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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 91「代々木上原の家」

細長い敷地に細く建つ、モニュメントのような都市住宅


細いコンクリート面を見せるミニマルな外観

南側外観。西側隣地との境界に高さ5メートルの擁壁がある。建物は敷地の奥に向かって斜めに広がり、道路には細いコンクリート面だけを見せる。左側を覆う鋼板は1階部分が駐車場の建具、2階部分がテラスの手すりで、1階部分は全開可能


隣地の擁壁と向かい合う配置

駐車場から庭の奥を見る。敷地の突き当たりまで真っすぐ見通せる。写真左手は隣地の擁壁。建物は擁壁と向かい合うように配置し、奥行きを生かした長い開口部を設けた


奥行きのある2階リビング

2階リビング、南から北の見通し。ダイニングテーブルの奥がキッチン。その向こうの北端のトップライトの下に、地下まで続く階段がある。開口部は全長10メートル超。床と同じレベルから開いているので、内外の空間が連続しているように感じられる


視線を調節し光を入れる開口部

2階リビング、南側を見る。建物の南端にもトップライトがあり、その下は1階玄関に通じる階段になっている。写真右手の開口部の高さは床から1メートルほど。隣地の視線を遮りながら、空間の広がりと採光を得る


大きく上下するダイナミックな階段室
1階玄関から階段を見る。階段はいったん地下に下り、そこからまた1階、2階と上る。奥行きのある建物の距離感と、3層分の高さを生かしたダイナミックな空間。右手の壁はコンクリート打ち放し、左手はつやのある濃い紫に塗装している

玄関はコンクリートのアルコーブ

コンクリートの塊(かたまり)をくり抜いたようなエントランス。コンクリートに組み合わせた鋼板は、階段室と同じ黒に近い紫を、マットな質感で塗装している


 周辺は緩やかな起伏のある地形で、段々畑のように家々が建ち並ぶ、いかにも東京らしい住宅地です。敷地は、もと大きな家が建っていた場所を6分割したうちの一区画で、面積はちょうど20坪。いわゆる「狭小地」に該当するのでしょうが、設計当初は周囲も更地だったせいか、さほど狭さは意識しませんでした。

 それよりも目立ったのは、隣地に高さ5メートルもの擁壁(ようへき)がそびえていること。巨大なコンクリートの表面が、日光を受けて明るく光る様子が強く印象に残りました。この擁壁を敷地の特長ととらえ、積極的に利用しようと考えたことが、設計の原点になっています。

 また、この敷地のもう一つの大きな特長は「長さ」。間口5メートルに対し、奥行きは12.5メートルあります。この距離感を、最大限に生かしたいと思いました。

 そこでまず、細長い敷地をさらに細長く分割し、擁壁に向かい合うように建物を置きました。庭は南面の道路に向かって広がり、敷地の奥深くまで光を導き入れます。

 建物は地下1階・地上2階で、3層を結ぶ階段は東側の壁全面に沿って上下します。1階玄関に立つと、階段がいったん地下へ下り、そこからまた階上へ上っていく景色が見通せます。この階段室は、建物の長さと高さが同時に感じ取れる、象徴的な空間なのです。

 各階は空間を分割することなく、最小限の建具を設けただけ。階段同様、建物の端から端まで見通せます。居室・階段・庭のすべてにおいて、敷地の深い奥行きを目いっぱい使い切っているわけです。

 居室には、庭に面して全長10メートルに及ぶ横長の開口部を設けました。2階のリビングで東の壁を背にして座ると、床から庭へ視線が抜け、隣地の擁壁まで空間が連続しているように感じられます。敷地全体の広さが、生活空間の広さとして意識されます。

 建物は南に向かって薄くなり、前面道路に対しては敷地の間口の半分にも満たない、ごく細長い面を見せます。庭の前面は建具とテラスを兼ねた鋼板で目隠ししました。

 日本の住宅地では、敷地の南側を空け、間口いっぱいに家を建てるのが常です。それが積み重なって、よく似た建物がすき間なく並び、街が形成されていくことには抵抗を感じます。そこに一石を投じ、新たな風景となりうる建物にしたいと思いました。

 住宅は、住宅であるより前に、まず建築としていかにあるべきか考えます。住む人の要望にも応えなければなりませんが、それがそのまま建築の形態に表れていいとは思いません。建築は、個々の家族の生活より、はるかに命の長いものです。そうあってほしいと願っています。あたかも地面から生えてきたかのように、風景にしっかりと根ざす建築をつくりたいと思っています。
(新関謙一郎/NIIZEKI STUDIO)

代々木上原の家

建築データ
  所在地: 東京都渋谷区
  家族構成: 夫婦+子供2人
  竣工: 2006年2月
  敷地面積: 66.00平方メートル
  建築面積: 38.96平方メートル
延べ床面積: 109.79平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、一部鉄骨造りおよび木造、地上2階・地下1階
施工: 豊永建設
設計: 新関謙一郎/NIIZEKI STUDIO
  写真: 西川公朗
連絡先  
  NIIZEKI STUDIO
  代表: 新関謙一郎
  住所: 〒180-0004東京都武蔵野市吉祥寺本町2-12-3-402
TEL: 0422-22-2110
FAX: 0422-22-4110
E-MAIL: studio@niizekistudio.com
URL: http://www.niizekistudio.com/
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