TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 94「市川の家」

日差しと空気を制御する家、深いひさしと空気をつなぐ吹き抜け


奥行きの深いひさしによって陰影を生む南側外観

南側の隣地は駐車場で視界が開けているため、そちらに向けて大きな開口を確保している。1階と2階の南壁面から奥行き1.1メートルのひさしを突き出し、日射をコントロールできるようにした


北の道路側から見たフラットな外観

旗ざお状の敷地で、北側道路から細長いアプローチを通って玄関にアクセスする。風致地区に位置するため、敷地境界線から1メートル以上離して建物を建てる必要があった


上下階の空気の通り道となるリビングの吹き抜け
吹き抜けを介して各部屋の空気が行き来できるようにしている。内装には自然素材を多く利用。床には厚さ24ミリのパインのムク材を使用し、壁には建て主家族も参加して珪藻土を塗った

2階回廊から吹き抜けを見下ろす

2階の回廊から吹き抜け方向を見る。左奥に見える小窓は子供室に通じる。互いの気配を感じさせるとともに、風の通り道を確保するためのものだ


ロフトのある2階子供室
2人の男の子用の部屋。造り付けの机の上に細長いロフトを設けた。可動什器(じゅうき)を用意し、現在はワンルーム状の部屋を将来的には緩やかに区分できるようにしている

2階主寝室ともう1つの子供室

現在は夫婦と1歳の女の子が寝ている部屋。将来はやはり可動什器で2つに仕切れるようにした


主寝室と子供室を区切る可動什器
高さ1800ミリでつくった可動什器。梁(はり)を露出させた天井は2.6メートルを超える高さを持ち、2つの空間が可動什器の上でつながる

 自然素材を用い、空気の流れを重視した空間構成によってなるべくエアコンに頼らないつくりとする……。私が住宅を設計する際、いつも心がけていることです。

 大学時代の同級生に依頼された市川の家でも、こうした考えを基に設計しました。

 そのための配慮の1つが、深い軒の採用です。1階のリビングや2階の子供室の南側に大きな窓を設け、その先に1.1メートルの奥行きを持つひさしを用意しました。

 太陽高度が高い夏はひさしが日を遮り、太陽高度の低い冬になると家の中まで日が差し込みます。これは昔から日本家屋で使われていた手法ですね。2階のバルコニーの手すり部分をルーバー状にしたのも、同じような効果を考えたためです。

 なお、深いひさしがあると、雨が降っているときでも窓を開け放しにできます。雨が斜めに降り込まない限り洗濯物も干せますから、非常に便利なんです。

 一方、日差しとは関係ない北側の面は、深い奥行きを持つ南面とは対照的につるりとした外壁としています。こちらは滑り出し窓とし、やはり雨でも開けられるようにしました。

 エアコンに頼らないようにするためのもう1つの工夫は、風の通り道を確保することです。部屋と部屋がどこかでつながり、一筆書きのように家全体の空気がつながるようにする。それぞれの部屋には2カ所以上の開口をつくり、風が通るようにしています。

 さらに、家の中央に設けた吹き抜けが、建物全体の空気の通り道になります。夏は1階から2階に空気が抜け、冬は天井に取り付けたファンで空気をかき回します。吹き抜けがあると、冬は暖かい空気が上に抜けて1階が寒くなると思われがちですが、空気をかき回すようにしておけば、輻射(ふくしゃ)熱による蓄熱暖房1台で十分な暖かさを確保できます。

 面積の余裕がないので、当初は吹き抜けがなくて広い個室を確保する案も考えました。しかし、吹き抜けを設けることによって、視覚的にも空気の流れの面でも建物に一体感が得られます。建て主と相談した結果、ほかの個室は小さくなってもいいから吹き抜けはつくろう、ということになりました。

 住み手は、夫婦と小学校低学年のお兄ちゃん、幼稚園の弟、1歳の妹という5人家族です。

 1階は、吹き抜けを持つリビングとキッチン。2階は吹き抜けの両側に大きな部屋を1つずつ置きました。それぞれ可動什器で2つに分割することができ、西側の部屋は2人の男の子、東側の部屋は夫婦と女の子が使います。

 内装には木を多く利用しました。また、1階リビングの壁はプラスターボードの上に珪藻土(けいそうど)を塗ったものです。職人さんに方法を教わり、建て主家族と一緒に壁を塗りました。

 特に子供のいる家の場合、塗り壁にすると汚れて大変という心配もあるでしょう。でも、住み始めてから半年以上たち、「汚れた部分は上から塗り直せばいいのでむしろ良かった」と建て主は言ってくれています。

 実は、私の手がける家では、しばしば建て主自身に塗り壁の施工をしてもらっています。コストを下げると同時に、手の跡を残した家づくりをしたい。その結果、より愛着を持っていただけるのではないかと思うのです。
(石黒隆康/BUILTLOGIC)

市川の家

建築データ
  所在地: 千葉県市川市
  家族構成: 夫婦+子供3人
  竣工: 2005年11月
  敷地面積: 139.10平方メートル
  建築面積: 55.61平方メートル
延べ床面積: 98.96平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
施工: 北沢建設
家具: クニナカ
設計: 石黒隆康/ビルトロジック(BUILTLOGIC)
  写真: 吉田誠(吉田写真事務所)
連絡先  
  BUILTLOGIC/ビルトロジック
  代表: 石黒隆康
  住所: 〒235-0023 神奈川県横浜市磯子区森1-10-9 中銀磯子マンシオン605
TEL: 045-752-3738
E-MAIL: takayasu@blue.ocn.ne.jp
URL: http://www.builtlogic.com/
平面図
おすすめ情報(PR)