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Housing File 75「つくばの森のアトリエ・住宅」

幼時から親しんだ野山の、豊かな自然と共存する家


森を切り開いて住むアトリエ併用住宅
南側外観。森を切り開き、樹木との位置関係を考えながら建物を配置した。右側の2階建ての棟が住宅。2階中央にテラスがあり、ほぼ左右対称の建物である。左側は平屋のアトリエになっている

2つの棟をつなぐエントランス
住居とアトリエの間がエントランスになっている。アプローチからホールまで同じタイル床で連続。正面のピクチャーウインドーで、一本の樹木の姿を切り取った

大きなワンルームのリビングスペース
リビングスペースはオープンでシンプルなワンルームに。デッキテラスに連続する南側は全面開口とし、緑豊かな環境を満喫する。床はカリン材。壁は建て主の手で塗装した

ギャラリーを兼ねた白い壁
LDKからエントランス方向を見る。画家である建て主夫妻の作品を飾るギャラリーとして、いたるところに大きな壁面をとっている。階段を挟んで1階北側は、パントリー(食品庫)や愛犬の足を洗う流しなどを設けたサービス空間としている

森に浮遊する気分を楽しむバスルーム
3面に窓を持つ2階北側のバスルーム。人目を気にすることなく開け放て、森の眺めを楽しみながら入浴できる

青空を切りとる2階テラス
2階中央部にある、天窓のあるテラス。寝室はこのテラスに面し、青空や星空を望むようになっている

大空間のアトリエ兼絵画教室
ご夫妻のアトリエであり、近隣の人々に絵を教える教室でもある。天井を高くし、高窓から北の均一な光を取り入れる

 画家のご夫妻が、結婚を機に建てたアトリエ併用住宅です。つくば市でもこのあたりは、古くからの商家や農家が立ち並び、自然が色濃く残る地域。ご主人にとっては子供のころから慣れ親しんだ土地で、夫婦で野菜を作って暮らしながら、心ゆくまで制作に取り組みたいというご希望でした。

 敷地は、候補地の森林を一部切り開いて使います。どこをどのぐらい宅地にするか、計画はそこから始まりました。

 敷地の位置は法令によってある程度限定されます。面積は今後の税負担を考慮し、必要最小限に設定しています。近隣からの制限はないので、周囲の自然とどんな関係を結ぶかが設計の主題になりました。

 つくばには電線が少なく、空の広さがとても印象的です。そして周囲は緑の森。道路を挟んで向かい合う竹林も美しく、そこから北へ吹く風の流れも大切にしたいと思いました。空と森と風、この3つが設計のポイントです。

 建物は真南に向け、東西南北の方位軸をそのまま軸線とします。道路に近い西側に絵画教室を兼ねたアトリエ棟、東側に住宅棟を置き、2つの棟を結ぶ形でエントランスを設けました。

 アトリエ棟は片流れ屋根のシンプルな形の中に大きな空間を確保。住宅棟はテラスと吹き抜けを立体的に配置させることで、家の中を風が自然に流れていくようになっています。


 力強い自然のただ中ですから、あまり大きく開いては、生活の安らかさが自然に侵されてしまいます。そこで、まず生活の領域を囲んでから、要所要所を開けていきました。家のあちこちから、様々な表情の空と森が眺められるようになっています。

 住居の1階はぽっかりとしたワンルームのリビングスペース。ここだけは南面を大きく開きました。連続するテラスを通して視界が広がっていきます。

 2階は中央にテラスを配置。このテラスはプライバシーの高い個室と大自然の緩衝ゾーンで、クッションとして機能します。寝室は中央のテラスに面し、テラスの天窓を介して空と森を眺めます。南面は目の高さだけ、パノラマ状に景色を切り取る横長の窓にしました。

 バスルームは北側に張り出し、三方に窓を開きました。視界が広がり、森の中に浮かんでいるような雰囲気が生まれます。

 一方のアトリエには、太陽の位置に影響されない安定した光が必要なので、北側の大きな高窓から天空の光を取り入れています。

 ご主人は、できることなら自分の手で家を建てたかったというほど、ものづくりには思い入れがあります。壁の塗装やデッキを張る作業は、ご夫妻に任せました。このことが、コストダウンにもつながっています。

 森の木々はほとんどが広葉樹です。夏は葉を茂らせて日陰をつくり、吹き抜ける風をほどよく冷やしてくれます。冬は葉を落とすので、日差しが家の中まで届いて床を暖めるはず。周囲の自然が、日光を自動的に調節してくれるでしょう。

 住宅は本来、外部の強い力から暮らしを守りつつ、その力と向き合う方法を探るものです。しかし、近年の都市部では、予測不可能な周囲の環境変化によって、生活が圧迫されかねません。そこで、外に向かっては閉じ、敷地の内側に向かって自己完結するような住空間を計画することが多くなっています。

 この、森に囲まれたアトリエ住宅では、住宅と外部環境との関係をとらえ直すことによって、自然と共存する、豊かな日常空間を獲得することができました。
(岩佐周明/岩佐設計工房)


「つくばの森のアトリエ・住宅」

建築データ
  所在地: 茨城県つくば市
  家族構成: 夫婦+犬1匹
  竣工: 2005年7月
  敷地面積: 397.77平方メートル
  建築面積: 154.24平方メートル
延べ床面積: 199.94平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  施工: 小薬建設
設計: 岩佐周明/岩佐設計工房
  写真: 岩佐設計工房
連絡先
岩佐設計工房
  代表: 岩佐周明
住所: 〒151-0053 東京都渋谷区代々木5-61-1-205
  TEL: 03-6407-2231
  FAX: 03-6407-2241
  E-MAIL: iwasa@mse.biglobe.ne.jp
URL: http://www.iwasa-arch.com/
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