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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 74「House TTN」

階段とデッキで3世帯を結ぶ、将来は左右独立の住戸にも


鉄板のルーバーを象徴的に配した南側外観
1階に両親、2、3階に姉と妹の家族が住む3世帯住宅。左右に分割された2つのブロックを鉄板の可動式ルーバーが覆い、家全体に統一感をもたらす

2つの世帯を結ぶ屋外の木製デッキ
姉と妹の世帯の間には、外気とつながる木製のデッキが南北に延びる。両側はガラス張りのため各戸からの見通しも良く、まだ幼い2つの世帯の子どもたちにとって格好の遊び場所だ。将来、デッキの中央を取り外すと、左右2つの独立した住戸になる

上階から光のこぼれ落ちる姉世帯の2階主室
自然の風合いのフローリングを生かした明るい主室。奥のキッチンからそのままカウンターを真っすぐ延ばし、すっきりとした構成としている

2階主室の造り付けテーブル
キッチンの向かい側に、腰壁と一体化させた食卓を造り付けた

シャープな白と黒の内装をもつ妹世帯の2階主室
デッキを介してつながる妹世帯は、一転して白と黒の対比を際立たせたシャープな内装。吹き抜けを設け、その下に折り畳み式のテーブルと一体化したキッチンを配した

デッキ側に開放した3階の寝室
妹世帯の3階寝室。3階は視線を遮るため道路側と南北の壁を閉じ、右手のデッキに面して広い開口を設けている

階段で上とのつながりを感じさせる親世帯住戸の1階主室
1階の両親の家は独立した造り。正面に見える玄関の左右の扉を開けると、娘世帯に上がる階段に出る。2本の階段を介して、2人の娘の世帯との結び付きを感じられるようにした。将来2つの住戸に分割することを考え、左右対称の構造としている

階段と空間が重なって見える1階主室まわり
和室の寝室から主室を通して洋室の寝室を見る

 両親が住んでいた家を建て替え、出産を機に、姉、妹の家族が同居することになりました。お姉さんには双子の姉弟、妹さんには男の子が誕生しています。にぎやかになった3家族がどうやって一緒に住むのかが、設計の大きなテーマでした。

 1階は両親のスペースです。広い空間に食卓を配した主室を中央に置き、両側に寝室を並べています。

 2、3階は、姉、妹世帯の家です。細長い2つの家を東西に並べ、中央に2メートルの幅をもつ木製デッキを渡しました。それぞれの家の主室は、デッキに向かって大きなガラスをはめ込んでいます。「経木(きょうぎ)すだれ」を上げると視線が通り、互いの存在を意識できるようにしました。

 計画の当初は、3世帯が独立して住むマンション形式にという希望も出ていました。でも、せっかく同時期に3人の子どもを育てるのですから、お互いプラスになるような家にしたい。そこで、各世帯を完全には分離しない現在のプランを提案しました。

 3つの住戸は玄関や水回りなども個々に設置しており、独立した機能を有しています。上の2世帯は同じ面積と外形ですが、室内の間取りや内装の雰囲気は異なります。各戸に必要な機能や雰囲気を確保しつつ、透視性の高い共有空間を間に配置する。それによって、集まって住む良さを生かしたいと考えました。

 こうした独特の間取りは、実は将来の使い方を考えるところから生まれました。

 数十年後には世代が替わり、2家族が残ります。その時、建物を完全に2つに分離でき、必要があれば個々に転売できるようにしたい……。そんな要望が、建て主たちとの話し合いを進めるうちに浮かび上がってきたのです。

 ですから、この家では、構造的にも法的にも独立した2つの建物に分割できるようにしています。

 南北に延びるデッキの中央を90センチの幅で帯状に取り外すと、2、3階は完全に分離します。1階も、床面を90センチの幅だけ壊して必要な外壁を設けると、左右に分割できます。3階建ての住宅が2棟、誕生するわけです。

 東西の棟で完全に自立するように構造を設計し、中央部分の部材は簡単に取り外せる仕様としました。勾配屋根も、土地を2分割したときにそれぞれの敷地内で斜線制限をクリアできる形にしています。

 これら様々な条件を成立させるために必要な仕掛けが、中央のデッキでした。

 デッキ部分は、鉄板の可動式ルーバーを介して外気と一体化した屋外空間となっています。普通、建物の中央に、誰のものでもない屋外空間などつくりませんよね。デッキがなければ、各住戸の部屋ももう少し広くできたでしょう。

 でも、ここでは半ば必然的に屋外デッキを設けることになりました。その結果、子どもたちが自由に遊び回り、家族間のコミュニケーションを図れる空間を生み出せたのです。

 核家族が当たり前になっている世の中ですが、一方で、都市で再び一緒に住む家族も少しずつ増えています。個々の独立性を保ちながら、いかに集まって住む良さを味わえるようにするか。住み手の側に立った解決策を示すことが、私たち設計者の役割だと思います。
(宮原輝夫/宮原建築設計室)


「House TTN」

建築データ
  所在地: 東京都葛飾区
  家族構成: 父母、姉夫婦+子2人、妹夫婦+子1人
  竣工: 2005年4月
  敷地面積: 148.71平方メートル
  建築面積: 89.08平方メートル
延べ床面積: 213.68平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階建て
  施工: モノリス秀建
設計: (建築)宮原輝夫/宮原建築設計室、(構造)大内彰/S.FORM構造設計事務所
  写真: 宮原輝夫
連絡先
宮原建築設計室
  代表: 宮原輝夫
住所: :〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-23-1 ニュー・ステイト・メナー349
  TEL: 03-5304-5075
  FAX: 03-5304-5710
  E-MAIL: miyahara@miyahara-arch.com
URL: http://www.miyahara-arch.com/
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