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Housing File 92「稲城S邸」

コンクリートの門型壁が生む、気配を感じられる空間構成


門型のコンクリート造壁のまわりを木で覆った建物外観

構造壁と蓄熱体の役割を果たす鉄筋コンクリート造りの門型壁を建物中央に並べ、その周囲を木造で包んだ。屋根の一部は鉄骨造り。朝日を取り入れる一方で西日を遮るように建物をやや東向きに振って配置し、屋根面と壁の出っ張りでも採光を調整している


障子を利用した玄関

鉄筋コンクリートの門型壁を入ったところに玄関がある。内側に引き戸の障子、外側に木製の開き戸をつけた


各部屋への視線を確保した階段室
4つ並べた鉄筋コンクリートの門型壁の内部を階段室として利用している。コンクリート壁の間には各部屋とつながる横長の開口を設け、それぞれの空間を視覚的に結んだ

南面に大きな窓を設けた2階リビングダイニング

屋根の傾斜をそのまま反映させた天井面まで、南面いっぱいを窓としている。左側足元に見える細長い開口を通して、1階の居室の気配を感じられるようにした


建具や什器収納を多彩に盛り込んだリビングダイニング
コンクリート壁の間には障子の建具や什器(じゅうき)収納などを仕込んでいる。障子や窓下の棚などは木製建具の職人である建て主次男が製作した。階段室の上はロフト


コンクリートと木の肌合いを調和させた2階居室

2階東側の次男用個室。インテリア全体を通じ、硬質なコンクリート打ち放しの壁に床や壁まわりの木、障子の紙を対比させて、自然な柔らかみを与えている


 鉄筋コンクリート造りの門型の壁を中央に4つ並べ、周囲を木造で覆った2階建ての家です。コンクリート壁に囲まれた空間には水回りや階段をはめ込み、壁の両側に各階1つずつ居室を振り分けています。

 家族構成は、定年を迎える年代のご夫妻と90代の母親、そして30歳前後の次男です。1階の東西に母親の寝室と夫婦の寝室、2階の東西に個室とリビングダイニングをそれぞれ配置。各居室はすべて南面させ、通風も採光も同じような条件になるよう配慮しました。

 建物を特徴づける鉄筋コンクリート造りの壁は、熱環境と構造の両面で役割を担っています。

 空調の嫌いな奥様はエアコンをできるだけ使わずに、冬は石油ストーブ、夏は通風で過ごせるようにしたいという希望をお持ちでした。そこで、高い蓄熱性を有するコンクリートを利用することを考えたのです。例えば冬、日差しによって温められたコンクリート面は夜になると放熱し、室内の気温低下を抑えます。さらに断熱性の高い木造部分で空間をくるみ、室内の温熱環境を整えるようにしました。

 構造面では、コンクリート壁は地震時などに建物にかかる水平方向の力に対応します。木造部分は自重を支えるだけでよいため、建物中央部の壁の量は少なくて済みます。

 こうした構造を採用した背景には、各部屋に視覚的なつながりが欲しいという建て主の要望がありました。高齢で1日のほとんどを1階の寝室で過ごす母親の気配を、2階のリビングや1階の建て主夫婦の寝室からも感じられるようにしたい。そこで、階段室に面した各居室の壁面に横長の大きな開口を設け、視線がつながるようにしました。

 当初はすべて木造とすることも考えましたが、そうすると階段まわりに多くの壁が必要となり、大きな開口をつくれません。鉄筋コンクリート造りの壁を建てることによって、コンクリート壁の間に大きな開口を確保できました。

 将来は次男がこの家を出て、長男一家が戻ってくることを想定しています。そのとき2世帯住宅として利用できるようにすることも、設計の大きなポイントとなりました。

 2世帯住宅とする場合は、1階を建て主夫婦、2階を長男一家が使います。1階は、現在母親の使っている寝室を夫婦の寝室とし、西側の部屋にキッチンをつくってリビングとして利用します。そのため、現在収納となっている1階夫婦寝室の北側にガスを引けるように準備しました。

 2階の長男一家のスペースでは、現在次男が使っている部屋を2つに区切って長男夫婦と子どもが使うことも想定しています。次男の部屋に2つ扉を設け、階段室とリビングダイニングからそれぞれアプローチできるようにしているのは、このような将来対応を考えたためです。

 なお、この家では木製建具や造り付けの収納棚を積極的に活用しています。例えば、居室と階段室の間に設けた開口部には3枚の引き違い障子を仕込みました。実は、これは木製建具の職人である次男が製作したものです。

 私自身、以前は木造造作の簡単な工事や家具製作などを手がけ、今でも照明器具などを分離発注してこだわりの家づくりを進めています。今回も、せっかく次男が建具職人なのだからとコラボレーションすることにしました。既製品を選ぶのとはひと味違う家づくりによって、より愛着の持てる住まいを提供したいと思っています。
(清水勝広/清水勝広建築工房)

稲城S邸

建築データ
  所在地: 東京都稲城市
  家族構成: 夫婦+母+子1人
  竣工: 2006年2月
  敷地面積: 147.52平方メートル
  建築面積: 58.88平方メートル
延べ床面積: 113.46平方メートル
  構造・規模: 木造、一部鉄筋コンクリート造り、鉄骨造り、地上2階建て
施工: 本間建設
家具・木製
建具製作:
サンダンス・ウッドワークス
設計: 清水勝広/清水勝広建築工房
  写真: 清水勝広建築工房
連絡先  
  清水勝広建築工房
  代表: 清水勝広
  住所: 〒169-0074 東京都新宿区北新宿3-9-16 白川ビルディング地下1階
TEL: 03-5925-3234
FAX: 03-5925-3235
E-MAIL: info@katsu-archi.com
URL: http://www.katsu-archi.com/
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