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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 54「大小の窓」

角地に建つ2世帯住宅、窓の大きさで視線と明るさを調整


四角い箱に細長くランダムな窓を設けた印象的な外観
緩やかな勾配の地形を生かし、木材を張った地上階の箱を少し浮かせて半地下状の居住スペースを確保した。2辺が6メートル道路に接する見通しの良い角地に建つため、地上階は小さな窓を設けて外からの視線が気にならないようにしている

下階から光が漏れてくる建物正面の夕景
夕方になると、大きな窓をもつ下階の居室からの明かりで、建物の下部が光の面となる。階に応じて適切な室内環境を確保するため、窓の大きさをコントロールした

両側から日差しが入る半地下の広間1
東西両サイドに吹き抜け空間いっぱいの大きな開口を設け、ドライエリア越しの日射を取り入れている。左右の窓側と正面の壁面に輻射(ふくしゃ)暖房を設置。白色モルタルの床面で蓄熱し、下からの暖かさを確保している

透明感ある階段と白いドライエリア
地下1階の広間1と上に住む家族の部屋を結ぶ階段。窓面には、各階の床を支えるブレースが通る。構造が見える設計としたため、窓を広く感じられるよう鋼材は主に縦横の幅が10センチのスリムなH型鋼を用いた

外からの視界を遮り、落ち着いた雰囲気の広間2
親世帯が使う1階の広間2。地下階の天井高を確保しつつ、地上部分のどの断面も2層以内に収めるため、上階の居室をスキップフロアで細かくつないだ。複雑な断面構成により、広間2の天井高にも変化を与えている

上部から光が注ぎ込む広間2
階段の吹き抜けから光が注ぎ込む。外部からの視線を遮るため、窓はできるだけ絞り込み、採光は内側上部の窓から確保した。右手に食卓とキッチンが続き、左手は半地下からの吹き抜け空間に面する

ブレースの見える個室
地上の各部屋の床は大きなブレースによって上から吊られたり、下から支えられたりしている。個室の窓からもブレースの一部が見える

 それまで建て主家族が住んでいらした家を建て替え、それを機に息子さん家族も同居することになりました。

 北側と東側がそれぞれ6メートル道路に接した角地に建ち、半地下状の地下1階をもつ地上2階建ての鉄骨造りです。天井の高い半地下部分を息子さんの世帯で、スキップフロア状につながる1、2階部分を親世帯で使います。それぞれのスペースを吹き抜けや階段でつなぎ、広く感じさせる空間構成としました。

 今回、プランを考える際に気を付けたのは、2つの世帯に対し、日当たりなど居住環境の面で総合的に等価なスペースを提供していくことです。

 見通しの良い上階は周囲からの視線が気にならないようにし、下階では採光を確保して明るい場を提供することが大切です。そのため1、2階部分は外壁の窓を小さく抑え、地階はドライエリア(※)に面して大きな窓をつくりました。      

 今回のように南北に細長い敷地の場合、北側に建物を寄せて南側に庭を設けるのが一般的な方法かもしれません。しかしここでは、敷地に合わせて建物も南北に長く配置し、東西方向を約2メートルセットバックして細長いドライエリアに面して大きな窓をつくりました。

 そのため、地階でも午前は東面から、午後は西面から日が差し込み、とても明るい室内環境を生み出しています。打ち合わせ時点では、「南側に庭がなくて暗くならないのだろうか」と建て主も心配していました。でも実際に工事が始まると、「予想以上に明るい」と納得いただきました。

 段違いに続く地上階の床は、ブレース(筋かい)で上から吊ったり下から支えたりしています。柱と梁で床を支える一般的なラーメン構造でこの建物をつくろうとすると、どうしても鉄骨が太くなってしまいます。その点、こうしたブレース構造だと細い鉄骨で床を支えられます。

 地下をガラス張りにすることもあって、構造の鉄骨をできるだけスリムに見せたかったのです。鉄骨同士の接合部分も室内から見えますから、できるだけ接合部分を少なくし、ディテールもきれいに納めました。

 外装は、木の感触を生かしたかったので、レッドシダーという木張りにしました。ここは準防火地域ですので、外壁に木材を用いた場合、3階以上の建物にすると様々な制約が発生してしまいます。

 建物を半地下に埋め、地上部分を2層に収めるようにしたのは、容積率にカウントされない地下部分をつくって、広さと高さ方向のゆとりを確保したかったことに加え、2階建てという範囲に収めるための工夫でもありました。

 住宅を設計する際、建て主とのコミュニケーションが大切なのは言うまでもありません。

 通常、建て主から様々な意見や要望をうかがいますが、実際には建て主自身が想像している以外のことも考えなければいけないし、建ち上がって初めて分かることもあるでしょう。望むことを100パーセント実現するのは無理ですから、80パーセントの大事なことをいかに実現するかという姿勢が欠かせません。

 ですから、私たち専門家としては、建て主の要望すべてをそのまま形にするというより、重要な要素を抽出したうえで、より良い形に結び付けていく必要があります。同時に、建て主にも、ある程度設計者に任せた方が良い結果に結びつくことを知っておいていただきたいです。

 もちろん、そう思ってもらえるような信頼関係を築くことが何より大事です。自分で考えていたのとは一味違うぞ――。建て主にそう感じていただけたとき、お互いにとって良い住宅づくりの第一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
 (坂牛卓+木島千嘉/O.F.D.A.)

(※)ドライエリア:建物の通常は地下1階部分で、光や空気を取り込むために周囲の地面を一段掘り下げてつくった「からぼり」

「大小の窓」

建築データ
  所在地: 東京都
  家族構成: 親世帯2人+子世帯3人
  竣工: 2004年6月
  敷地面積: 148.42平方メートル
  建築面積: 78.59平方メートル
延べ床面積: 182.59平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り一部鉄筋コンクリート造り、地下1階・地上2階建て
  施工: 河津建設
設計: (建築)坂牛卓+木島千嘉/O.F.D.A.(構造)佐藤淳/佐藤淳構造設計事務所
  写真: 上田宏
連絡先
O.F.D.A.
  代表: 坂牛卓
住所: 〒160-0007 東京都新宿区荒木町14
  TEL: 03-3358-4303
FAX: 03-3358-4304
  E-MAIL: sakaushi@ofda.jp
URL: http://www.ofda.jp/
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