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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 80「CELLS HOUSE」

パズルのように組んだ3世帯の集合体、複数の中庭で光と風を確保


白と黒のコントラストが映える建物外観
住宅地内の角地に建つ。18メートル角の敷地いっぱいに建築空間を配し、平屋の居室群と中庭をパズルのように組み合わせた。外壁に用いたガルバリウム鋼板の黒、中庭のスクリーンとなる有孔折板(せっぱん)の白が対照的

有孔折板を通してあんどんのように光が漏れ出る中庭
居室の間に分散配置した4つの中庭は、有孔折板で外部と仕切られている。昼間は外部からの視線を遮断する一方、夜になると室内の光を透過させ、あんどんのように建物を浮かび上がらせる

各世帯で独立させた玄関まわり
左に祖母のための玄関、駐車場の奥に子世帯の玄関を用意した。祖母、母、子世帯という3つの住戸スペースに対し、それぞれ独立した玄関を設けている

開放的なつくりの子世帯リビング・ダイニング
子世帯住戸のリビング・ダイニング。敷地の北側に建つが、中庭に向かって全面開口を設けることで明るさを確保している。正面の壁の左右に見える扉は祖母と母の居住スペースに続く

中庭に面した子供室
子世帯の子供室。南側に続く中庭は、有孔折板で外部の道路と区切っている。安心して遊ばせられる空間だ

母の居住スペースにあるリビング・ダイニング
3世帯ごとに独立した居住スペースを用意している。左は母専用の中庭。奥に見える壁の向こうが子世帯のスペース。子世帯の中庭に面して高窓を設けている。中庭に面した窓の大きさや高さを変え、視線が合わないようにしつつ光と風を取り込めるようにした

母と祖母が共有する水回り空間
祖母の個室と母のリビング・ダイニングの間に洗面、トイレ、浴室を配置し、両側のスペースから使えるようにした


 18メートル×18メートルという正方形の敷地いっぱいに平屋建ての家を計画しました。建物内には廊下がなく、大小さまざまな矩形(くけい)の空間をパズルのように組み合わせて構成しています。

 セルと呼んでいる矩形の空間は全体で17個。このうち12個を居室、4個を中庭、最後の1つを駐車場に利用しています。どの部屋も中庭に面するように配置し、室内に光と風を取り入れるようにしました。

 敷地は札幌市内の住宅地にあり、南と西に道路の通る角地です。ただし南側は交通量の多いバス通り。敷地の南側に広い庭を設けても、外からの視線が気になって居心地はあまり良くなりそうにありません。

 そこで敷地いっぱいに建物を設け、外の道路や隣地に対して閉じつつ、分散配置した中庭に向けて開放的なつくりとしました。

 表通りの続きには古い商店があり、道路沿いまで建物が並んでいます。道路境界線ぎりぎりまで建物を建てる方が街並みにもふさわしいという意識もありました。

 今回の計画は、おばあさんとお母さんの家が建っていた2つの敷地を一体化し、そこに1軒の家を建てるというものでした。おばあさんとお母さんに加え、幼児2人のいる子夫妻の家族も同居し、4世代3世帯が暮らすことになります。

 建物は1つですが、ここではいわゆる完全分離タイプの間取りを採用しました。もともと別々に住んでいた家族ですから、無理に共同生活するより独立した住居を単純に集合させた方が暮らしやすいのではないかと考えたのです。

 各世帯には玄関と中庭を1つずつ確保しています。南側におばあさん、お母さんのゾーンを配置し、共用の水回りを間に設けました。北側は子世帯の住戸。お母さん、おばあさんの居室とは、リビング・ダイニングや納戸の扉越しに行き来できるようにしました。

 中庭では、異なる世帯の窓が向き合うことになります。これらの窓については大きさや位置に変化を与え、互いの気配を感じつつも直接目が合わないようにしました。

 設計を依頼された当初は、南と北に2つの棟を分割配置する案や、2階建ての上下で住み分ける案なども検討しました。でも、そうするとどうしても建物に表と裏ができ、住み心地に差が生まれてしまいます。私たちは、正方形の広い敷地を生かし、どの部屋も等価になるような住戸を目指したいと考えました。

 また2、3歳の幼児から80代のおばあさんまで家族の年齢構成が幅広いため、数十年のスパンで考えたフレキシビリティーの高さも欠かせません。いろいろ考えた結果、行き着いたのが、平屋建ての中に部屋を組み合わせた重箱のようなプランでした。各住戸の独立性を重視しながらも、扉を介してそれぞれを緩やかに結び付けているため、部屋の使い方の自由度も確保できています。

 多世帯の家族が一緒に住む場合、空間の共有の方法はいろいろあります。家の使い方も時期に応じてどんどん変わっていくでしょう。

 そうした中、将来を見据えて建物のフレームをしっかりつくるのが私たちの役目。後は自由に住みこなしていっていただければいいと思います。

(大河内学+郷田桃代/インタースペース・アーキテクツ)


CELLS HOUSE

建築データ
  所在地: 札幌市
  家族構成: 祖母、母、夫婦+子2人
  竣工: 2004年10月
  敷地面積: 328.33平方メートル
  建築面積: 175.50平方メートル
延べ床面積: 170.64平方メートル
  構造・規模: 木造、平屋建て
施工: 板垣建設
設計: (建築)大河内学+郷田桃代/インタースペース・アーキテクツ、(構造)腰原幹雄/木構造研究所
  写真: 安達治
平面図
連絡先
インタースペース・アーキテクツ一級建築士事務所
  代表: 大河内学
住所: 〒151-0062 東京都渋谷区元代々木町10-10 藤田ビル2 3階
  TEL: 03-5738-0396
   FAX: 03-5738-0397
  E-MAIL: info@inter-space.co.jp
URL:

http://www.inter-space.co.jp/

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