できません。南からの光は強烈なので、反射率の低い内装を用いると、陰影が濃く出過ぎて、光が行き渡らないのです。

 特に施主から注文がない限り、インテリアはいつも白を基本にします。ただ、床だけは白いとメンテナンスが大変なので、サクラやメープルなどの明るいフローリングを用います。内装の明度を高くして光を拡散させれば、空間全体を穏やかな明るさで包むことができるからです。

 建築とは、部分を積み重ねて全体をつくるのではなく、まず全体があって、部分があるべきです。日本の建築法規は厳しいし、敷地条件は個性に富んでいますから、建築設計上、解決しなければならない課題はたくさんあります。しかし、ただ課題を並べるだけでは、建築の“全体”は導き出せません。どんな“全体像”を見いだすかは、建築家それぞれのオリジナリティーにかかっているのです。
(上田知正)

「Clinic ko」

建築データ
  所在地: 神奈川県川崎市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2003年12月
  敷地面積: 331.25平方メートル
  建築面積: 154.63平方メートル
延べ床面積: 230.95平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り+鉄骨造り
  施工: ケイワイ建設
設計: オクトーバー/上田知正+中川陽子
  写真: 平井広行
連絡先
オクトーバー
  代表: 上田知正
住所: 〒195-0053 東京都町田市能ヶ谷町997-15
  TEL: 042-708-1320
FAX: 042-708-1321
  E-MAIL: oct@j.email.ne.jp
URL: http://www.ne.jp/asahi/
october/web/

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