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Housing File 76「西熱海の陶芸工房のある家」

傾斜地に浮かんだ船形の家、海を望み、陶芸を楽しむ


照明の中に浮かび上がる船形の建物
船を逆さにしたような曲面の建物が、湾曲した鉄骨柱に持ち上げられて宙に浮かぶ。柱の足元に組み込んだ、アプローチの船舶照明が建物を照らす

眺望の開けた南東側の外観
敷地は高台の傾斜地にある。2階に持ち上げた居住スペースのすべての部屋から、南に広がる海の眺望が開ける。細長い建物の各部屋に開口を設け、居ながらにして景色を楽しめるようにした

視線を閉じた北西側の壁面
山側の壁面の開口部は最小限に抑え、ガルバリウム鋼板を用いた外壁面の形状を際立たせている。グレーに塗装した四角い塔状の部分は玄関と階段室

逆V字形の柱が連なるリビングダイニング
内部空間も、外形の曲面をそのまま反映させた形にしている。柱は集成材を緩やかに曲げたもので、白いペンキ塗装をふき取って仕上げた。左手の壁面沿いに棚を設け、建て主親子が創作する陶器を展示できるようにした

青い「ベネチアンスタッコ」をアクセントに配した階段室
階段室から玄関を見る。壁に用いた「ベネチアンスタッコ」の青、玄関の靴入れの赤、飾り棚のグリーンと、鮮やかな色彩を要所に配している

階段室からリビングダイニングへ続く2階廊下
細長い廊下を抜けて行くと、リビングスペースに通じる。左手のオレンジ色の壁はスウェーデン製不織布張り。その向こうには水回りとキッチンを集中配置した

リビングダイニングに続く6畳の和室
2階の突き当たりは建て主の寝室。手前のリビングダイニングと一体化して使うことができる。正面のふすまは収納

 「遊んでください」。それが、建て主から設計を依頼された時の言葉でした。

 それまで東京と熱海にそれぞれ1軒の家を所有していた建て主は、四角いありきたりの家に飽き足らない思いを抱いていたのです。

 敷地は海の見える西熱海の高台にあります。住むのは建て主である60代の女性と海の好きな息子さん。当面は週末用のセカンドハウスとして利用しますが、何年かたったら、ここに永住することを視野に入れています。

 二人とも海が好きで、熱海という場所をとても気に入っていました。そこで、船をイメージさせる形態を宙に浮かべた家を提案しました。

 建て主が以前から持つもう一つの熱海の家は、眺望の良い敷地に建っていたにもかかわらず、リビングに座ると海が見えませんでした。また奥まった別荘地に位置していたため、日常生活を送るには不便でした。

 生活の本拠を熱海に置くことを考え、利便性を備えた土地を探した末に建て主が見つけたのが、西熱海別荘地にある今回の敷地です。部屋に居ながらにして海の景色を望め、しかも老後の使いやすさを踏まえた住まいとすることが設計の目標でした。

 生活空間をバリアフリー化して、室内から海の眺望を確保するために、日常の生活スペースをすべて2階に持ち上げました。幅3.7メートル、奥行き20.3メートルという細長い2階部分には、南西から順に、建て主が使う和室、リビングダイニング、キッチン、水回り、階段室、そして息子さんの洋室を並べています。

 曲面の壁はそのまま内部空間にも生かしました。逆V字形の集成材の柱が連なる様子は、教会のようにも感じられるんですよ。

 このように細長いプランにしたのは、どの部屋からも海が見えるようにするため。また南東へ下っていく傾斜地形に合わせ、最も高い部分に沿って建物を置いた結果でもあります。

 将来の生活を考えると言いながら、生活の中心を2階に設定しているのはなぜか、と思う人もいるかもしれません。

 確かに2階に行くには階段を上がる必要があります。でも、一度室内に入ればすべての行動をワンフロアで賄える。必要な機能が上下階に分かれているよりは、2階だけで行動が完結できる方が負担はかかりません。階段の上り下りが難しくなったときのことを考え、ホームエレベーターを設置できるスペースを用意しています。

 ピロティー(建物の1階で柱だけ残した部分)状の1階部分は、玄関へのアプローチとなります。湾曲した鉄骨柱が続く足元には、マリンランプを仕込みました。夜になるとイカ釣り船のようにアプローチを照らし出し、歩く人に高揚感を与えます。

 1階の玄関奥には、親子二人が趣味としている陶芸の工房を設けました。玄関や2階のリビングには造り付けの棚をしつらえ、二人の創作した陶器を並べられるようにしています。

 曲面を多用した住宅の施工には難しさがつきまといます。設計時には細部まで検討しますが、それでも現場で考えなければいけないことがいろいろと出てきます。しかし、大工棟梁の望月さんをはじめとする施工者は最後まで気持ちよく取り組んでくれたし、建て主も私たちを信頼し、自由に設計することを望みました。

 良い住まいづくりには、建て主、設計者、施工者という3つの立場の人間が互いに信頼し合う気持ちが欠かせません。私たち自身、人間関係の大切さを改めて実感できた住宅といえるでしょう。
(米村和夫+米村ふみ子/米村アーキテクツ スタジオ)


西熱海の陶芸工房のある家

建築データ
  所在地:

静岡県熱海市

  家族構成:

本人、子

  竣工:

2005年2月

  敷地面積:

481.17平方メートル

  建築面積:

93.69平方メートル

延べ床面積:

102.80平方メートル

  構造・規模:

木造一部鉄骨造り、地上2階建て

  施工:

小川工務店

総工費:

3200万円
設計: (建築)米村和夫+米村ふみ子/米村アーキテクツ スタジオ、(構造)白須正広/クレモナ建築構造研究所
  写真:

後関勝也/バウハウス ネオ

平面図
連絡先

米村アーキテクツ スタジオ

  代表:

米村ふみ子

住所: 〒351-0114 埼玉県和光市本町11-5-203
   TEL&FAX: 048-468-1447
  E-MAIL: info@yonemura-archi.net
URL: http://www.yonemura-archi.net
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