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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 89「茅ヶ崎の家」

日本列島の形で、光と風と緑を呼び込む2世帯住宅


金属と天然木を組み合わせた外壁

南側外観。来客好きの父親のために、バーベキューを楽しめるよう、室内と庭をデッキでつないだ。外壁は、建て主が自分で手入れできる範囲だけを天然木張りに、それ以外はメンテナンスフリーのガルバリウム鋼板とした


庭まで視線が抜ける玄関ホール

玄関からの見通し。突き当たりのピクチャーウインドーの向こうには、建て主がススキを移植している。写真左手は2階子世帯に至る階段


自然素材でつくられた室内
「くつろぎのスペース」と名付けられた2階子世帯のLDK。内装は無垢(むく)のフローリングと珪藻土(けいそうど)。写真正面は階段上の吹き抜け。左手奥は中2階に続く

豊かな緑を楽しむ北側の窓
敷地は緑に恵まれているので、北側にも積極的に眺めを楽しむ窓を設けた。2階のダイニングの窓は梢(こずえ)に包まれ、森の中にいるような気分が味わえる

リビングの一部としての仏間
両親の重要な要望は、仏間を設けること。そこで、リビングと同じ空間の中に畳コーナーをつくり、床の間風の飾り棚と組み合わせた収納に仏壇を収めた

中庭に面した明るい浴室
1階浴室・洗面室は、南側のデッキと連続する中庭に面している。北方向も廊下を介して視線が開けており、庭の眺めを楽しみながら入浴できる

 敷地は茅ヶ崎の山手側にあり、お寺や神社に近接した緑豊かな環境です。敷地の中にも稲荷社や土塁が残っており、先祖代々の歴史を感じさせます。ここに建っていた古い家を一部取り壊し、親子2世帯の住まいに建て替えることになりました。

 敷地は広いものの、外周に水路が流れているので、接道面は限られます。敷地内には既存の建物も一部残っています。また、もともとの植生を、できるだけそのまま生かしたいとも考えました。以上の理由から、建物の配置はある程度限定されます。

 そこでまず、東西方向に長く主空間を置き、その東端から北の接道面に向けてカーポートを、西端から視界の開ける東南方向に向けて寝室を、それぞれ斜めに張り出しました。東西の間口はかなり長くなるので、途中に中庭を設けます。結果として、ちょうど日本列島のような配置の建物になりました。

 2つの世帯は玄関を共有し、内玄関で上下階に分かれます。各階で生活が完結できるようになってはいますが、キッチンも浴室も、2階子世帯は簡易に、1階親世帯を充実させました。親子仲がよく、集まって過ごすことが多いからです。

 また、前述のように緑に恵まれた敷地なので、住まいのあらゆる部分に外部とのつながりを持たせました。1階「かたらいの間」は南面にデッキが続き、庭と一体に使えます。デッキは中庭まで引き込まれ、ガラス張りの浴室に光と風を呼び入れます。

 かつての建物は北側に背を向けていましたが、桜やツツジが繁茂する、せっかくの眺めを楽しまない手はありません。そこで、北面にも各所に窓を設けました。それぞれ視線の向きも景色の切り取り方も異なり、それが各空間の特色になります。

 建物の一部を張り出したりへこませたりすることは、採光・通風の確保にも有効です。私はどんな住宅でも、全室に2面以上の開口部を設けることを目指して設計しますが、ここでは3面、4面の開口が実現できました。

 住宅の温熱環境は、私にとって大きなテーマの一つ。2面採光・通風のほか、玄関には風除室(ふうじょしつ)を設け、外部からの冷気・暖気の侵入を防ぎます。さらにこの住宅では、オリジナルの躯体(くたい)乾燥輻射(ふくしゃ)暖房「どまだんシステム」も採用しました。これは、床下や壁の中の結露を防ぎ、建物の寿命を延ばすことを目的に開発したものですが、家全体に極端な温度差が起きなくなり、結果的に人間の健康にもつながります。

 こうした試みが認められたのか、ここ数年、高齢者を含む2世帯住宅の設計を数多く依頼されます。世帯が複数になれば、それだけ設計の課題も複雑になります。家族の関係はもちろん、世代による志向や考え方の差異、将来の生活設計などなど、各家庭による違いも大きい。経験を重ねることで、少しずつ設計やコミュニケーションの手法が蓄積されてきたように思います。

 少子化や非婚者の増加に伴って、これから新たな大家族化、多世帯・多世代住宅化の流れが起きるのではないかと感じます。多様な人間関係を反映させつつも、その変化に耐え、生き永らえる力を持った住宅をつくっていきたいと考えています。
(長谷川順持/長谷川建築デザインオフィス)

茅ヶ崎の家

建築データ
  所在地: 神奈川県茅ヶ崎市
  家族構成: 夫婦+両親
  竣工: 2005年2月
  敷地面積: 499平方メートル
  建築面積: 120.5平方メートル
延べ床面積: 181.6平方メートル
  構造・規模: 木造軸組工法+SE工法、地上2階建て
施工: 加賀妻工務店
設計: 長谷川順持、石引浩子/長谷川順持建築デザインオフィス
  写真: インタラクティブコンセプト
連絡先  
  長谷川順持建築デザインオフィス
  代表: 長谷川順持
  住所: 〒104-0033東京都中央区新川2-19-8-7F
TEL: 03-3523-6063
FAX: 03-3523-6066
E-MAIL: jun-architect@office.email.ne.jp
URL: http://www.interactive-concept.co.jp/
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