TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 51「F&F HOUSE」

南の光、北の景色を教授する、2つの顔を持つ住まい


ファサードから張り出すヒノキのボックス
南側の公道に面した一つ目の「顔」。乳白色のガラスを張った1階玄関ホールの上に、ヒノキのルーバーで目隠ししたバルコニーが張り出す

外壁とガラスの色が対比をなす
北側の遊歩道に面したもう一つの「顔」。南側の「顔」と左右対称になっているが、バルコニーの開口幅は南側より90センチ狭い

南北を貫く路地のようなホール
2つの玄関はホールで結ばれている。右手、宙に浮いているような扉の奥が子供室。その下に地階の寝室がのぞく

軽やかに上るらせん階段
子供室の扉を開いたところ。各階のレベル差によって、床と床、天井と天井の間にできるすき間が浮遊感を生み、らせん階段を一層軽やかに見せる

静かな地階に位置する寝室
地階の寝室から玄関ホールを見上げる。ホール左手に見える縦格子の奥には、サニタリー空間がある

南北に開くLDK
キッチンかららせん階段越しに東側を見る。写真左右、南北両側に大きな開口部があり、外にはバルコニーが張り出している

格子のすき間から差し込む南の光
リビング南側の開口部。ヒノキのルーバー越しに差し込む光が、バルコニーとロールスクリーンにストライプの模様を描く

 「F&F HOUSE」とはダブルフェース、「2つの顔の家」という意味の名前です。

 敷地は南の公道と北の遊歩道、2つの道路に面しています。日本の住宅の常道では南側を家の「表(おもて)」とするところですが、樹木が植えられ、美しく整備された遊歩道に背を向ける手はありません。南北ともに「表」として扱いたいと考えたことが、設計の出発点になりました。

 この家は、南北両側に玄関があります。それぞれのファサード(正面外観)は、外壁と開口部に2分割されており、北は右側が外壁、左側が玄関からバルコニーに至る開口部です。南はその対称形になっています。ただし、両方に同じ大きさの開口部を設けると熱が逃げやすくなるので、北の開口幅は南より90センチ狭くしました。

 この90センチの差をつなぐことで、四角い建物の内部空間が斜めに区切られ、遠近感が生まれます。1階レベルは北から南に向かって広がる玄関ホール。南北両側の玄関から導かれる動線は、中央のらせん階段に向かいます。

 らせん階段は生活動線の中心です。上り下りを楽しくするため、都市の中を散歩するような雰囲気をつくろうと考えました。具体的には、床のレベルを少しずつずらし、家の中にいくつもの小さな建物があるようなイメージを狙っています。

 2つの玄関をつなぐホールは、路地のような空間。そこに四角い箱をぽんと置き、水回りを収めました。中2階の床は上から吊って宙に浮かせ、その下に地階の空間をのぞかせています。

 高さの異なる床や天井の面が、階段を上るにつれて次々と視界に入り、一歩踏み出すごとに景色が変わります。上り詰めれば、最上階のLDKの、大きな空間が開けます。ここだけは段差をつくらず、建物の平面をいっぱいに使ったフラットな床にしました。

 LDKの南北には、ヒノキの縦格子で目隠ししたバルコニーが張り出しています。南側は採光、北側は眺望を主目的としているので、ルーバーのピッチも北は南の2倍。広く開いたすき間を通して、遊歩道の緑を透かし見ることができます。

 ヒノキをふんだんに使用することができたのは、奥さまのご実家が山をお持ちだったから。床材やダイニングテーブルにも用いましたが、それだけでは面白みに欠けます。そこで、水回りやバルコニーの格子として、住まいの表情づくりにも一役買ってもらいました。

 外壁には、この家の持つ「木」のイメージを表現する色として、こげ茶色を選びました。開口部に用いたガラスの乳白色とのコントラストが絶妙です。

 最近は、世界中のどんな場所でも成立しうる、「ユニバーサルな建築」が志向されているようです。その時流に逆行しているかもしれませんが、私はあくまで、個々の敷地が持っている力を、最大限引き出したいと考えています。建築とは土地に根ざすものですから、敷地なしに成り立つとは思えません。

 「ヒノキを使いたい」というような建て主の希望もいいヒントになります。この家の建て主は、私に多くを委ねてくださったうえで、核となる要望を挙げてくださいました。建て主の理解も、設計を成功に導く力になると思います。

(塚田眞樹子/塚田眞樹子建築設計)

「F&F HOUSE」

建築データ
  所在地: 東京都
  家族構成: 夫婦+子供1人
  竣工: 2002年12月
  敷地面積: 132.88平方メートル
  建築面積: 52.74平方メートル
延べ床面積: 99.11平方メートル
  構造・規模: 木造、地下鉄筋コンクリート造り、地下1階、地上2階建て
  施工: 葛工務店
設計: 塚田眞樹子
  写真: 藤塚光政
連絡先
塚田眞樹子建築設計
  代表: 塚田眞樹子
住所: 〒177-0042東京都練馬区
下石神井
  TEL: 03-5372-7584
FAX: 03-5372-7862
 
URL: http://www15.plala.or.jp/maaa/

平面図
おすすめ情報(PR)