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Housing File 57「平井の家」

荒川の景観に向かう斜めの空間、2つの世帯を吹き抜けで結ぶ


白壁とガラスのファサード
道路側外観。形状が複雑なので、外壁はシンプルな白い壁に。2・3階を北側に張り出し、その下を駐車スペースとした。正面に桜を植え、自宅で花見をするのを楽しみにしている

家全体が吹き抜けでつながる
1階、親世帯のLDKから吹き抜けを見上げる。正面2階の三角の床は二世帯共用のフリースペース、その上は3階子世帯の生活空間。1階から3階までが吹き抜けでつながっている

二世帯で共用するフリースペース
2階フリースペースから折り戸を立てたゲストスペース方向を見る。右手上が3階子世帯のLDK、右手下が1階に続く吹き抜け。開口部1階部分はフロストガラスだが、2階部分は透明ガラスで町の様子が見通せる

荒川越しに空を見晴らすLDK
3階、子世帯のLDK。前面道路に対して床を斜めに振り、見通しのいい東に向けて開く。そのため写真左手の三角形の吹き抜けが生まれた。吹き抜けの下は2階フリースペース

吹き抜けから光が落ちる浴室
2階子世帯の浴室の上は3階まで2層分の吹き抜けになっている。高い天井の上から光が降り注ぐ

町の気配を感じる和室
1階、親世帯が寝室として使う和室。通りとの間に植栽を施し、外壁の内側に縁側を設けた。縁側の外に雨戸を用意している

 70代の両親と40代の息子が住む家で、二世帯住宅としての計画です。2つの世帯の生活を自立させつつ、ゆるやかに結び合わせることを狙いました。

 敷地は荒川のスーパー堤防(*)上にあり、河川敷を越えて遠くまで視界が開けます。この絶好の眺望をどのように生かすかがポイントです。

 川に面した通りからは1区画分奥まっているので、見通しが開けるのは敷地正面から約45度振れた東方向です。そこで、建物の東側を斜めにカットして庭としました。ここには家族の希望で桜の木を植えます。

 最上階の3階LDKの床は、このカットした部分に向かって斜めに差し込まれています。これによって、部屋全体を最も眺めのいい方向に向けることができます。開口部が内側に引き込まれ、リビングと一体感のあるバルコニーが生まれました。

 建物に対して斜めに床を置いたことで、東のバルコニー面を除く3隅に三角形の吹き抜けができます。このうち、一番大きな北側の吹き抜けの下を、同じく三角形のフリースペースとしました。すると今度はフリースペースの南側に、1階を見下ろす吹き抜けができます。

 1階は親世帯の住まい、3階は子世帯のLDKで、中間の2階に位置するフリースペースは2つの世帯で共用します。ここに立てば、1階・3階両方のLDKの様子が伺えます。吹き抜けは互い違いなので、1階から3階まで視線は通りませんが、空気がつながっているので気配は伝わるでしょう。

 1階にはLDKのほか、和室と浴室も備え、両親の日常生活はこのワンフロアですべて完結できます。リビング南面はフロストガラスの全面開口、和室も前面道路に面した縁側に向かって開いています。近隣はみな古くからの住人で、親密なコミュニティーが形成されているので、プライバシーはあまり要求されませんでした。いつお訪ねしても、ご両親はカーテンもひかずにオープンに暮らしています。

 2階のフリースペースには、折り戸で仕切れるゲストスペースが付属しています。ここに梯子(はしご)を下ろせば、3階の書斎に上れます。

 2階西側は子世帯のプライベートゾーンです。ここは、前述の3つの吹き抜けのうち2つの階下にあたります。浴室の上と寝室の上、それぞれが2層分吹き抜けているのです。吹き抜けの上はフロストガラスの開口部で、柔らかな光がたっぷりと落ちてきます。

 そして、3階の子世帯LDKに上がれば、意識は窓の外に開ける荒川の景観に向かうのです。

 基本設計ではいろいろな案を練りました。川に向かってバルコニーを張り出す方法を考えたこともあります。床ごと斜めに振って川と正対するアイデアが生まれた時、いろいろな問題が解けていきました。

 2世帯の気配をつなぐことは当初の狙い通りですが、吹き抜けの浴室や寝室は結果として生まれたものです。こういう、偶然にできた空間のおもしろさを大切にしたいと思います。

 一般には、自分の生活に必要なスペースを考え、それを積み上げて家全体を構成するものだと考える人が多いかもしれません。しかし、用途より空間を先に考えた方が、きっといいものができます。

 何も奇抜な空間を提案したいというのではありません。建て主の要望を盛り込むのは当然のことです。でも、それは結果的に入っていればいいのであって、あまり固執しない方がいい。建築家の発想に対して、どれだけオープンマインドでいられるかが、いい家をつくるためのポイントではないでしょうか。
 (駒田剛司/駒田建築設計事務所)

*スーパー堤防:高規格堤防。幅の広い堤防で、堤防上の特別区域は通常の土地利用が可能。


「平井の家」

建築データ
  所在地: 東京都江戸川区
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2004年10月
  敷地面積: 160.00平方メートル
  建築面積: 91.72平方メートル
延べ床面積: 194.26平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階
  施工: リデア
設計: 駒田剛司、駒田由香
  写真:

傍島利浩

連絡先
駒田建築設計事務所
  代表: 駒田剛司、駒田由香
住所: 〒134-0088 東京都江戸川区西葛西7-29-10-101
  TEL: 03-5679-1045
FAX: 03-5679-1046
  E-MAIL: komada@
ppp.bekkoame.ne.jp
URL: http://www.
komada-archi.info/
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