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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 84「東・佐藤邸」

親密さを生む距離感を演出、古本屋のようなライブラリーを持つ家


グラフィカルに窓を配置した外観
グラフィカルに窓を配置した外観

ほぼ直方体の建物のファサードに、1つずつ形の違う窓を設けて変化を与えた。10センチ角の小さなH型鋼を並べた構造を採用しているため、薄い壁の中に柱が収まっている


凹凸のないすっきりした空間を確保した1階予備室

1階の予備室。右の茶色い壁の背後にある帯状の空間に浴室と階段を収め、広い長方形の居室スペースを生み出した。奥に見えるテラスには、将来エレベーターを設置できるようにしている

凹凸のないすっきりした空間を確保した1階予備室

ライブラリーとの連続性を意識した2階のLDK
ライブラリーとの連続性を意識した2階のLDK

2階のリビングからキッチン方向を見る。3階ライブラリーの床は低めに設定し、リビングまわりとの親密感を得られるようにした。右の壁にしつらえたキッチン収納とライブラリーの書棚も空間の連続性を印象づける


ステンレスのテーブルと一体化したキッチンまわり

オープン式のキッチンの延長にテーブルを設けている。建物の中央に設置したトップライトからの光がテーブル面を照らし出す

ステンレスのテーブルと一体化したキッチンまわり

ライブラリーとスキップフロアで続く寝室
ライブラリーとスキップフロアで続く寝室

ライブラリーから短い階段を上がったところが寝室。寝室には引き戸を付けている。35センチという本棚1段分の高さが空間全体の高さ方向のモジュールにもなっている


浴槽を縦長に配置した浴室

幅90センチの帯状スペースに水回りを収めたため、変則的な配置を採用した浴室。「多少使いにくい面はありますが、居住スペースをできるだけ広く確保しようという方針を、建て主夫妻が理解してくださいました」

浴槽を縦長に配置した浴室

洗面所とトイレで共用する洗面器
洗面所とトイレで共用する洗面器

洗面所とトイレの壁をなくし、1つの洗面台を両側から使えるようにしている。限られたスペースに洗面台が2つあるのはもったいないと、話し合いの中から生まれたアイデア


 3人でTHT Architectsという設計事務所を共同主宰している時から担当していた住宅です。建て主は、結婚を機に土地を探して新居を建てることになった夫妻です。

 設計に当たって出された条件の1つは、たくさんの蔵書を収める書庫(ライブラリー)が欲しいということでした。京都の喫茶店や古本屋さんのような空間にしたい。そんなイメージをご夫妻は描いていました。

 ライブラリーといっても、独立した部屋にするか、ほかの居室と一体感を持つ空間にするか、様々な考え方があります。複数の提案を示していくうちに、おおらかな雰囲気を望む建て主の気持ちが分かってきました。そこで、ライブラリーを介して上下階の空間が緩やかにつながる現在のプランを提案しました。

 建物は、細長い敷地いっぱいに四角形の箱を置いています。

 28平方メートル弱という限られた建築面積の中で、できるだけ伸びやかな空間を得るため、各階の居住スペースを中央にまとめて確保しました。建物の長辺に沿って幅90センチの帯状空間を設け、ここに、水回りと階段、収納を収めました。対面には棚板を並べ、書棚とキッチンの収納に利用しています。

 このように家をサポートする機能を両サイドに集約することで、凹凸のない、奥行き7.55メートル、間口2.65メートルという一まとまりの居住スペースを確保したのです。

 この空間は、1階は土間の予備室としています。将来は店舗を開くかもしれないからと用意したスペースで、間仕切りを付けることも可能です。今は自転車などを置く場所として使っているようですね。

 2階にはLDK、3階にはスキップフロア状にライブラリーと寝室を配置しました。ライブラリーは吹き抜けを介して下階のLDKとつながるようにしています。

 ライブラリーとリビングは空間の一体感を感じ取れる一番気持ちの良い場所です。両者のつながり方には、設計の際も細部まで気を配りました。カギとなるのは、ライブラリー床面の高さです。

 実は、ライブラリーの床面はギリギリまで低く設定しています。キッチンとライブラリーの間の階高は2.35メートル。キッチンに立つとやや低いと感じられる高さです。ライブラリーからLDKにいる人へ直接物を手渡しできるような距離とすることで、空間の親密性を高めました。

 一方、ライブラリーは天井高3.5メートルの高さを確保しました。壁に設けた35センチの本棚10段分の高さです。リビングからライブラリーに視線が抜け、広がりを感じられるようにしています。

 住宅を設計する際には常に、自分が当初イメージできなかったものを生み出したいと思っています。建て主がどういう雰囲気を望んでいるかを把握し、建て主の気持ちになって考えていくのです。

 本当に建て主自身に成り代わって考えることは不可能ですが、建て主の気持ちに近づくことでこれまでにない発想も生まれます。自分の発想だけにとらわれると、どうしても限界があるのです。

 設計は、建て主とのセッション(共同作業)で行うもの。そのためにも、建て主との対話を大切にしています。
(角倉剛/角倉剛建築設計事務所)

東・佐藤邸

建築データ
  所在地: 東京都渋谷区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2005年6月
  敷地面積: 49.4平方メートル
  建築面積: 27.99平方メートル
延べ床面積: 81.20平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上3階建て
施工: 群峰工業
設計: (建築)角倉剛+八尾廣+大野高志/THT Architects Inc.(当時)、(構造)山田泰範/山田構造設計事務所
  写真: 角倉剛
連絡先  
 

角倉剛建築設計事務所

  代表: 角倉剛
  住所: 〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-12 湯島ハイタウンB-1001
TEL: 03-3813-7036
FAX: 03-3813-9363
E-MAIL: sumikura@ea.mbn.or.jp
URL: http://www18.ocn.ne.jp/~sumikura/
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