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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 52「沿道の家」

土間や屋上デッキを緩衝帯に、細長い家に光と風を入れる


閉じた壁に穴を開けた西側外観
幅8メートルの道路に面した西側のファサード。人と車の交通量の多い道路側は壁で閉じ、奥まで抜ける穴を開けた。この“抜け”の空間に面するように室内の居室を配置している

南側外観夕景
2階リビングと3階寝室の南側には屋外デッキを設けている。左右の壁と屋根で囲った小空間は、外部空間と室内をつなぐ緩衝帯になる。3階デッキには透過性を持つグレーチングを用いて、上下のデッキに一体感を与えた

外部との緩衝地帯となる土間
床面が30センチ上がった1階和室から玄関の土間を見る。床から天井までの引き戸を開けると、和室と土間が一体化する。建物を東西に貫く土間は、光や風の導入部となると同時に、外部と室内を結ぶクッション空間として機能する

引き戸で緩やかに仕切った2階リビング
リビングとキッチンは全開する引き戸で仕切り、状況に応じて使い分けられるようにした。キッチンにはトップライトを設けているので、引き戸を閉じても光が差し込む。引き戸の両側部分はテレビなどの入る収納で、キッチンの引き戸を引き込めるように設計している

リビングと奥に続く将来の子供室
引き戸を開けるとキッチンとリビングが一体化し、2階全体をワンフロアとして利用できる。らせん階段の奥は、将来の子供室として確保しているスペース。建具を設置すれば、ロフトを持つ個室をつくれるようにしている

リビングに立つロフトへのはしご
将来の子供室のロフトを見上げる。現在は収納に用いており、ロフトに通じるはしごが2つ、リビングにそそり立つ

屋外デッキまで一体空間になる3階寝室
寝室から階段室を通して屋外デッキを見る。ここでも引き戸の開閉によって、屋外デッキまでの広い空間を見通すこともできれば、寝室を小さな空間として利用することも可能だ

 南北に細長い敷地に建つ家です。長辺に当たる西側に沿って交通量の多い幅8メートルの道路が走り、間口の狭い南側も幅4メートルの道路に面しています。残りの2辺には住宅が近接しているという条件でした。

 表通りに接した西側には、あまり開口部を設けたくありません。そこで西面は外に閉じた壁としたうえで、東側まで抜ける穴をいくつかうがちました。この“抜け”の空間に向けて各部屋の開口部を設け、細長い建物の奥まで光と風を入れるようにしたのです。

 建て主は30代の夫婦。設計を始めた時は男の子2人との4人家族でしたが、工事を進めている間に赤ちゃんができました。また将来、奥さまのお母さまが同居するかもしれないという話も出てきました。こうした変化に伴い、当初は2階建てだった建物に3階の主寝室を増やしました。ただし、基本的な建物の考え方は変えていません。

 光の入れ方と外部との接し方は、住宅設計で常に気を配っているポイントです。1階の土間や3階の屋上デッキなど、建物の東西を貫く“抜け”の空間には、光の導入と同時に屋外と室内の緩衝帯という役割も与えています。

 1階の土間の両側には、和室と水回り空間を振り分けました。土間というクッション空間を介して、和室は表通りと緩やかに結び付きます。和室は南側道路に面した壁にも開口を設けていますが、こちらは地窓にすることで外部からの視線を遮るように配慮しました。

 3階の屋上デッキの南側には、階段室と主寝室を並べました。2つの部屋は、やはり屋上デッキに向けて大きく開いた造りとしています。また屋上デッキの北側に設けたロフトと吹き抜けを通して、2階のリビングに南からの光を導入しています。

 室内のプランは、引き戸を随所に取り入れることで可変性の高い空間を目指しました。2階は、リビングとキッチンの間の引き戸を開ければ、将来の子供室用スペースを含めたフロア全体をワンルームとして利用できます。引き戸を閉めると、トップライトのあるキッチンは独立したスペースとなります。

 3階の寝室も、引き戸を閉じると落ち着いた小空間を確保できますし、全開すると階段室から屋外デッキまで一体に感じられる広々した空間を得られます。設計時に将来の変化をすべて予測することはできません。引き戸を用いた融通の効く空間構成によって、家族の成長や変化に対応しようと考えました。

 このように引き戸によって横のつながりに変化をつける一方で、らせん階段や2、3階の南側に設けたデッキには透過性の高い素材を用いて、上下方向にも“抜け”の空間を用意しました。上下と横方向それぞれにつながりのある空間をつくり、家族の一体化を図れるようにしたかったのです。

 それぞれの条件を積み上げていくと、建物は自然と今の姿になりました。西側の道路は広いので、遠くからもこの家をよく見通せます。街の中で家がどのように見え、どう存在するかも大切です。変化のある外観によって、立体感を持ちつつ街並みの中にしっくりなじむ家になったのではないかと思います。
(荒木毅/荒木毅建築事務所)

「沿道の家」

建築データ
  所在地: 東京都北区
  家族構成: 夫婦+子供3人
  竣工: 2004年1月
  敷地面積: 68.79平方メートル
  建築面積: 47.03平方メートル
延べ床面積: 97.64平方メートル
  構造・規模: 木造、地上3階建て
工事費: 2630万円(消費税別)
  施工: 長野隆幸、長野征明(長野工務店)
設計: 荒木毅、槻岡佑三子(荒木毅建築事務所)
  写真: 篠沢裕
連絡先
荒木毅建築事務所
  代表: 荒木毅
住所: 〒162-0041 
東京都新宿区早稲田鶴巻町391-3階
  TEL: 03-5261-0550
FAX: 03-5261-0549
  E-MAIL: info@t-araki.co.jp
URL: http://www.t-araki.co.jp/

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