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Housing File 65「青山の家」

部屋と庭が交互に並ぶコートハウス、ふるさとの山を感じて暮らす


青山を背にして建つ平屋の住宅
道路側、正面外観。鉄筋コンクリート造りの地下室の上に、木造の平屋がのった構成。黒っぽい外壁に木製ルーバーの控えめな表情。建物を低く抑えて周囲の風景を引き立てる

建物を3つに分けて敷地の奥行きを生かす
北側隣地から見たところ。建物は3つのブロックに分かれ、間に中庭を挟みながら敷地の奥行きいっぱいに建っている。手前がアプローチで、左側の中庭がエントランスにあたる

中庭からガラス張りのエントランスを見通す
中庭からホールを挟んで玄関を見る。外と内、内と外がガラスの壁でつながっていて見通しがきく。手前に見える手すりは地下のホームシアターに下りる階段

内外を貫く20メートルの奥行き
南東の和室から北西方向を見る。写真手前から和室、中庭、リビング、テラス、中庭と続き、突き当たりの外壁までの奥行きは約20メートルに及ぶ

全面開口でつながる部屋と中庭
北西のテラスから和室方向を見る。中庭に面した開口部の扉を引き込むと、内外に連続感が生まれる。交互に並んだ中庭と部屋を、すべてひとつながりの空間として使える

建物中央に位置するリビングダイニング
敷地の奥行きに沿って3つに分かれたブロックのうち、中央がLDKにあてられている。広さは約19畳、長方形のシンプルな空間。写真右手は玄関、左手は廊下を兼ねたワークスペースを通じて寝室に至る

地下室は本格派のホームシアター
家づくりの大きな動機の一つに、「思う存分映画を楽しめるホームシアターが欲しい」ということがあった。写真左手がソフト類の収納棚。地下室なので音漏れの心配もない

 「青山」とは、敷地の背後にあるこんもりとした里山のこと。近隣で生まれ育った建て主夫妻にとって、幼い頃から慣れ親しんだふるさとの象徴です。家を建てるなら、この山が見える場所にしたいと考えていたそうです。

 あたりは田畑の中にぽつぽつと家が建つ、のどかな環境です。敷地は約100坪ありますが、間口に対して奥行きのある細長い形をしています。この奥行きを最大限に生かしたいと考えました。

 建て主夫妻の要望は、本格的なホームシアターをつくることと、青山の存在を感じながら暮らすこと。そこで、ホームシアターは音と光を遮断しやすい地下室に。生活空間は平屋とし、家中どこにいても青山を感じることのできる間取りを提案しました。

 敷地はもともと道路から約2メートルほど高くなっていたので、駐車スペースを設けるため道路側を一部取り崩して擁壁を造る必要がありました。それならばと、もう少し余分に掘って、地下室の壁と擁壁を兼ねることにしました。

 建物は敷地いっぱいに置き、奥行きに沿って3つのブロックに分けました。ブロックの間は中庭と廊下でつなぎ、どの部屋も2方向を中庭に向かって開くよう配しています。

 中庭を挟んで向き合うLDKと和室は、引き戸を開け放てば、空間的につながった一つの部屋のような感覚で使えます。さらに、建物の端から端まで約20メートルもの奥行きを視覚的に感じることができます。

 来客があるときは、引き戸を閉めることで、和室を「離れ」のような独立性の高い部屋として使用できます。中庭を介した配置によって、自在に空間を仕切れるようになっています。

 エントランスは和室とLDKの中間にあり、ここから直接、地下のホームシアターに下りることができます。「家族だけでなく、友人、知人にも、ホームシアターを楽しんでほしい」という建て主夫妻の要望もあり、生活空間を通らない動線としました。

 一つ一つの部屋は決して広くはありませんが、「庭」を介することで、一つの家の中に、日常と非日常、家族だけの時間と友人と過ごす時間、といった多様なシーンが展開できるように考えています。

 直接、青山に面した大きな窓はありませんが、各部屋がそれぞれ庭に面しているので、各庭先から青山の姿を垣間見ることができます。外観は量感を抑え、周囲の景色にしっくりとなじむ濃灰色としました。

 住宅は周辺環境との関係を抜きにしては考えられません。敷地の特性をよくつかんだ上で、建て主の希望に応えていくことが大切ではないでしょうか。

 どんな敷地に建てるときも共通しているのは、居ながらにして自然の気配を感じるように工夫することです。建物の形態はもちろん、そこにどんなふうに光が差し込み、陰影ができるか、年月が経つにつれて、どんな変化がもたらされるか、を常に意識しています。時計やカレンダーがなくても時刻や季節の移り変わりが感じ取れる、そんな住まいをつくりたいと思っています。

 それは何より、私たち自身が日々の生活の中で自然や環境の大切さを意識しているからかもしれません。多摩川を望むマンションに自宅と事務所を構えて10年近くになりますが、ここには都心にはない、ゆったりとした時間が存在しています。これからも1軒1軒、私たちが心から住みたいと思える住まいを提案していきたいと考えています。
(柏木学+柏木穂波/カシワギ・スイ・アソシエイツ)


「青山の家」

建築データ
  所在地: 山口県下関市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2004年2月
  敷地面積: 323.20平方メートル
  建築面積: 160.70平方メートル
延べ床面積: 130.12平方メートル
  構造・規模: 木造+RC造り、地下1階・地上1階
  施工: 安成工務店
設計: 柏木学+柏木穂波
  写真: 上田宏
連絡先
カシワギ・スイ・アソシエイツ
  代表: 柏木学、柏木穂波
住所: 〒182-0025 東京都調布市多摩川3-73-1-301
  TEL: 0424-89-1363
FAX: 0424-89-2163
  E-MAIL: info@kashiwagi-sui.jp
URL: http://www.kashiwagi-sui.jp/
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