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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 70「小比企セービングハウス」

自然とともに生きる家、落葉高木で日差しを調整


裏山の林に溶け込むように意識した外観
奥の裏山から手前の道路側に向けて傾斜する片流れの屋根を設け、建物のボリューム感を抑えている。建物の手前に植えた落葉高木は、夏になると葉を茂らせて日射を遮る

自然地形に合わせた建物配置
緩やかに傾斜する地盤面に沿って、床面に段差を設けて部屋を配置した。右手に当たる北側が高くなり、日照を受けやすいようになっている。外壁のガルバリウム鋼板は、汚れが目立たないよう濃い茶色の塗装品を用いた

傾斜天井が開放感をもたらす2階LDK
梁を露出させ、傾斜屋根の形状をそのまま生かした2階のLDK。廊下に続く部分は扉で閉じて冷気や暖気の拡散を防ぎ、囲われた部屋はオープンなつくりとした。床面にはめ込んだ強化合わせガラスは、下階への光の通り道になる

子ども室とのつながりを感じさせる2階の構成
LDKからデッキの向こうに子ども室の上部を見る。子ども室は1.5階の天井高をもっており、将来、ロフトを増設できるようにしている

中庭に面した1階の主寝室
トップライトや中庭を設けた効果で、主寝室は1階北側にありながら十分な明るさを確保できた。冬になると、床の吹き出し口から屋根面で暖めた空気が吹き出す。左手に見える収納棚の背後には書斎コーナーがある

随所に収納を確保した階段、廊下まわり
玄関から主寝室に続く段状廊下と階段を見る。階段の下部全体を収納としたほか、廊下の段部分も引き出し収納としている

 住宅を建てる際、私はできるだけ背の高い落葉高木を建物の周囲に植えるようにしています。落葉高木は、日射と室内の温熱環境を上手にコントロールしてくれるからです。

夏モード
落葉高木によって直達日射をカットする
冬モード
ダイレクトゲイン(直達日射)を取り込む
 夏になると葉が生い茂って強い日差しを遮断します。木を通り抜ける風を涼しくしてくれるというメリットもあります。一方、冬は葉が落ちてしまうので、室内の奥深くまで日が差し込み、部屋は暖まります。

 「小比企セービングハウス」では、このような落葉高木を用いた環境制御に加え、「パッシブソーラー」の仕組みも取り入れました。

 パッシブソーラーは冬、南面に傾斜させた屋根面で集熱し、暖めた空気を建物内へ送り込む仕組みです。ダクトを通して1階や2階の床の下部に送風し、床面を暖めます。ここでは切り替え装置を設け、1階と2階へ送る風量を適宜調整できるようにしました。

 ご家族は40代半ばのご主人と30代の奥様、そして小学生の兄と妹の4人。建物はワンルーム状のLDK、主寝室、共有の子ども室というシンプルな構成です。北側に主寝室とLDKを積み重ね、土間コンクリートを敷いた中庭を介して南側に子ども室を配しました。

 プランの特徴は、将来の変化に対応できる設計としたことです。

 道路に面した南側の子ども室は、傾斜屋根のため1.5階分くらいの天井高をもっています。現在は兄妹2人で一緒に使っていますが、いずれ個室が欲しい年頃になった時には部屋を2分割します。2階部分に床を設けてベッドを置けるロフトとし、それぞれが1階とロフトを利用できるようにという想定です。

 また、現在は別々に暮らしているお母様が将来、同居される可能性もあるということでした。1階の子ども室と主寝室の間に置いた中庭は、お母様の部屋の増築スペースとして用意したものです。

 なお、増築時には、お母様の部屋にもパッシブソーラーによる暖かい空気を送り込めるように準備しています。具体的には、1階主寝室と中庭の間にある基礎コンクリート上端の一部にスタイロフォームを使いました。増築する時はこれを取り払い、風道として利用できるようにしました。

 この家は春に出来上がったばかりなので、1年を通じた温熱環境の状況はまだ分かっていません。ただ、私自身の自宅も10年前に同じ方式で建てており、その効果は実感しています。特に夏の朝などは涼しいんですよ。

 実は私の家はやや低めの樹木を植えたため、木が育つ前は日が入り込んでかなり暑かったのです。でも、木が育ってくると全然違います。以前は夕方になるとたまらなく暑かった西の部屋も、今ではエアコンなしで過ごしています。

 また、冬は暖房コストの低減につながっていますし、床の下部に空気を通すことから換気面で役立っています。

 小比企セービングハウスは、東京・八王子の新しく造成された住宅地に建ち、敷地の裏側には小さな山があります。

 周囲の景観にできるだけ影響を与えないよう、建物のボリューム感を抑えることに配慮しました。屋根を北から南へ片流れに傾斜させたのは集熱のためですが、これは道路から見たときに建物の存在感を抑える役割も果たしています。

 樹木を植え、傾斜屋根をもつ家のつくりは、裏山の林ともちょうど溶け合う形となったのではないでしょうか。
(井口浩/井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツ)

「小比企セービングハウス」

建築データ
  所在地: 東京都八王子市
  家族構成: 夫婦、子ども2人
  竣工: 2005年3月
  敷地面積: 151.81平方メートル
  建築面積: 53.46平方メートル
延べ床面積: 87.48平方メートル
  構造・規模: 木造、地下2階建て
  施工: 練馬建築事業協同組合、石塚造園
設計: 井口浩/井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツ
  写真: 北島俊治
連絡先
井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツ
  代表: 井口浩
住所: 〒177-0044 東京都練馬区上石神井1-11-12
  TEL: 03-3929-7108
FAX: 03-3929-7188
  E-MAIL: info@fifthworld-inc.com
URL: http://www.fifthworld-
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