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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 58「千駄木の家」

1.8メートルの私道に面した、身近なスケール感を生かす


細い私道に面する建物
北側外観。車の入らない幅1.8メートルの私道では、周囲の家の人たちがハーブなどを植えて楽しんでいる

外部との中間領域になる玄関土間まわり
私道から建物に入ると、広い土間を通して階段や奥の和室に導かれる

小上がり風の和室から土間への見返し
土間の続きにある3畳の和室。読書や昼寝などでくつろげる小空間となっている

テラス越しに外部の緑と一体化するリビング
窓に面する廊下の床面は1段高く、座れるようになっている。暖炉にあたりながら、手前のダイニング側に座っている人とも歓談できるようなしつらえだ

変形敷地に合わせた不整形のリビングまわり
敷地形状に合わせ、リビングと階段を斜めに配した間取りとしている。斜めに抜けていく視線が限られた空間に広がりを与える

身近な外部空間となる2階テラス
半屋外のリビング空間にもなるテラスまわり。植木鉢を隠して緑だけ見せるために、テラスのコンクリートとウッドデッキとの間に段差を設けた。ウッドデッキに座り、外を見ながらお茶やお酒を飲める

1階の書斎
図書室と書棚で区切られた角の書斎コーナー

 読書や旅が趣味のご主人とガーデニングの好きな奥様、そして成人した娘さん2人という4人家族のための住まいです。長い間住んでいた2階建ての木造住宅を、3階建ての鉄筋コンクリート造りに建て替えました。

 敷地は東京都文京区千駄木の一角にあります。不整形な四角形、という設計の難しい敷地でした。北側には1.8メートルの私道が通り、残りの3辺は住宅に囲まれています。以前の家は採光や通風に恵まれていませんでした。

 私道だけに面した環境は、一方で身近なスケール感をもった生活空間をもたらします。車が入ってこないので、近所の人たちが道端に植物を植えるなど、昔ながらの情緒が残っていました。そんな暮らし方を引き継ぎつつ、快適な住空間を生み出すのが設計の目標でした。

 建て主の望みは「風通しよく、日当たりのよい家」にすること。私は、狭い敷地に建つ家だからこそ、周辺とのつながりをうまく生かしたいと考えました。

 壁いっぱいの開口とした私道側には、1階に土間と3畳の和室を、2、3階にテラスを設けて、外と内を結びつける場としました。大きな窓に面して階段を置いて、その南側に不整形な居住スペースを配しています。1階は書斎と図書室、2階はリビングと浴室まわり、3階に寝室という構成です。

 建物構造は壁式コンクリート造りとしました。防火地域のため、延べ床面積が100平方メートルを超えると耐火建築にしなければいけません。近くの大通りの交通量が多く、防音対策も必要でした。必然的に鉄筋コンクリート造りを選ぶことになったのです。

 白く塗装した部分の壁は、外断熱にしています。木製建具を用いているので、アルミサッシに比べると気密性は低いのですが、夏は風通しもよく、とても涼しい家となるでしょう。

 室内の構成は、敷地が広くないので、いろいろな方向から多様な見え方をするように配慮しました。斜めに視線の抜ける空間は、限られた面積でも広がりを感じさせます。不整形な敷地形状は、こうした斜めの視線を確保するのにむしろ役立ちました。

 また、天井高については1階2110ミリ、2階が2330ミリ、3階が2230ミリと一般の住宅に比べて低く設定しました。天井の高さをあえて抑えることで、水平方向の広がりを意識できるようにしたのです。天井は高ければいいというものではありません。面積と高さの程よいバランスが、居心地のよい身近な空間をもたらします。

 居心地のよさは、家にとって大切な要素です。言い換えれば、自分の居場所を確認でき、そこにいると「家に戻ってきた」という安堵感を得られるような空間を提供することが重要です。

 たとえば、2階のリビングに造り付けたベンチは、そんな場所となることを意識してデザインしました。窓の外にある緑を眺めて時の移ろいを感じつつ、新聞を広げたら気持ちいいだろうなと考えたのです。

 廊下まわりの床を居住スペースより1段高くしたのも、そうした工夫のひとつです。2階リビングの暖炉の火にできるだけ近寄れるよう、廊下の段差部分に腰掛けられるようにしました。暖炉のそばに腰掛けた人と、造り付けのベンチに座った人が対話しあえるような情景をイメージしました。

 私は、多くの人が気持ちよいと感じる空間をつくりたいと考えています。そのためには場所の特性を生かして、風を通し、日差しをできるだけ取り入れていくことが大切。土地には必ず何か良い面がある、その良さを引き出す空間づくりをしていきたいですね。 
(手嶋保/手嶋保 建築事務所)


千駄木の家

建築データ
  所在地: 東京都文京区
  家族構成: 夫婦+娘2人
  竣工: 2004年8月
  敷地面積: 72.46平方メートル
  建築面積: 51.53平方メートル
延べ床面積: 122.19平方メートル
  構造・規模: 壁式鉄筋コンクリート造り、地上3階建て
  施工: 高松建設、JPホーム東京事業部
設計: 手嶋保/手嶋保 建築事務所
  写真:

西川公朗

連絡先
手嶋保 建築事務所
  代表: 手嶋保
住所: 〒112-0003 東京都文京区春日2-22-5-515
  TEL・FAX: 03-3812-2247
  E-MAIL: tteshima@ca2.so-net.ne.jp
URL: http://www007.upp.so-net.ne.jp/teshima/
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