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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 60「下石神井の家」

スキップフロアと吹き抜けで、屋上まで一筆書きにつながる


3つの白い箱が組み合わさった外観
西側道路から見た外観。左に隣接する実家の庭だった部分に新築した。手前に見えるカーポートは有孔折版の上にポリカーボネートを載せたつくり。見た目に気にならないように、存在感を消すようなデザインとした

家の中央を貫く吹き抜けの玄関ホール
玄関を入ると吹き抜けホールが広がる。吹き抜けは、スキップフロアでつながる左右の部屋を視覚的に結び付ける役割を果たす。右手に半階下がるとフリールームで、その上はリビングになっている

半地下のフリールーム
書斎や趣味室として夫妻が使うフリールーム。ポリカーボネートを縦横に重ね合わせた開口の向こうには玄関ホールが見える。玄関ホールの下部を利用して床下収納を生み出している

高い天井を持つ2階リビング
玄関ホールから南側へ半階上がったリビングルーム。下階のフリールームが半地下状のため、3.15メートルというゆったりした天井高を確保している。吹き抜けを通してダイニングキッチンや寝室が見えるほか、右側に並んだ高窓からはルーフガーデンの様子がわかる

広々としたダイニングキッチン
設備まわりをL字型に配置したダイニングキッチン。建て主側は当初、アイランド型キッチンを希望したが、設備まわりを壁際に寄せることで開放的なダイニングを実現した

ルーフガーデンとつながる浴室
ダイニングキッチンの奥に設けたガラス張りの浴室は、ルーフガーデンと一体化した空間になっている。ルーフガーデンは外からの視線を遮断しつつ、開放感を与えるスペースだ

住宅内を一体化させる吹き抜けホール
階段から玄関方向を見返す。スキップフロアでつながる各部屋はすべて吹き抜け空間に接し、互いの位置を身近に感じさせる

 都会の住宅では、南面採光が難しい場合が少なくありません。そこで私は、囲われた領域をつくり、内部をオープンにした住宅をしばしば設計します。外部環境に左右されず、いかにプライバシーを守りながら明るく開放的な空間を生み出すか、を考えているのです。

 30代後半の夫婦のためのこの家も、南側など3方を住宅に囲まれた環境にありました。北隣は奥様の実家で、その庭だった場所に新築しています。道路に接する西側に駐車スペースを確保し、残りの部分に2階建ての家を配置しました。

 室内は、半地下から屋上まで一筆書きのように、スキップフロアで部屋がつながっていく構成としています。

 玄関の正面に設けた吹き抜けホールが家の中央を貫きます。玄関ホールから南側に半階下がるとフリールームで、玄関ホールの北側には寝室を設けました。

 玄関ホールを南側に上がるとリビングです。フリールームを半階下げた分、その上にあるリビングはゆったりとした天井高を確保しました。リビングからさらに半階上がるとダイニングキッチンと浴室があり、屋上へとつながっていきます。
 
 スキップフロアの良いところは、それぞれの部屋が視覚的につながって面積以上の広がりを感じられることです。自分が何階にいるかも気にならず、行動に制約が生まれません。

断面図 ただ単純に部屋の高さをずらすだけでは、こうした効果を得にくいものです。ここでは、中央に吹き抜けを設けたのが設計上のポイント。何もない吹き抜け空間を介して各部屋を結び付けていくことで、立体的な広がりを意識できるようにしました。

 開放感を与えるために、窓の扱いにも工夫しています。

 この家には広いバルコニーはありません。その代わり、リビングから窓を通してルーフガーデンが見えるようにしました。

 また、光を取り入れつつ目隠しをしたい場所には、2枚のポリカーボネートを縦横に張り合わせて使いました。ぼぉっとした広がりを透過光に持たせる効果に加え、断熱効果も得られます。外に面した開口部には16ミリ厚、寝室の間仕切りには4.5ミリ厚のポリカーボネートを用い、変化を与えました。

 建て主の夫婦は、2人の時間を大切にしようという意識の持ち主でした。家にはくつろげる空間を求め、特に浴室は温泉のようにゆったりできるつくりを希望されました。ルーフガーデンに続く場所に浴室を設けたのも、そんなこだわりの結果です。

 家を使いこなしていくのは住み手です。私たち設計者が、住み手の生活をあまりに限定するのは好ましくありません。住み手が望むことは何かを把握し、実際の使い方は彼らに任せつつも、きれいに使いこなせる家の骨格を用意することが大切です。

 そのために重要なのは、収納のボリュームをきちんと確保すること。収納というと、片付けの工夫や生活の知恵という側面でとらえられがちですが、デザインを考える上でもとても大事な要素だと思うのです。

 ですから私は、いつも多くの収納をつくるようにしています。ここでも、スキップフロアの段差を生かして玄関ホールの下を床下収納に利用したほか、大きなクローゼットや細かい収納を部屋ごとに用意しました。

 そうしたうえで、室内の色を統一して生活感をいったん消します。空間に癖がないので、結果的に住み手の色を出しやすいのでしょう。絵を掛けたり敷物を敷いたり、皆さんいろいろと独自の工夫をしてくれています。

 竣工後の1年検査などで再び訪れた際、引き渡した時とまた違う家の表情を見られるのはうれしいですね。
 (森信人/スタジオ・ノア)


「下石神井の家」

建築データ
  所在地: 東京都練馬区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2004年1月
  敷地面積: 152.98平方メートル
  建築面積: 71.63平方メートル
延べ床面積: 130.84平方メートル
  構造・規模: 木造・地上2階建て
  工事費: 3035万円(消費税別)
施工: 明成建設工業
設計: 森信人/スタジオ・ノア
  写真:

石井雅義

連絡先
スタジオ・ノア
  代表: 森信人
住所: 〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-34-18 丸山ビル205
  TEL: 0422-20-5723
FAX: 0422-20-5724
  E-MAIL: ib24463@ha.
bekkoame.ne.jp
URL: http://www.bekkoame.
ne.jp/ha/ib24463/
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