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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 66「Nt邸」

空間を「膨らませる」工夫、出窓とロフトを活用した家


出窓の配置が印象的な南西外観
シンプルな箱形の3階建てに大きな出窓を7個設けた。外壁には断熱材付きのガルバリウム小波板を用いている

上階とのつながりを意識した2階リビングダイニング
リビングダイニングから吹き抜けを通して3階の個室が見える。3階部分は吊り床としており、薄い床板が浮かんでいるように見える

2階リビングダイニングと一体感のあるテラス
リビングダイニングの南側には、奥行き1.8メートルの広いテラスが建物の横幅いっぱいにつながる

2層の吊り床をつなぐ透明な廊下
3階は、個室と半階分のロフトとで構成される上下2層の吊り床が、透明な廊下を挟んで2列並ぶ。写真正面、動線部分には、透明な素材を用いて上階からの採光を確保した

リビングダイニングから続く階段
3階の吊り床は、梁をできるだけ細くすることで床板を薄くして、存在感をなくすようにした。階段手前右の壁など外部に接している壁面は、75ミリ角の鉄パイプの外側に張ったベニヤ板を直接塗装している。内側の内装材を省き、限られた空間を広く感じられるようにした

空間のつながりを感じる3階個室
低い方の個室からリビングダイニングの吹き抜けを見る。吹き抜けの向こうに、半階分高くなったもう一つの個室が見える。ロフトを設けたことで個室内の収納をなくし、すっきりした空間とした

吊り床とスリット
最上階の個室から、動線部分の透明な床と吊り床を見下ろす。床は直径24ミリの細い鉄棒で吊っている

 東大阪市の低層住宅地に建つ、母親と成人した娘さん、息子さんのための住宅です。古い長屋風の建物が並ぶ場所で、それまで住んでいた住宅を建て替えました。

 間口は7.5メートルとやや広めですが、面積は20坪という狭小敷地です。建ぺい率60パーセント、容積率160パーセントと都会によくある条件の下、できるだけ広々とした天井の高い家となるよう限界に挑戦しました。

 斜線制限や容積率の範囲内で、室内空間をどれだけ膨らませられるか。考えた末に採用したのが、立体的に部屋を重ねていく方法でした。

 まず1階に駐車スペースとお母さんの部屋、2階にリビングダイニングとキッチン、浴室を配置しました。2階は皆が集まるこの家の中心的な空間となります。

 そして3階には、個室と天井高1.4メートルのロフトを上下に組み合わせた細長い部屋を2列、直線階段を挟んで並べました。個室とロフトの上下関係を逆にしているため、個室の床レベルには半階分の差が生まれます。2階から2つの個室、そして屋上へとスキップフロア状に続くように部屋を配置しました。

 ちなみに、1.4メートルの天井高の空間は床面積に入りません。半階の高さをもつロフトを設置したことは、限られた容積率を最大限生かすための工夫でした。同時に、その分、個室からは収納をなくしたため、空間をすっきりと使えます。

 この家の中核となる2階部分をいかにスカッとさせるかは、もう一つの大きな課題でした。視線を妨げる柱を室内に見せたくありません。そこで3階個室とロフトの床を上部から吊ることで、柱をなくしました。

 住宅密集地で3階の住宅を建てる場合、防火面の配慮から、基本的に私は鉄骨造りとするようにしています。鉄という素材の特徴は、引っ張り力に強いことです。つまり吊り構造は、鉄の特徴を最も効果的に生かした構造といえます。

 吊っている個室とロフトの床の梁を細くし、できるだけ床板を薄く仕上げました。その結果、リビングの上に2枚ずつの薄い床板が浮かんでいるような構成になります。吊っている部屋は可能な限り壁を取り払い、互いの空間を感じ取れるようにしました。

 吊り構造にすると多少の揺れは生じるでしょう。ただ、むしろ互いの気配が分かった方が良いという建て主の希望があったので、それなら大丈夫と判断しました。もちろん、こうした点は最初からきちんと説明して、建て主の理解を得ておくことが重要です。

 また1階から3階、さらには屋上まで続く動線は、部屋の外を大きく回りながら続くようにしました。できるだけ長い距離を歩き、家の隅々までうろうろしてもらうことで、空間の大きさを体感していただきたかったからです。

 さてもう一つ、限られた敷地を活用する工夫は積極的な出窓の利用です。

 リビングや各階の個室に、それぞれ出窓を設けました。部屋に応じて、出窓の半分を収納やベンチなどに使っています。確認申請上、こうした出窓部分は床面積にカウントされません。ここでも容積率を最大限利用しているのです。
(山隈直人/kt一級建築士事務所)


「Nt邸」

建築データ
  所在地: 東大阪市
  家族構成: 母+子2人
  竣工: 2003年9月
  敷地面積: 66.51平方メートル
  建築面積: 39.88平方メートル
延べ床面積: 118.72平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階建て
  施工: 岡本建設
設計: 山隈直人/Kt一級建築士事務所
  写真: 杉野圭
連絡先
kt一級建築士事務所
  代表: 山隈直人
住所: 〒550-0003 大阪市西区京町堀1-7-10
  TEL: 06-6444-8314
FAX: 06-6444-8325
  E-MAIL: ntymkm@ybb.ne.jp
URL: http://www.linkweb.or.jp/ ̄tai/
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