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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 72「谷和原のいえ」

外と一体化する環境をつくる、“抜け”と奥行きを意識


壁と開口部を交互に配置した外観全景
田園地帯にある広い敷地に、総2階の四角い建物を配置した。壁と開口部は1、2階で連続するように設け、壁と“抜け”の部分を交互に並べることで両者の対比を明確にしている

南北に貫通する1、2階の居間まわり
1、2階の居間部分を見る。奥も全面開口のため、風や視線の通る空間が南北方向を貫通する。木製建具は壁の中にすべて引き込まれ、引き戸を開けると内外が一体化する

吹き抜けで2階とつながる1階居間
両親と祖母の住む1階の居間。壁で囲まれたキッチン以外は、開放的な空間構成としている。窓側には吹き抜けを設け、2階の子世帯のスペースとの間で気配を感じられるようにした

居間の隣にある1階和室
客間として使う和室は、障子越しに屋外デッキが続く。基本的に白い塗装と木の肌を生かした建物の中で、床の間とデッキの壁にオレンジと黒を用いてアクセントにしている

1階と2階に連続感を与える屋外デッキ
上下階の居間の横に設けた吹き抜けのデッキ。内と外の境界をあいまいにするために、室内と同じ仕上げを施した。デッキ奥の部屋は、1階が和室、2階が子どもスペースになっている

勾配天井を生かしたワンルーム状の2階居間
子世帯が使う2階の居間。子どもスペースや寝室とは引き戸で間仕切り、大きなワンルーム空間としている。正面奥に見えるデッキとの間は天井までのガラスで一体感を確保しつつ、一部に板壁を設けて、落ち着ける小さな領域も生み出した

緑をアクセントに用いた和室と水回り
2階の和室から北に続く水回りを見通す。明るい緑を壁に用いている。ここでも天井面までの引き戸を採用し、南北を貫く空間の“抜け”を強調した

 私たち子世帯と、両親、祖母という4世代のための住宅です。小さいころから住んでいた実家を建て替えました。8月に開通したつくばエクスプレスで秋葉原から約40分、茨城県の田園地帯に立地しています。

 広い敷地の中に、勾配屋根をかけた直方体のシンプルな箱を置きました。南北に抜ける開口を4つ貫通させ、風や光、視線が通るようにしています。その間に、寝室やクロゼット、水回りなど、壁で囲まれた部屋を配置するという構成です。

 抜ける部分にある窓や間仕切りの引き戸は木製で、壁の中にすべて引き込めます。余計な要素を取り払い、全開すると、内外の空間が一体化するようにしました。

 1階は両親と祖母の世帯、2階は私たち家族のスペースです。玄関横に設けたデッキや居間の北側にある吹き抜けが、上下の世帯を視覚的に結び付けます。互いの姿が見えるわけではありませんが、電気がついているかどうかなど、何となく気配を感じられるようにしました。

 1階は祖母のための続き間の和室や両親の寝室など、部屋をある程度区切っています。一方、2階は基本的にワンルーム空間としました。寝室や子どもスペースは、必要に応じて建具で仕切れるようにしています。

 居間や食堂から寝室や子どもスペースまでの距離が長いため、引き戸を開けても視線は気になりません。また引き戸には鏡を張り、閉めた状態でも空間の奥行きを感じさせるようにしました。空間が抜けるよう意識した部分は、扉を閉じていてもその感覚を保つようにしたかったのです。

 ただ一方で、広いワンルーム状の空間構成は体育館のようにガランとした印象を与えかねません。そこで、デッキに面したガラス開口部の一部に板を張り、家具をしつらえたり、仕上げを変えた壁面を重ねたりするなどの工夫をしました。視覚的に奥行きを与えながら、落ち着ける小さな領域に分けていくためです。

 私たちは、見栄えの良いデザインをすることが目的ではなく、「住む環境」をつくりたいと考えています。ここでも、建物という形ではなく、外部と一体になった空間そのものを生み出すことを意識しました。

 デザインをしすぎないことは、時間がたっても飽きないことにつながります。いつの時代にも気持ち良さを感じられる……。そんな建物は、サスティナブル(持続可能)な建物という考え方にも通じるのではないでしょうか。

 現在、私たち夫婦は東京の荻窪で設計事務所を開き、自宅もそちらにあります。ですから「谷和原のいえ」は、いわば週末住宅。いずれは引っ越す予定ですが、現在は時々戻っている状況です。

 「せっかく建てたのなら住まなければもったいない」と知人から言われることもあります。でも、私たちが引っ越しをするタイミングを見計らっていたら、なかなか建て替えは進みません。両親や祖母に新しい家を楽しんでもらうには、むしろ早く建てた方がいい。私たちも、必要があればすぐ行ける場所を持っていると安心です。

 住宅づくりには、決まった方法はありません。多世帯住宅にもいろいろな選択肢があるということを、皆さんにお知らせしたいですね。
(直井克敏+直井徳子/直井建築設計事務所)

「谷和原のいえ」

建築データ
  所在地: 茨城県筑波郡谷和原村
  家族構成: 祖母、両親、夫婦、子1人
  竣工: 2003年5月
  敷地面積: 1842.19平方メートル
  建築面積: 186.44平方メートル
延べ床面積: 318.38平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  施工: 大作
設計: 直井克敏+直井徳子/直井建築設計事務所
  写真: 上田宏
連絡先
直井建築設計事務所
  代表: 直井克敏
住所: 〒167-0051 東京都杉並区荻窪1-57-24 R-FLAT荻窪R3
  TEL: 03-5934-6044
FAX: 03-5934-6995
  E-MAIL: kn@naoi-a.com
URL: http://www.naoi-a.com/
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