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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 53「Floating Terrace」

上空の光を屋内に運ぶ、テラスが宙に浮かぶ家


道路に向ける顔を意識した現代の町屋
両隣がぴったりと近接して建ち並ぶ下町エリア。ファサード(正面外観)は外壁を白とダークグレーに塗り分けたが、それ以外の面は中空セメント板を素地のまま使っている

内部の光を映すスクリーンのような開口部
2階部分は床から天井までの全面開口。ガラスにフロストシートを張って目隠しした。日が暮れると室内の光がぼんやり浮かび上がる。写真ではプロジェクターで画像を映写している

部屋の中央に浮かぶテラス
3階居室から屋上テラスを見る。テラスに向かって高さ1メートルほどの窓があり、テラスの下の高さ90センチほどの窓からは2階の吹き抜けがのぞく

ガラス越しに上下階の気配が伝わる
3階居室からガラス越しに2階を見下ろす。写真奥は道路に面したバルコニー。開口部の多い3階は採光・通風抜群で、なおかつプライバシーの守られた空間

天井高4.2メートルのピアノ室
テラスの真下にあたるピアノ室。天窓から上空の光が差し込む。壁面に取り付けた収納は、箱と箱の間も棚として使える。圧迫感を防ぎつつ、収納量を確保する工夫

ピアノ室は日常、リビングの一部になる
ピアノ室からリビングを見たところ。2つの部屋の間は必要に応じて引き戸で仕切る。リビングの上に3階の床がのぞき、その奥にバルコニーが見えている

光る壁を背にしたリビング・ダイニング
リビング・ダイニングの南側は全面がガラス壁。フロストシートが張られているので外の景色は見えず、日光が拡散して壁全体が淡く輝く

 敷地は、かつて倉庫が建っていた土地を3等分した1つで、面積はわずか20坪。設計時には、隣地にどんな建物が建つかも不明でした。両隣からの採光・通風は期待できないので、前面道路と裏手のわずかな空地、そして上空だけが外部との接点と考えられます。この厳しい条件下で、いかに建物内部に広がりを生み、外部との関係を結ぶかがメーンテーマでした。

 平面の広さは限られていますから、上下階に立体的な連続感を持たせることがポイントになります。同時に、上からの光をできるだけ深く導き入れる必要があります。そこで私が考えたのは、屋上の北西側四半分を半階下にずらすことでした。この部分にはデッキ材を張って、テラスとします。

断面図  屋上とテラスを上下にずらすことによって、室内からテラスへの窓が開きます。最上階の3階では、南の道路面とテラスの両方に開口部がとれることになります。

 同時に、テラスの真下にあたる2階空間は上に引き伸ばされ、3階とのつながりが生じます。屋上とテラスの間にできるすき間が、テラスと3階、3階と2階の間にすき間をつくり、上空から2階までつながるのです。

 このすき間と、テラスの対角に設けた2・3階間の吹き抜け、そして2つの天窓を通じて、家中いたるところに自然光がたっぷりと差し込みます。

 南北に開口部を備えた3階は通気も抜群。ここを風が吹き抜けることで、連続する階下にも空気の流れが起こり、家全体の換気が確保されるのです。

 3階居室に立つと、テラスが宙に浮いているように見え、その上に青空が、下には2階のピアノ室が望めます。

 ピアノ室の天井高は4.2メートル。天窓からスポットライトのような光が落ちてきます。奥さまはここで生徒にピアノを教えていますが、レッスン時以外は引き戸を開け放ち、リビングの一部として使います。

 隣接するリビング・ダイニングは南に面しているものの、外は向かいの建物が見えるだけです。そこで、南側全面をガラスの壁にして、半透明のフロストシートを張り、光だけを取り入れました。シートによって直射日光が拡散し、壁全体が柔らかく発光しているように見えます。

 道路から見ると、フロストシートに部屋の明かりや人影がぼんやりと映り、暮らしの気配が伝わります。このガラス壁をスクリーンにして映画を見れば、街並みに彩りを添えることができるでしょう。

 道路に面した1階は、駐車場と、ハイサイドライトだけで採光した静かな居室です。ほの暗く落ち着いた場所で眠りたいというご主人の希望に沿って、寝室として計画しました。しかし、完成間近の建物を見たご夫妻は考えを変え、明るい3階にベッドを持ち込むことにしたのです。

 部屋が計画通りに使われなかったことを、設計の失敗とは考えていません。生活は変化するものです。住宅は、その変化に合わせて使いこなせるものであるべきです。住む人が目的に合わせて選べる、さまざまな「居場所」を用意したいと考えています。

 私は住宅のほかに、高齢者施設や保育園も手掛けていますが、「居場所」の考え方は変わりません。規模や用途は違っても、通底するものがあると思います。その中にあって住宅の設計は、バラエティーに富んだ課題に対する答えを短期間に集中して探す、楽しい仕事といえるでしょう。
(石原健也/デネフェス計画研究所)

「Floating Terrace」

建築データ
  所在地: 東京都墨田区
  家族構成: 夫婦+子供1人
  竣工: 2004年3月
  敷地面積: 63.37平方メートル
  建築面積: 56.30平方メートル
延べ床面積: 122.07平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階建て
  施工: 東京鐵筋コンクリート
設計: 石原健也、中野正也
  写真: 淺川敏
連絡先
デネフェス計画研究所
  代表: 石原健也
住所: 〒101-0041
東京都千代田区神田須田町
1-32-2F
  TEL: 03-5297-5741
FAX: 03-5297-5740
  E-MAIL: info@denefes.co.jp
URL: http://www.denefes.co.jp/
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