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Housing File 82「麻生の住宅」

ベランダに続くらせん階段、街や社会との接点を考える


らせん階段を設けた正面外観
2階のバルコニーに直接通じるらせん階段を設け、2階と外部空間を密接に結び付けた。道路際に設けた2台の駐車スペースと建物の間には枕木を並べた庭をしつらえ、街並みを考えて大きな木を植えている

木の架構を生かした居間・食堂まわり
柱と梁を表に見せた2階の居間と食堂。ワンルーム状の空間にリズムを与えている。細長い部屋の中に光と風を取り入れるため、奥に見える階段室の上部に天窓を設けた。階段室の奥は子供室

居間・食堂と2つの階段
天窓を持つ室内の階段室とバルコニーの外らせん階段(写真奥)を居間の両側に配置。家の中に2つの動線を生み出した

天窓のある階段室と北側の子供室

2階の北側に2人の娘のための子供室を細長く配置している。引き戸を開けて両側に引き込むと、階段室と一体の空間となる。階段室の天窓から欄間を通し、子供室へ光を取り入れるようにした


階段室から玄関方向を見る
建物1階の西側に直線状の廊下を設け、玄関と階段室を結んでいる。左手の寝室は障子の窓を介して階段室とつなげた

天窓からの光で明るさを確保した階段室
1階の階段室と廊下まわり。廊下の突き当たりは天井から床面までの窓とし、外とのつながりを意識させている。白い壁の内側は洗面所と浴室

木の質感と白い壁面を対比させた寝室
玄関のすぐ隣にある1階寝室。正面に見える障子の向こうに階段室、右隣の細長い引き戸の奥にウオークインクロゼットを設けている。左の壁面には2つの引き戸をつくり、それぞれ土間と廊下に出られるようにした

 最近、家のつくり方が外部に対して閉鎖的になりがちなように感じます。防犯に対する意識が強くなっているのでしょうが、まず外部との関係を遮断してから内側に開放的な空間を設ける家が多いですね。

 でも、私はむしろ外に対して開き、社会との関係を生み出すような家づくりを目指したいと考えています。

 隣家の人に声をかけたり、家の前の道路を少し幅広く掃き掃除したりする……。そんなちょっとした心遣いも、近所付き合いの中では必要ではないでしょうか。そして、そういう関係を生み出せる家を提供できればいいなと思います。

 麻生の住宅は、住宅地の一角に位置しています。夫婦と小学生の女の子2人という4人家族のために、在来工法による約100平方メートルの2階建て木造住宅をつくりました。

 南北に細長い136平方メートルの敷地に対し、長方形のシンプルな建物を北側に寄せて配置しています。1階に寝室と浴室、2階に食堂・居間と子供室をそれぞれ設けました。

 外との関係を生み出す仕掛けとなるのが、外から2階のバルコニーへ直接上れるようにしたらせん階段です。2階の居間は日がよく差して気持ち良いものですが、庭に出るためには内部の階段を使って遠回りする必要があります。居間と庭を直接つなぐ接点を生み出せないかと考え、直通のらせん階段を着想しました。

 実はこの階段には鍵をかけていません。誰でも気軽に上がって来られます。朝などは、子供たちの友人が階段を駆け上がって呼びに来るそうです。

 鍵がなくて不安ではないかという質問はよく受けます。でも住み手によると、らせん階段があることで普通の家とは違う楽しい生活シーンが生まれているそうです。たとえば、2階にキッチンがあるのに庭で焼き肉パーティーを開ける。「らせん階段がなければこの家は成立しないと思う」、と言っていただけるのはありがたいことですね。

 外とのつながりを生み出す設計作業には、程よいさじ加減が必要です。家の中と外部があまりに近すぎても居心地悪いでしょうし、立地によって外と内の適切な距離感も変わります。

 直通のらせん階段は、落ち着いた住宅地という立地を踏まえた回答です。さらに、駐車場と建物の間に木を植え、ちょっとした緩衝空間を確保しました。これに対して以前、工場と住宅の混在する地域に家を建てた時は、直通の階段ではなく、外に対して視界の開けたベランダを設けることで同様の効果を考えました。

 さて、建物の内部は、居間の奥にトップライトのある階段室を配し、細長い家の中に光と風を取り込むようにしています。子供室は2階の階段の北側に用意しました。引き戸を開けて戸袋に引き込むと、階段室を介して食堂や居間と一体化します。

 この引き戸の上部は障子を入れた欄間にしました。引き戸を閉めた状態でも、障子を通して階段室のトップライトから光が差し込むようにしています。

 私たちの仕事は、住み手にとって良い居心地をつくることだと思っています。建物の内部だけで、住宅としての機能を果たせばよいのでしょうか。建物を囲む外の部分を含めて街並みや社会との関係を考えることによって、居心地はより高まると思っています。

 居心地の良さを生み出すために、今、一番関心を持っているのがそのような建物の外の部分です。

 建築の設計とは、まず土地を与えられるところから始まります。言い換えれば、地域や社会との関係をデザインできるのが建築という仕事の特徴でしょう。そこでどういう答えを出すかが問われているのだと、常に意識しています。
(佐藤重徳/佐藤重徳アトリエ)


麻生の住宅

建築データ
  所在地: 神奈川県川崎市
  家族構成: 夫婦+子供2人
  竣工: 2001年9月
  敷地面積: 136.27平方メートル
  建築面積: 54.32平方メートル
延べ床面積: 101.87平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
施工: 山洋木材
設計: 佐藤重徳/佐藤重徳アトリエ
  写真: 石橋敏弘
連絡先  
 

佐藤重徳アトリエ

  代表: 佐藤重徳
  住所: 〒083-0055 東京都府中市府中町1-30-2 101
TEL・FAX: 042-366-2523
E-MAIL: sato-atelier@rio.odn.ne.jp
URL: http://www2.odn.ne.jp/sato-sigenori/
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