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Housing File 88「H×4」

旗ざお状敷地の活用術、2つの階段で奥行き感を生む


“さお”に突き出す玄関まわり

北側道路に向けて細長い土地が延びる旗ざお状の敷地。“さお”部分に突き出すように、吹き抜けの玄関を設けている


玄関から2階へ直結する階段

玄関から続く階段が直接、2階リビングダイニングへと導いていく。限られた面積を有効活用しつつ、建物内の奥行き感を生み出すための工夫だ


白をベースにまとめたリビングダイニング

屋根形状をそのまま反映させた天井を持つ2階リビングダイニング。左手のらせん階段は屋上の月見台に続く。細長い開口を開けた正面の壁の向こう側は、地下まで一気に下りる階段


リビングダイニングに隣接する光の吹き抜け

らせん階段の側から、地下まで下りる階段の吹き抜け空間を見る。2階の床レベルにはポリカーボネートの板を敷き、リビング横の小空間として利用できるようにした


2階から地下までを結びつける階段

南面する壁の開口とトップライトから日差しの入る階段室。地下階まで明るさを確保できるように、光の通り道として活用している。鉄骨製階段の踏み板には、柔らかさを出すために木を用いた


1階の寝室

1階寝室は、隣接する水回りから床面を2段分低くして、2.5メートルの天井高を確保した。フローリングは、奥様の“嫁入り道具”として両親が用意したもの。階段の下の空間は書斎となっており、寝室との間の開口は引き戸で開け閉めできる


地下階の個室

2階からの直通階段を下りきったレベルに設けた地下室。床に用いた白のビニールタイルが階段室に差し込む光を反射し、明るい室内空間を生み出す


 旗ざお状の敷地に建てた家です。北側の道路から幅2.5メートルの細長い“さお”部分を通り、家へとアプローチします。

 普通なら、“旗”に当たる長方形の部分だけで建物を完結させるでしょう。でも、それでは欲しい面積を確保できないので、“さお”に当たる土地に玄関を細長く突き出させた建物にしました。

 建て主は30代前半のご夫妻。それぞれ仕事をしている多忙な方で、将来はお子さんができることを想定しています。地下室が欲しい、ご主人の書斎や屋上に出る階段を確保したい、といった点が家づくりに当たっての要望でした。

 周囲を家で囲まれた狭い土地ですから、外部に開いたつくりとすることは難しい。でも、狭さを意識させず、建物に入ると広さを感じてもらえるようにしたいと考えました。

 日当たりが良く、広い面積を確保できる2階にリビングダイニングを置き、1階に個室と水回りを配置するという構成は自然に決まりました。問題は、建物内の動線をいかに無駄なく設定するか。その解決策として出てきたのが、細長く飛び出した玄関からいきなり2階へと導く空間構成でした。

 玄関からまず2階レベルへと導き入れ、そこから地下まで一気に下りる階段を設けました。こうすることで、1階個室の面積を広く確保できるうえ、“さお”部分の土地も有効活用できます。

 また同時に、感覚的な広さを生み出す意図もありました。玄関と直接つながった2階リビングには、1階のような感覚を持つものです。一方、個室は2階からアプローチするため、1階にありながら玄関との距離感を確保できる。落ち着ける環境を得られるのです。

 実は、こうした手法は、以前在籍した設計事務所で手がけた賃貸マンションでも活用したことがあります。

 集合住宅の場合、人の出入りが多い1階エントランス横の住戸は人気が低くなりがちですよね。そこで、エントランスを2階に持っていって、1階の住戸でもエントランスや道路からの心理的な距離感を得られるようにしました。その結果、1階の住戸もすぐ入居者が決まりました。

 この家のもう一つの特徴は、2階から地下階まで通じる吹き抜けの直線階段を、最も採光条件の良い南側に設けていることです。階段室には、地下階まで光を落とす役割も兼ねさせています。

 階段の上部に位置する2階廊下の床面には透明のポリカーボネートを敷き、下階へ光が通るようにしました。さらに、階段と、リビングダニングや個室との間には、細長い開口を設け、室内にも十分な光が入るようにしています。

 この家では各部屋を完全に閉じていません。ご主人の書斎には階段下のスペースを充てています。階段室が各部屋を結び付け、それぞれの部屋にいても互いに気配を感じられるようにしているのです。

 こうしたつくりにすると、音はある程度漏れるかもしれません。でも、だからこそ、「大きな音を出さないようにする」という気遣いも大切です。家の仕組みとして、そういう家族関係をはぐくめる空間をつくりたい、と考えたのです。
(石川淳/石川淳建築設計事務所)

H×4

建築データ
  所在地: 東京都品川区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2006年5月
  敷地面積: 89.78平方メートル
  建築面積: 44.01平方メートル
延べ床面積: 111.35平方メートル
  構造・規模: 在来軸組木造、地下1階・地上2階建て
施工: 進栄興業
設計: 石川淳/石川淳建築設計事務所、(構造)井上元治/井上建築構造設計室
  写真: 石川淳
連絡先  
  石川淳建築設計事務所
  代表: 石川淳
  住所: 〒165-0023 東京都中野区江原町2-31-13 第1喜光マンション106
TEL&FAX: 03-3950-0351
E-MAIL: jun-i-ar@sa2.so-net.ne.jp
URL: http://WWW.jun-ar.info/
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