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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 71「武庫之荘F邸」

白・黒・グレーの3要素で構成、ポルシェが映えるシンプルな家


20本のガラススリットで内外をつなぐ
西側外観。シルバーのガルバリウム鋼板の目地に沿って、20本のガラスのスリットをランダムに走らせている。部屋に明かりがともると、光が漏れて生活の気配が伝わる。日中は室内にもかなりの光量が確保できるという。1階左側の開口部は通勤用の車のガレージ。右側にポルシェのガレージがある

階段を挟んで2台の駐車スペースを振り分ける
1階全景。写真手前の黒いタイル張り部分にポルシェを、階段を挟んで向こう側に通勤用の車を停(と)める。両側に、ライトコート(光庭)が設けられている。1階ホールは接客スペースとしても想定され、カウンターと流しが用意されている

モノトーンの大空間に光が変化を与える
2階西側を見る。間仕切りがなく、3階まで吹き抜けた大空間。ガラスのスリットが床に光のラインを描く。黒い階段は垂直の手すりで吊り、蹴込み板も省いた軽快なフォルム。写真左手の白いカウンターがキッチン、右手のガラス壁が浴室。生活感を感じさせない空間だ

ガラス張りのライトコートから光が差し込む
2階東側を見る。写真右手奥は、東南のライトコートに面した1階から3階まで続く開口部。2階部分の外側は、FRPの波板を重ねたフェンスで囲んでプライバシーを守る

吹き抜けとライトコートで上下階がつながる
3階から吹き抜け、ライトコートを見下ろす。2階と一体になっているだけでなく、ライトコートを通じて1階まで視界に入る。吹き抜けの左側に見える白い壁の手前は、その奥のゲストルームとの間を仕切る引き戸

グレーの壁と黒い床の間を、白い家具が走る
3階から2階を見下ろす。壁はフレキシブルボードの素地のグレー、そこに差し込まれる水平面、つまり床と天井は黒。その間を白い家具が縦横に走る。2階左手前はテレビ台を兼ねたベンチ、その右隣がキッチンとなり、上に折れて収納、レンジフード、3階の手すり兼座卓、照明とつながっていく

 現在は夫婦でお住まいですが、当初は男性の一人暮らしを前提に計画しました。周囲は新旧の住宅が入り混じり、やや雑然とした街並みです。隣家が近接していること、仕事柄、近隣と生活時間がずれることから、外に対しては閉じ、内に開く建物としました。

 外周はガルバリウム鋼板の壁で囲み、東南の角と北側中央部にライトコート(光庭)を設けています。開口部はこのライトコートに集中させました。西側の道路面に窓はなく、代わりに外壁の目地に沿ったガラスのスリットを通して、かすかに中の気配を伝えます。

 内部にはいっさい壁がなく、空間を仕切るものは床だけです。それも1階から3階まで、吹き抜けのライトコートでつながれており、全体がワンルームのように一体感のある構成です。

 通勤用の車と趣味で乗るポルシェ、2台の車を所有しているので、駐車スペースの配分も大きな課題でした。大切にしているポルシェは「停(と)める」というより「飾る」感覚でインテリアの一部とし、通勤用の車とは分けて置きたいと考えました。

 そこで、階段を中央に配して1階を南北に振り分け、北に通勤用の車を、南にポルシェを置くことにしました。車に乗るときも降りるときも、日常の動線とポルシェへの動線が交わることはありません。南はライトコートを含んだ明るい空間で、床と同じ黒いタイルを敷き、室内との連続性を強調しています。

 階段を上がって2階に入ると、まずガラスのスリットが並ぶ壁が目に飛び込みます。夕方帰宅するころには、このスリットから差し込む西日が、何本もの細い光の筋を描き出していることでしょう。この住宅ならではの独特の景色によって「我が家に帰ってきた」という感慨を深くしてもらえればと思っています。

 浴室もキッチンも2階にあり、生活はこのワンフロアで完結できます。吹き抜けでつながる3階はアトリエやゲストルームなど、予備的な役割。2階から丸見えのようですが、床や座卓に何かを広げていても下からは見えないし、引き戸で仕切れる場所もつくってあります。

 大空間を取り巻くグレーの壁に、黒い床。このシンプルな空間を邪魔しないよう、テーブルやキッチン、収納、給排水管や電気配線、照明器具などの諸機能は、すべて白い造り付け家具の中に収めました。この家具は、場所や機能に応じてタテになったりヨコになったりしながら、1階から3階まで連続しています。

 住宅の要素を、外周と床と機能の3つに整理し、各要素をグレーと黒と白で分類した構成。さらに、家具も階段も垂直・水平の直線だけでつくり、室内に曲線や斜線が現れないようにしています。これには、ポルシェの美しい曲線を引き立てようという狙いがあります。

 板金を用いた外観、細部まで気を配ったデザインは、一つの芸術品のような自動車に通じるものだと思います。「便利さより美しさを」という建て主のこだわりがつくらせてくれた住宅です。
(中辻正明+中辻雅江/中辻正明・都市建築研究室)

「武庫之荘F邸」

建築データ
  所在地: 兵庫県尼崎市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2004年9月
  敷地面積: 87.10平方メートル
  建築面積: 52.32平方メートル
延べ床面積: 138.51平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階
  施工: 越智工務店
設計: 中辻正明+中辻雅江/中辻正明・都市建築研究室
  構造: 佐藤淳/佐藤淳構造設計事務所
  写真: 北嶋俊治/アーキフォト
連絡先
中辻正明・都市建築研究室
  代表: 中辻正明、中辻雅江
住所: 〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-3-5-601
  TEL: 03-5459-0095
FAX: 03-3477-0095
  E-MAIL: m-naka@mxj.mesh.ne.jp
URL: http://www2u.biglobe
.ne.jp/~m-naka/
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