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Housing File 49「龍ケ崎の家」

家の中で戸外の光を楽しむ、ひさしのある3つの庭の家


外壁の水平ラインが際立つ白い家
道路側外観。駐車場の扉、玄関以外に開口部はない。外壁越しに、中庭に植えた桜がこずえをのぞかせる。玄関ドアを開けると、建物の向こう側の「盆栽庭園」まで見通しが開ける

南側に配した2つの庭
南の「花野菜庭園」から西の「桜庭園」を見る。間に挟まれたガラス張りの廊下が玄関とLDKをつなぐ。庭には格子状のひさしを伸ばし、室内に差し込む光を調節している

駐車場を兼ねた花見の庭
「桜庭園」から屋内を見る。1階はほとんどガラスだけで区切られている。駐車場は来客用なので、日常は庭として使う。芝を張り、桜を植えて、家の中で花見を楽しむ

格子状のひさしが陰影を描く
「花野菜庭園」から、リビング越しに北側の「盆栽庭園」を見通す。正面、白い外壁に映るひさしの影は、天候や太陽の位置につれて刻々と変化する

内と外が交互につながる
LDKは南北両側を庭に挟まれ、まるで戸外にいるような感覚。光を通すひさしが、内と外をつなぐ。キッチンカウンターのダイニング側にはガラスを張り、室内の景色を映して奥行きを生み出す

北東の静かな「盆栽庭園」
LDKの北側には、盆栽のための庭がある。梅の木を植え、白い玉砂利を敷いた。回廊のようにぐるりと回したひさしが、庭をひとつの部屋のように見せる

 建て主は70代のご夫婦。東京都内の幹線道路沿いの住まいから、茨城県にあるニュータウンの一角に移り住みました。土地は古くから所有していたもので、馴染みのある場所です。空気のいい郊外で、のんびり余生を過ごそうという計画です。

 仕事を引退し、ご夫婦ともに外出することはほとんどないので、これからは家の中の生活が中心になります。しかし、せっかく郊外に住むのだから、野菜を作ったり花見をしたりして、自然に親しみたいと望んでいました。ご主人の趣味は盆栽。その手入れをすることも、日常生活の大事な一部です。

 そこで、家の中にいながらにして、外の空気が身近に感じられる住まいを目指しました。

 周囲は家もまばらで殺風景なので、外周には壁を巡らせ、その内側に、要望に合わせた3つの庭を配しました。南に大きな花野菜の庭、北東に盆栽の庭。LDKはこの2つの庭に挟まれています。西には、駐車場を兼ねた花見の庭。

 建物の内側に庭を設ける「コートハウス」の手法はよく用いられますが、眺めるだけ、採光だけに終わって、実際には使われないケースが多いのではないでしょうか。この家では、室内から庭へ、抵抗なく行き来できるよう、より内部に近い外部空間をつくりたいと考えました。

 室内と庭の一体感を強調するため、それぞれの庭には格子状のひさしを掛けています。ひさしは内と外の中間のような領域をつくり、内外の境界をあいまいにします。さらに、このひさしを、建物側だけでなく、外壁側まで回しました。これは、庭を部屋のひとつのように見せ、より身近に感じさせる効果を狙っています。

 窓の正面は外壁でふさぎ、上空からの日射をひさしで調整して取り入れるので、光が和らぎ、心地よい空間がつくれます。格子状のひさしが白い外壁に映し出す影は、太陽の位置によって太くなったり細くなったり、1日を通じて変化を見せてくれます。

 1階平面は、庭で切り取られた複雑な輪郭をしていますが、間仕切り壁のない、連続した空間です。大きなガラス窓を通して視界も開けます。キッチンに立っている奥さまからは、庭越しに、和室で昼寝しているご主人の姿が見えます。ほどほどに距離感があって、それでいて、いつもそれとなくお互いの気配を感じ取れます。

 敷地にゆとりがあり、ご高齢ということもあって、当初は平屋を考えていたのですが、「寝室は2階がいい」とのご希望でした。完成してみると、格子越しに庭を見下ろす視点が生まれ、1日の生活に変化をもたらすことができました。もしも、2階に上がるのがおっくうになったら、1階の息子さんの寝室と和室とを、夫婦それぞれの寝室にあてられるように考えてあります。

 住む人の気持ちにできるだけ近づきたいと思い、設計に取りかかる前に、本を買ってご主人の好きな盆栽について学びました。盆栽は、じっくりと時間をかけて、微妙な変化を楽しむものなんですね。あるとき雨が降って、晴れたらほんの少し表情が変わっていた、というような。

 この家も、天気や季節の移り変わりで表情を変えます。外壁に映るひさしの影は、太陽に雲がかかるとふっと消え、晴れたらまた浮かび上がります。自然のリズムが身近に感じられることでしょう。ゆっくりとした時間の流れを、大切に味わえる家であってほしいと願っています。
(西田司/オンデザインパートナーズ)

「龍ケ崎の家」

建築データ
  所在地: 茨城県龍ケ崎市
  家族構成: 夫婦+子供1人
  竣工: 2004年9月
  敷地面積: 310.00平方メートル
  建築面積: 101.03平方メートル
延べ床面積: 136.49平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  施工: 広石工務店
設計: オンデザインパートナーズ
  写真: 藤塚光政
連絡先
オンデザインパートナーズ
  代表: 西田司
住所: 〒231-0003
神奈川県横浜市中区北仲通
5-57 北仲WHITE308
  TEL: 045-650-5836
FAX: 045-650-5837
  E-MAIL: nishida@ondesign.co.jp
  URL: http://www.ondesign.co.jp/

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