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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 86「牟礼の家」

硬い外皮に柔らかな内部空間、場をつくりだす形と素材感


コンクリートで最大ボリュームを確保した建物外観

古い住宅地の角地に建つ。斜め向かいに農地があり、視界が広く開けている。建ぺい率などの法規制で許される最大の外形をコンクリートで確保し、2階テラスなどをつくることで床面積を調整した


ロフトを設けた2階LDK

生活の中心となる2階のLDK。上部にロフトを設けた。建物の外形をつくるコンクリートの外壁と屋根に対し、内部は木造として将来の生活変化にも対応できるようにしている


コンクリートの天井に覆われたロフト

リビングの上にしつらえたロフト空間。斜線制限によって生じる屋根の斜めのラインがそのまま室内空間に現れている。打ち放しコンクリートの表面は型枠の跡を残し、粗い質感を与えた


トップライトのあるらせん階段

玄関と一体に設計したらせん階段。北側に位置するが、トップライトがあるためいつも明るい。「説明をしなくても、家に来る人は玄関を入るとすぐ階段を上ってくる」と、建築主でもある設計者の原村氏


1階東側に位置する寝室

フローリングに床暖房を備えた寝室。写真右の壁面に設置した収納は、その向こうにある水回りからも使えるようになっている


天然石張りの洗面室・浴室

玄関の続きにある洗面室と浴室。水回り空間は「気持ち良さがダイレクトに皮膚に伝わるため、設計の際に一番気を遣う場所の一つ」(原村氏)。面積もゆったり確保して、のびのびと使えるようにした


 74平方メートルの敷地に建てた自邸です。夫婦と2人の子どもで住んでいます。

 建物の外形は、50パーセントの建ぺい率や斜線制限など敷地にかかる法規制の下で得られる最大のボリュームを確保すると同時に、敷地内にテラスと駐車スペースを設けることができるように決定しています。家の大枠となるこの外形部分は鉄筋コンクリートでつくりました。

 一方、生活する内部、つまり床、開口部、什器(じゅうき)などは木造としています。室内にはしっかりとした間仕切りを設けず、家具や空間の凹凸で生活の場を設定するようにしました。2人の子どもがまだ小さいこともあり、個室も用意していません。

 生活の中心となる2階はロフト付きのLDK。ロフトによってダイニングまわりとリビングの天井高を変え、1室の空間を緩やかにゾーニングしています。部屋の中心には、食事のほかに勉強や作業のできる丸い大きなダイニングテーブルを置きました。

 1階は北側に玄関を設け、2階へ続くらせん階段と一体化した空間にしています。玄関の並びには、同じ天然石を床に張った洗面室と浴室を西側に細長く配置しました。

 東側は寝室です。洗面室との間は、両側から使える収納によって緩やかに仕切りました。収納の下部を浮かせて靴置きとして利用しているため、寝室と洗面室は床のレベルでつながっています。

 玄関と階段室は兼用で、洗面所と寝室は連続性を持たせた空間に。限られた空間を有効に使うために、空間を機能や仕切りで隔てることをせず、形や奥行き感で使い分けています。こうした家で生活することによって、子どもには居場所のつくり方を分かってほしいと考えています。

 家族との距離感は、家の中に壁を設けてつくり出すものではありません。開け広げた空間の中で自分の時間を過ごせる場所、家族の中で自分の領域として認識できる場所をつくり出してほしい。そうした個々の領域は、天井の高さの違いや明暗の差、広い部屋の中にある窪みのような空間などに見つけていけるはずです。

 将来、子どもたちが成長してプライバシーが欲しくなったら、自分たちにとってプライバシーとは何かを考えることによって、本当に必要なものが分かるのではと思っています。そのためにも、改装や配置替えのプランをいろいろと考えられるような器を用意しておくことが大切です。

 また、私はいつも家を設計する際に、ゆとりやルーズさを空間に取り入れるよう意識しています。新しさや高い精度による緊張感を覚えるような家は窮屈です。蹴飛ばしても大丈夫なタフな家、多少散らかっていたり、いい格好をしなくても落ち着ける場所を提供したい。

 例えば、ムクの素材や自然素材は緊張感を与えません。多少傷や汚れがあること自体が自然の状態なので、それを味として感じられるからです。愛着を持ってずっと使っていただけるので、建築主にもできるだけお勧めしています。

 ですから、自宅でもこうした素材を中心に使いました。コンクリートの躯体(くたい)も、工業製品のようなきめ細かな仕上げとせず、手づくりの粗っぽさをそのまま表現しました。針葉樹の合板を型枠に用い、木目をそのまま見せるようにしています。

 一見、未完成のようにも見える家だからでしょうか、壁に子どもの絵などをいろいろ飾り、生活に必要な物を出しっぱなしにしていても気になりません。そして、皆が自然とリビングに集まってくる。互いに見える場所にいることが、今の私たち家族にとって安心なのです。
(原村智行/エッグスアーキテクツ)

牟礼の家

建築データ
  所在地: 東京都三鷹市
  家族構成: 夫婦+子2人
  竣工: 2004年3月
  敷地面積: 73.80平方メートル
  建築面積: 33.57平方メートル
延べ床面積: 58.91平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、地上2階建て
施工: サンウッド
設計: 原村智行/エッグスアーキテクツ
  構造: 諏訪部建築事務所
  写真: 原村智行
連絡先  
  エッグスアーキテクツ
  代表: 原村智行
  住所: 〒140-0011 東京都品川区東大井2-27-23-102
TEL: 03-3761-6007
FAX: 03-3760-6052
E-MAIL: eggs@plala.to
URL: http://www11.plala.or.jp/eggs-arc/
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