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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 68「赤堤通りの家」

小さな吹き抜けで気配を感じる、細部の工夫を積み重ねた家


バス通りに面した北側外観
住宅地で端正な表情を見せる4層の外観。真北に幅11メートルという広さのバス通りが走っているため、「北側斜線」に対しても比較的余裕があった。敷地の地盤面は道路より約1メートル高くなっている

木が優しい雰囲気を与える2階居間
床やテーブルに木を使い、温かい印象をもたらしている。床暖房を施したフローリングにはムクのナラを使用。この部屋で仕事もするため、特注のテーブルには引き出しを設けた

居間と外をつなぐテラス
居間に続けて、庭の代わりとなるテラスを設置している。隣接して2階建ての家が建ち、下階は日照をあまり得られない環境のため、大切な外部空間だ

光を取り込み、ゆとりを感じさせる階段
外光を取り入れる窓を設け、小さな家ながらゆとりを感じさせる階段まわりを確保した。将来、必要なら、階段昇降機を設けられる寸法とし、コンセントも用意している

階段室の広さを感じ取れる1階和室
1階の6畳の和室は夫婦の寝室として利用する。階段との間の引き戸を開けると空間が一体化し、実際以上の広さを感じさせる

造り付けベッドのある子ども室
3階の子ども室。2つ並んだ子ども室の間に、段違いで造り付けベッドを設けた。布団が落ちないようにしたバーなど、細部まで使いやすいように設計している

互いの気配を感じる子ども室の吹き抜け
3階の子ども室の間には、2階の居間にもつながる小さな吹き抜けを用意した。子ども室同士、あるいは居間との間で気配を感じられるようにという配慮だ

 夫婦と、小学校低学年、幼稚園の娘2人という4人家族が、ずっと住んでいた家を建て替えました。

 立地するのは、世田谷区の住宅地。真北に幅11メートルのバス通りが走り、敷地は道路面から1メートル強高くなっています。その高低差を利用して玄関を地下に設け、地上に3階の建物をつくりました。合わせて4層の建物です。

 敷地面積45.9平方メートルという都内によくある小さな敷地なので、1フロアに1つずつ機能を積み重ねた単純な構成としました。

 1階に寝室と水回り、2階に居間と台所、3階に2つの子ども室を重ねています。地下の予備室はご主人のコレクションであるLPレコードやCDを聞くオーディオルームとして利用します。

 敷地に余裕がないため、庭はほとんど取れません。そこで、1階の寝室の前に洗濯物を干せるテラスを用意し、上に可動式のテントを設置しました。また2階の居間の続きにも、庭代わりとなるテラスを設けています。

 上下に部屋を重ねる間取りの中で、特に配慮したのは、3階の子ども室と2階居間との関係です。

 ポイントは、2つの子ども室の間に設けた小さな吹き抜けでした。ここを介して2階の居間から気配を感じられると同時に、子ども室同士も互いにのぞけます。決して大きな吹き抜けではありませんが、互いの気配を感じ合うには十分です。

 限られたスペースをいかに有効活用し、死んだ空間をつくらないようにするか。そのためには、空間の連続性をどうつくっていくかが大切です。

 ここでは階段室をできるだけゆったり確保し、各部屋との間を引き戸で仕切りました。引き戸を開けると風の通り道となり、階段の空間を室内に取り込めます。

 私は、よく扉にスリットを設けます。欄間をガラス張りにすることもあります。隣の空間の一部だけを見せることによって内外の気配を感じさせ、実際以上の広がりを感じてもらえるからです。

 こうした点を含め、家づくりで常に大切にしているのは居住性の確保です。

 家での暮らしは一つ一つの作業の連続で成り立っており、その流れにストレスがないことが大切です。設計に際しては、家の中でどういう動きをするのか、かなり細かくシミュレーションして、それぞれの位置を決めていきます。

 たとえば玄関では、外のカギ穴の位置をどこにするか、どこから明かりをとるか、室内に入ってからの照明のスイッチの位置をどこにするか、靴をしまう場所は……。設計には、生活に対する想像力が欠かせません。

 赤堤通りの家では、子ども室の造り付けベッドのはしごを登りやすい幅にしたほか、手すりは握りやすい太さにしました。縦横の手すりは布団がずり落ちないような役目も果たします。

 居間のテーブルの脚の位置もいろいろと計算しました。上に載ったときに不安定になってはいけません。また、テーブルで仕事もするので引き出しを設けているのですが、足を入れる際、邪魔にならならいようにする必要もありました。

 極論すれば、私はいわゆる形に興味はないと言ってもいいかもしれません。形ありきで設計するのではなく、細部の納まりを考えていくと自動的に形に結び付く。そして、その形を自然な感じで受け止めてもらえればいいと思うのです。

 最近の住宅は人間の生活や五感から離れ始めているという気がします。私はもっと皮膚感覚に根差した住宅をつくっていきたいですね。
(本間至/ブライシュティフト)


「赤堤通りの家」

建築データ
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 夫婦、娘2人
  竣工: 2004年12月
  敷地面積: 45.90平方メートル
  建築面積: 27.30平方メートル
延べ床面積: 105.40平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り・一部鉄筋コンクリート造り、地下1階・地上3階建て
  施工: sobi
設計: 本間至/ブライシュティフト
  写真: 冨田治
連絡先
ブライシュティフト
  代表: 本間至
住所: 〒156-0044 東京都世田谷区赤堤1-35-5
  TEL: 03-3321-6723
FAX: 03-3321-6287
  E-MAIL: pencil@mbd.ocn.ne.jp
URL: http://www22.ocn.ne.jp/
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