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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 64「House in Yotsuya」

小さいながらも「広い家」、和の味付けもぴりっと効かす


ガラスを並べたファサードを持つ外観
ガルバリウム鋼板と左官材で仕上げた建物全景。写真右手、道路側には、「プロフィリットガラス」を9列並べ、光と風を通しつつ外からの視線を遮っている。1階は賃貸住戸で、2、3階を建て主の住戸として利用する

大きな開口から光の差し込む2階リビング
限られたスペースに吹き抜けを設け、できるだけ広がりを感じるようにしている。正面の玄関とバルコニーの向こうに、「プロフィリットガラス」の列が見える

リビングと一体のダイニングキッチン
リビングからキッチンとダイニング方向を見る。ムクのパイン材フローリングにステンレスのキッチンというシンプルなデザインでまとめた。正面に見える壁の奥に、水回り空間が続く

透明感を出した吹き抜けまわり
吹き抜けを3階から見下ろす。吹き抜けの周囲には、アクリル板を床材とする廊下を回し、広がりを持った軽快な空間に仕上げている

竹をポイントにあしらった3階和室
建て主がアンティークショップで購入した竹の欄間に合わせて、照明を組み込んだ梁にも竹の集成材を用いている

斜線制限の形をそのまま反映させた3階洋室
斜線制限によって斜めに切り取られた家の形状をストレートに反映させた。正面に見える壁の上部にガラスをはめ込むことで、その向こうの吹き抜け空間との連続性を感じさせている

明るく一体感のある洗面と浴室
2階のダイニングキッチン奥に続く水回り空間。限られた面積ながら、ガラスの間仕切りによって広がりを生み出す

 1階を賃貸住戸、2、3階をオーナー住戸として利用する家です。建て主は一人住まいの30代前半男性で、インテリアに強い関心を抱いている方。この家を建てる際も、いろいろなイメージをお持ちでした。

 モダンな中に和のテイストを織り交ぜること。リビングの中央に大きな吹き抜けを設けること。吹き抜けを取り囲む3階廊下の床面にアクリル板を使い、透明感を出すこと……。皆、建て主から出た要望です。

 東京都新宿区にある敷地は間口4.9メートル、奥行き14メートルという細長い形を持ち、北側が道路に接しています。住宅が建て込んだ、都心によく見られる立地といえるでしょう。こうした条件の下、光と風を取り入れた空間づくりを目指しました。

 建物は、長方形のシンプルな形を敷地いっぱいに確保しています。外階段から続く2階には、ガラス張りの玄関から入ります。その奥に、吹き抜けを持つリビングとダイニングキッチン。3階は、吹き抜けホールを挟んで和室と洋室を配置しました。

 素材を吟味し、限られた敷地の中でより良い生活空間を提供するのが、私たち建築家の役目です。戦後、住宅が個室を重視した閉鎖的なつくられ方をしてきたのに対し、いかに開放的なつくりにするかを常に意識しています。

 この住宅も小規模ですが、ワンンルーム状のLDKをできるだけ広く感じさせたい。そのため、3階へ続く階段を、2階のリビングが分断されないような位置に配置しました。木の階段もなるべく存在感を与えないよう、視線が抜けるデザインにしています。

 外部とのつながり方も、ポイントのひとつです。

 道路に面したファサードのデザインは、明るく端正な表情になるよう心掛けました。ガルバリウム鋼板とセメント系薄塗り左官材で構成した外壁に、細長い「プロフィリットガラス」を9列並べています。

 「プロフィリットガラス」という溝型ガラスは、中間領域を生み出すのに適した素材です。普通のガラスのようには透けていませんから、光と風を通しつつ、外からの視線を遮ってくれる。ここでも9本のプロフィットガラスを並べることで、軽快でありながら外の視線が気にならない空間を生み出せました。

 また吹き抜けまわりでは、ハイサイドライトからの光を取り入れています。基本的に、閉じた空間は水回りだけ。あとは、家具や襖(ふすま)で緩やかに仕切り、フレキシブルな空間を目指しました。

 3階和室には、建て主がアンティークショップで購入した竹の欄間を用いています。当初は襖などにもアンティーク製品を使いたいという話も出たのですが、そこまでするとキッチュ(俗悪)なにおいが強くなるだろうと、欄間だけに抑えました。

 アンティークはあくまでもポイントとして使い、あとはモダンなデザインでまとめていく。欄間に合わせ、和室の合わせ梁や床板にも竹素材を利用しています。

 子供っぽいデザインや、わざとらしく何かをコントロールするようなデザインは、時間がたつと飽きられてしまいます。必然的に出てきた要素を整理し、組み立てていくことが大切です。

 私自身、無駄なデザインが好きではありません。空間を構成するパーツをできるだけ整理してインテリアと外観を構成する。極力、無駄やぜい肉のない間取りにしていきたいと考えています。

 私のデザインは長もちすると、よく言っていただきます。無駄をそぎ落としていった結果、使い手に飽きられないデザインになっているからではないかな。最近、そう感じるようになっています。
(川口とし子/アーキスタジオ川口)


「House in Yotsuya」

建築データ
  所在地: 東京都新宿区
  家族構成: 男性1人
  竣工: 2005年4月
  敷地面積: 68.36平方メートル
  建築面積: 40.39平方メートル
延べ床面積: 100.98平方メートル
  構造・規模: 木造、地上3階建て
  施工: 大勝建設
設計: (建築)川口とし子/アーキスタジオ川口、(構造)小熊構造設計事務所
  写真: ナカサアンドパートナーズ(内観)、アーキスタジオ川口(外観)
連絡先
アーキスタジオ川口
  代表: 川口とし子
住所: 〒107-0062 東京都港区南青山6-1-6
  TEL&FAX: 03-5485-0670
  E-MAIL: arcka@attglobal.net
URL: http://pws.prserv.net/
jpinet.arcka/
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