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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 73「南青山の家」

都会の中心でほっと自分に戻る、光と緑を包み込んだ住まい


密集地に建つ3階建て
道路側外観。駐車スペースを確保するため、2階以上をオーバーハングさせた。2枚の外壁が合わさったサヤのような形、櫛(くし)引きの跡が残る仕上げで、閉じているのに温かい表情がある

光で暮らしの気配を伝える
夕景。室内に明かりがともると、外壁にはめ込まれたいくつものガラスブロックとスリット、3階の丸窓から光が漏れる。1階右手奥が玄関

縦横に空間が広がる2階LDK
リビングからダイニング方向を見る。全面ガラスで中庭に面し、上空から光が差し込む。階段の上も大きく開いており、空間が上昇していくような印象を与える

2つの中庭と室内が一体に
階段から2階LDKを見下ろす。左右両側に中庭が続く。床から天井までの開口で、内外一体感のある空間。ダイニング横の折れ戸を開ければテラスに連続し、戸外の空気をじかに感じることができる

太陽の動きを伝えるガラスブロックのスリット
ダイニングから階段を見る。階段室の壁を黄色いガラスブロックのスリットが貫く。太陽が西に動くとスリットから強い日差しが入り、室内の光を変化させる

中庭に挟まれたダイニング
ダイニングの北側は竹を植えた中庭。南はテラスに面している。3階浴室の下にあたるために天井は低くなっており、落ち着いた雰囲気。床は光を映す黒っぽいコルクタイル

空に近づく主寝室
最上階の主寝室は天井高を抑えた。階段上のトップライトも間近に感じられる。階段室を大きく開くため、床の片側は天井から吊っている

 敷地は都心の密集地にあり、わずか2メートルの接道面を除いて、すべて建物に囲まれています。建て主夫妻の職場にほど近く、それだけに、ひとたび家に入ればほっと気持ちが解放されるような住まいを提供したいと考えました。

 96平方メートルの敷地に対し、建ぺい率60パーセントという条件。そこで、敷地全体を
活用できるよう、外周を壁で囲み、その内側に南北2つの中庭を設けました。南の庭にはケヤキ、北には竹を植えて緑を楽しみます。上空から光が差し込み、雨が降り込む、自然を感じる空間です。

 2台分の駐車スペースを確保するため、1階は外壁を後退させました。角の格子戸を開けるといったん南の中庭に入り、短い露地を通って玄関に至ります。

 生活の中心は2階のLDKで、3メートルの天井高を確保しました。2つの中庭に面した開口部は床から天井までのガラスなので、内外が一体の空間として感じられます。窓枠を隠し、壁が連続して見えるよう、仕上げにも工夫しました。

 緩やかな弧を描いて3階に至る階段は、この家の重要な要素の一つです。自然を取り込む中庭とはまた違った意味で、上下の空間をつなぎ、小さな家に変化と広がりをもたらします。

 階段の背後には黄色いガラスブロックを挟んだスリットがあり、西日を受けると強く輝きます。日が高いうちはトップライトの白い光が勝っているのですが、日が傾くにつれて光はだんだん黄色みを増し、そのうち赤みを帯びて、最後はふっと消える。壁に囲まれた家の中でも、太陽の動きを感じ取ることができるようにと考えました。

 太陽の動きを映すスリットには、教会の祈りの空間に通じるものがないでしょうか。祈りの空間に感じる、心を癒やすような光に、日ごろから強い興味を抱いています。

 3階の主寝室はこのスリットの最上部に面しています。階段室との間に壁はなく、必要に応じてカーテンで仕切ります。ここには夫婦専用のプライベートな浴室を設け、さらに、ゆったりとお湯につかる場所と体を洗うシャワーブースを分離しました。バスタブは庭に向かって開いています。

 どちらかといえば閉じた印象を与える外観なので、生活のぬくもりが漏れるよう、外壁に丸いガラスブロックをいくつも埋め込みました。コンクリートの壁の上には樹脂を塗り、櫛(くし)引きの跡を残して表情を与えています。

 住宅は何十年と残るものですから、完成した瞬間に美しければいいとは思いません。たとえば外壁の色合いも、何年かたって少し汚れたぐらいでちょうどよくなればいい。そのためには、設計時に、どんなふうに雨が垂れてどう汚れるかを計算しておく必要があります。これがなかなか難しいのですが。時間とともに味わいを深める家が理想ですね。
(廣部剛司/廣部剛司建築設計室)


「南青山の家」

建築データ
  所在地: 東京都港区
  家族構成: 夫婦+子供1人
  竣工: 2005年4月
  敷地面積: 96.07平方メートル
  建築面積: 52.58平方メートル
延べ床面積: 150.81平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、地上3階
  施工: sobi
設計: 廣部剛司/廣部剛司建築設計室
  写真: 坂口裕康
連絡先
廣部剛司建築設計室
  代表: 廣部剛司
住所: 〒213-0004 神奈川県川崎市高津区諏訪1-13-2 広佐ビル2F
  TEL: 044-833-9798
  E-MAIL: hirobe@luna.email.ne.jp
URL: http://www.ne.jp/asahi/hirobe/
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